[3P-10] Structural Dynamics of the Heme Importer BhuUV-T by Double Spin-Labeled ESR Spectroscopy
ABCトランスポーターは基質の膜間輸送を行う膜タンパク質であり、ヌクレオチド結合ドメイン(NBD)二量体におけるATPの結合・加水分解という化学反応と共役して、膜貫通ドメイン(TMD)二量体が外向き構造と内向き構造を変化することで基質輸送が実現すると考えられている。しかし、輸送時における構造変化を観察した報告は非常に少なく、NBDにおけるATPの結合・加水分解とTMDの構造変化の相関は未解明である。本研究では、日和見感染症細菌由来のヘムインポーターBhuUV-Tを対象とし、BhuUVのTMDを二重スピンラベルで標識し、ESRスペクトルを測定することで、スピン間相互作用の変化から、各種ヌクレオチド存在下におけるTMDの構造変化の検出を試みた。野生型由来の7つのシステインをアラニンに、TMDのペリプラズム側に位置する201番目のアラニンをシステインに変異し、スピンラベル試薬MTSLをジスルフィド結合させた(A201C-MTSL)。A201C-MTSLのCW-ESRスペクトルをヌクレオチド非存在下、ATPあるいはAMP-PNP存在下で測定した。全ての条件でスピン間相互作用に特徴的な低磁場側の肩が観測され、TMD二量体のA201同士 が25 Å以内に位置することが示唆された。しかし、3種のスペクトルはほぼ一致しており、ATPの結合・加水分解によるペリプラズム側の構造変化はないと考えられる。発表では、基質をBhuUVに運搬するペリプラズムタンパク質BhuT共存下での構造変化についても報告し、BhuUV-Tの加水分解サイクルにおける構造変化について詳細に議論する予定である。