第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS11] 生体分子の人工設計で切り開く生命科学研究

2021年6月18日(金) 17:30 〜 20:00 チャンネル1

オーガナイザー:真壁 幸樹(山形大学)、田中 俊一(京都府立大学)

18:00 〜 18:20

[WS11-03] 細胞内アダプタータンパク質の人工設計・改変に基づくタンパク質間相互作用ネットワークにおける特定相互作用の機能アノテーション

安井 典久 (岡山大・院・医歯薬 ( 薬 ))

細胞内シグナル伝達は、タンパク質間相互作用 (PPI) ネットワーク形成により達成される。多くの場合、PPIネットワークはペプチドモチーフとそれらの相互作用ドメインを介して形成される。PPIネットワークは非常に複雑であるため、ある特定の細胞機能の発揮に、PPIネットワーク全体が必要なのか、それとも特定のPPIで十分なのかを検証することは困難かつ重要な課題である。この課題を解決するために、細胞内アダプタータンパク質Grb2のSH2ドメインを人工的に改変したpY-clampを作製した。Grb2 SH2ドメインはリン酸化チロシン (pY) を含むpY-X-N-Xモチーフに広範な結合特異性を示す。一方で、設計・作製したpY-clampは特定のpY-X-N-Xモチーフに対して高い特異性を示した。次いで、SH2ドメインをpY clampで置換したGrb2の改変体 (chGrb2) を作製した。Ptpn11中のpY-X-N-Xモチーフに高い特異性で結合するchGrb2は、野生型Grb2と同様にマウスES細胞の原始内胚葉への分化誘導を引き起こした。このことは、複雑なPPIネットワークの中で、すべてのPPIではなく、ごく限られたPPIが特定の細胞内プロセスの制御に関わることを示唆している。このように、人工タンパク質の設計・作製とその利用により、特定のPPIの機能解析法を提示するとともに、マウスES細胞の分化に関する新しい知見を得ることができた。