第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS10] 細胞内機能を支配するタンパク質分子機能の多様性・特異性・協調性の動的制御機構   ――― 動的・アロステリック制御による細胞生命学理解の深化 ―――

2021年6月18日(金) 09:45 〜 12:15 チャンネル3

オーガナイザー:米澤 康滋(近畿大学)、土屋 裕子(産業技術総合研究所)

09:45 〜 10:10

[WS10-01] オートエンコーダーに基づくGPCRシグナル伝達経路解析

土屋 裕子1, 種石 慶2, 米澤 康滋3 (1.産総研・人工知能研究センター, 2.理研, 3.近大)

リガンド結合や変異導入によるタンパク質ダイナミクスの変化は、シグナルとして離れた領域へ伝わりタンパク質や細胞機能の変化を導く。「ダイナミックアロステリー」と呼ばれるこの現象の理解は、疾病発症メカニズム解明などに有用な情報を与える。これまでに分子動力学シミュレーションおよび教師無しニューラルネットワーク「オートエンコーダー」を用いたダイナミックアロステリー解析手法を構築し(Tsuchiya et al, JCIM, 2019)、本手法をGPCRにおけるシグナル伝達の解析に応用した。本研究ではクラスAタイプGPCRであるCXCR4に着目し、CXCR4-リガンド複合体の結晶構造を初期構造とするリガンド結合状態と非結合状態の分子動力学シミュレーションを実行した。オートエンコーダーに基づく手法によるリガンド結合および非結合状態のトラジェクトリの比較解析により、リガンド結合によって変化するダイナミクスおよびダイナミクス変化を導く複数のGPCR残基を抽出した。これらのCXCR4残基の半数以上が、ホモログCXCR2-リガンド-Gタンパク質複合体において観察されたリガンド結合が導くGタンパク質へのシグナル伝達に関わるCXCR2残基と一致した。この中には、CXCR4-リガンド複合体を初期構造として利用したにもかかわらず、Gタンパク質との相互作用に関与すると推測されるCXCR4残基も含まれている。よって、これらのCXCR4残基はリガンド結合によりGタンパク質結合に適した特有の揺らぎを発することが示唆される。