第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[2P-2] ポスター2(2P-38ー2P-88)

2021年6月17日(木) 14:45 〜 16:45 ポスター会場2

[2P-41] トリプトファンの欠乏状態がTrpRSを介した高親和性Trp輸送に関与する

横沢 匠1, 若杉 桂輔1,2 (1.東大・理・生科, 2.東大・総合文化・生命環境)

がん細胞など,トリプトファン (Trp) 代謝酵素であるインドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ (IDO1)の発現量が増加した細胞では,細胞外から細胞内へのTrp特異的な高親和性Trp輸送が誘導される。がん細胞はTrp高感度取り込みによって周辺のTrpを枯渇させ,T細胞の活性化を抑制することで免疫機構を回避する。しかしながら,この取り込み機構の特徴は既知のアミノ酸トランスポーターのものと一致せず,その分子機構の詳細は不明である。これまで我々は,細胞外にトリプトファニルtRNA合成酵素 (TrpRS) が存在するとTrp高感度取り込みが起こることを示した。TrpRSとはtRNAにTrpを結合させる酵素であり,その一部が細胞外に分泌される。本研究では,まず,IDO1を過剰発現させた細胞がTrp高感度取り込みを行うことを確認し,次にIDO1を過剰発現させた細胞にTrpRSを外部添加して細胞のTrp取り込みを測定した。すると,IDO1の過剰発現処理のみやTrpRS蛋白質の添加のみを行った細胞と比較して著しいTrp取り込みの増加が誘導された。また,Trpを含まない培地で培養した細胞にTrpRS蛋白質を外部添加した際にも,顕著なTrp高感度取り込みの増加が観察された。以上より,IDO1により引き起こされるTrp欠乏状態が,細胞外TrpRSによる高親和性Trp取り込みを増加させると考えられる。