第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS10] 細胞内機能を支配するタンパク質分子機能の多様性・特異性・協調性の動的制御機構   ――― 動的・アロステリック制御による細胞生命学理解の深化 ―――

2021年6月18日(金) 09:45 〜 12:15 チャンネル3

オーガナイザー:米澤 康滋(近畿大学)、土屋 裕子(産業技術総合研究所)

11:25 〜 11:50

[WS10-05] ヘム蛋白質における構造機能相関の解明に向けた蛋白質ポケットとヘムの歪みの相関解析

近藤 寛子1, 飯塚 博幸2, 舛本 現3, 兼松 佑典4, 鷹野 優5 (1.北見工大・工, 2.北大院・情報, 3.理研ISC・情シス, 4.広大院・先進理工, 5.広市大院・情報)

ヘム蛋白質は、物質輸送や電子伝達など様々な生命機能を担っているが、活性中心のヘムが多様な機能を発現するメカニズムは明らかになっていない。先行研究からヘムの構造歪みと物性の相関が明らかにされており、ヘムの歪みが蛋白質の機能発現に寄与していると考えられる。本研究ではヘムの歪みと蛋白質環境の相関について解析を行った。Protein Data Bankから収集した解像度 2 Å 以下のヘム蛋白質の構造データから配列が同一の蛋白質ドメインを除いた後、結合しているヘムを抜き出した。同一ドメインに複数のヘムが結合しており、かつ各蛋白質ポケットのアミノ酸組成が同一の場合は1分子のみを選んだ。また,ヘムにアミノ酸残基以外の分子が配位しているもの、結合部位に標準アミノ酸以外の残基を含むものは除外した。ヘムの歪みはnormal-coordinate structural decompositionにより解析した。蛋白質環境とヘムの歪みの相関を調べるために、蛋白質ポケット(ヘムの基本骨格の周囲の画像)を入力とし、ヘムの各振動モード方向への歪み度合いをニューラルネットワークにより予測した結果、12種類の振動モードのうち3つの低波数モード(saddling, ruffling, およびdoming)では70~80 %の精度が得られた。この結果から、低波数モード方向への歪みについてヘム近傍の蛋白質環境の寄与が大きいことが示唆される。