[3P-64] Structural differences between WT and A30P α-Synuclein along the lipid bilayer observed by fluorescence lifetime measurements
パーキンソン病は運動機能障害が起こる病気で、主に高齢者で発症する。しかし、若年層でも発症し、その一因として原因タンパク質のα-Synuclein(αSyn)の突然変異(A30P)が考えられている。これらの患者の脳の神経細胞にはレビー小体と呼ばれる、多量のαSynが細胞膜の脂質二重膜上で凝集した構造物が多数見られるが、この形成機構は未解明である。αSynの凝集経路が野生型(WT)とA30Pでは異なることが示唆されているが、どのような化学的性質の違いに依るものなのかはわからない。そこで、脂質二重膜上で凝集初期に形成されるαSynのオリゴマーの構造解析からWTとA30Pの違いを明らかにすることを試みた。構造変化観察のため、蛍光供与体(D) および受容体(A) をヘテロに二重標識し、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)による蛍光寿命変化からD-A間の距離分布を解析した。そのためにD2C/V40C変異をWTとA30Pにそれぞれに導入し、Dに1,5-IAEDANS(DNS)、AにQSY35を用いて部位特異的蛍光標識を行った。標識αSyn に対し、リポソームを添加した状態で蛍光寿命測定を行ったところ、WTには異なる距離を持つ2成分、A30Pには3成分が存在することが示唆された。A30Pの構成成分が増加したのはプロリンのシス-トランス異性によると推測される。今後は、濃度を制御することで、脂質二重膜に対し複数分子のαSynを結合・凝集させた状態を測定し、凝集初期段階におけるWTとA30P の違いを明らかにする予定である。