第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-2] ポスター3(3P-48ー3P-87)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場2

[3P-58] 真空紫外円二色性と直線二色性によるαシヌクレインの生体膜相互作用研究

今浦 稜太1, 熊代 宗弘2, 河田 康志3, 松尾 光一4 (1.広島大・先進理工・物理, 2.広島大・理・物理, 3.鳥取大・工・化学生物, 4.広島大・放射光)

αシヌクレイン(α-Syn)は神経変性疾患の発症に関与するタンパク質で、神経細胞内のシナプス小胞膜と相互作用することでアミロイド線維を形成する。本研究では、α-Synとシナプス模倣膜との相互作用の特徴やα-Synの膜結合構造を真空紫外円二色性(VUVCD)と直線二色性(LD)スペクトルにより解析し、線維形成前の生体膜上でのα-Synの構造特性について検討した。VUVCD解析からα-Synは膜濃度の増加(lipid/protein=0~240)に伴って、ランダム構造からヘリックス構造へと変化した。塩(NaCl)を添加した場合でも、同様の構造変化が観測されたが、非添加と比べてヘリックス含量は減少した。LD解析から膜表面と結合したα-Synのヘリックス配向は、塩の有無に関わらず、膜表面に対し平行であることが分かった。しかし、塩無添加ではTyr残基に由来するLDが観測されたが、塩添加では観測されなかった。これにより塩添加では、Tyr残基が膜との相互作用に強く関わらないことが示唆された。VUVCD解析によるヘリックス含量をもとに、ヘリックス構造領域についてアミノ酸配列上の二次構造の位置予測を行った結果、塩非添加ではα-Syn全体で複数のヘリックス構造が確認されたが、塩添加では、Tyr残基とその周辺でヘリックス構造の形成が見られなかった。塩の有無に依存したα-Synの膜結合構造の特性の違いは、膜上でのアミロイド線維形成に影響を及ぼすと考えられる。