第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ポスターセッション

[3P-2] ポスター3(3P-48ー3P-87)

2021年6月18日(金) 15:15 〜 17:15 ポスター会場2

[3P-81] グラム陰性細菌による異種タンパク質分泌発現系の基盤構築

神谷 友華, 高野 和文, 田中 俊一 (京府大・院生環)

グラム陰性細菌I型分泌機構(T1SS)を用いたタンパク質生産は、高い異種タンパク質発現能を生かしながら、LPS混入といった従来の細胞内タンパク質発現の課題を解決する方法として注目されている。T1SSは単純な複合体を形成し、1ステップでタンパク質を細胞外へ分泌させる。しかし、分泌タンパク質の適応範囲は狭く、実用例は未だ少ない。そこで本研究では、Serratia marcescens由来T1SSのLipSystemをモデルに、分泌タンパク質の範囲拡張に繋がるアプローチの開発を試みた。T1SSによって分泌されるタンパク質の折り畳みは Ca2+結合に依存し、低Ca2+濃度の細胞内では高次構造を形成しない。他方、Ca2+非依存的に折り畳まれるような異種タンパク質は細胞内で高次構造を形成し、T1SSによってほとんど分泌されることはない。この課題克服を目指し、酸性残基が豊富なCa2+-Binding Loop(CBL)を応用した。具体的には、異種タンパク質のβ-turnにCBLを挿入し、細胞内ではCa2+非結合状態のCBLが、その酸性残基同士の静電反発によって折り畳みを抑制させるものである。蛍光で分泌を容易に判断できる蛍光タンパク質を先行モデルに、CBLを挿入してLipSystemによる分泌を試みた。その結果、野生型タンパク質は分泌されない一方、CBLを挿入した変異体では分泌が確認できた。さらに、他の複数のタンパク質でもCBL挿入変異体で分泌に成功した。本発表では、これらの結果とともに、CBL挿入によるタンパク質の折り畳み抑制機序の詳細についても報告する。