第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-2] ポスター3(3P-48ー3P-87)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場2

[3P-57] 過硝酸によるアミロイドβタンパク質の凝集および細胞毒性抑制

川邊 春花1, 井川 聡2, 北野 勝久3, 座古 保1 (1.愛媛大院・理工, 2.大阪産技研, 3.大阪大院・工・アトミックデザイン研究センター)

タンパク質の多くはアミロイド凝集体を形成し、その細胞毒性により様々な疾患の原因になることが知られている。代表的な疾患であるアルツハイマー病の原因の1つは、アミロイドβタンパク質(Aβ)の凝集体形成であると考えられている。そのため、治療や予防のために凝集体の形成抑制に向けた研究が進められてきた。酸化により凝集体量および毒性が減少するという報告から、我々の共同研究グループは活性窒素種の1つである過硝酸(PNA; HOONO2)の応用を試みた。
様々な濃度のPNAとAβ42を反応させ、リン酸緩衝液を加えたのちに37℃で24時間インキュベートを行った。チオフラビンT(ThT)を加えて蛍光強度を測定することで、凝集量を評価した。また、走査型顕微鏡(SEM)を用いて、Aβ42の形態を確認した。さらに、サンプルを神経前駆モデルとして汎用されているラット副腎髄質褐色細胞腫(PC12細胞)に添加し、細胞生存率をMTT法により評価した。
PNA存在下、非存在下でインキュベートしたAβ42サンプルにおける凝集量をThT assayにより評価した結果、PNA濃度依存的にAβ42の凝集量が減少していた。加えて、SEMによる形態観察ではPNA存在下サンプルで凝集体が確認されなかった。次に、細胞毒性を評価した結果、PNA存在下で凝集量が少なかったAβ42サンプルの毒性が低くなっていることがわかった。これらの結果から、PNA溶液はAβ42の凝集および細胞毒性を低減する効果があることが明らかとなった。