第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-40] 酵母G1期核内でのクロマチン集合体の構造とそのフラクタル次元

上江洲 奏1,2, 大出 真央1,2, 山本 隆寛1,2, 中迫 雅由1,2 (1.慶應・理工, 2.理研・RSC)

 細胞核内のDNAは、ヌクレオソームークロマチンー染色体という空間階層構造を経ながら核内に収納されており、その階層的集合状態は、遺伝子の転写に関わり生命活動に大きな影響を及ぼすとされている。しかしながら、核内におけるクロマチンの階層的集合状態や、その細胞周期依存的な変化を、非侵襲・無修飾かつ直接観察することは、未だ困難である。本研究では、G1期出芽酵母抽出した核を急速凍結し、X線自由電子レーザーを用いたX線回折イメージング実験を行った。得られた回折パターンの中から、30 nm分解能まで良好なスペックルを示すものを選択し、構造解析に供した。まず、回折パターンを足し合わせて円環平均を行い、G1期の核がもたらす小角散乱パターンを得た。これに対する一般散乱関数による解析から、核内にはクロマチン集合体が存在することが明らかとなった。さらに、集合体の慣性半径、クロマチン充填度を反映する質量フラクタル次元、集合体の表面平滑度を反映する表面フラクタル次元を明らかにした。また、これまでに開発した位相回復法を回折パターンに適用して得た投影図内には、特徴的な微細構造や、試料間で共通な大域的かつ特徴的な構造を見いだすことができ、一般散乱関数での見積もりとの対応付けができた。発表では、X線回折イメージング実験および構造解析の詳細を報告するとともに、フラクタル次元に基づいたクロマチン集合体の構造的特徴について議論したい。