第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-1] ポスター3(3P-01ー3P-47)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場1

[3P-21] 溶液NMR法による抗酸化酵素GPx4の構造解析

猪俣 光稀1, 古板 恭子2, 杉木 俊彦2, 高尾 敏文2, 小林 直宏3, 藤原 敏道2, 児嶋 長次郎1,2 (1.横浜国大院・理工学府, 2.大阪大・蛋白研, 3.理研 RSC)

近年、活性酸素を還元できる抗酸化酵素は、生体内の酸化ストレスを調節する因子としてだけでなく、生理機能を制御する因子として注目を集めている。リン脂質ヒドロペルオキシドグルタチオンペルオキシダーゼ(GPx4, PHGPx)は、活性酸素によって生体膜が酸化されて生じるリン脂質ヒドロペルオキシドをグルタチオン依存的に直接還元できる唯一の抗酸化酵素である。また、GPx4はがん、細胞死、胚発生、精子形成などに関与することが知られており、他の抗酸化酵素には見られない多機能性を有することが明らかになってきている。GPx4の結晶構造は報告されているが、リン脂質ヒドロペルオキシドの還元機構やGPx4の多機能性には不明な点が多い。そこで、本研究では、溶液NMR法を用いてGPx4の構造と機能を解析することを目指した。GPx4はセレノシステイン含有蛋白質であるが、大腸菌発現系での高効率なセレノシステイン導入法は知られていなかったため、アミノ酸選択標識による95%以上の高効率なセレノシステイン導入法を確立した。また、セレノシステインをシステインに置換したシステイン体での主鎖の連鎖帰属とセレノシステイン体でのアミノ酸選択標識によってシステイン体とセレノシステイン体の両方でNMR信号の帰属を進めた。発表では、セレノシステイン導入率の定量法やリン脂質ヒドロペルオキシドの還元機構についても議論する。