第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS7] バイオ医薬品と遺伝子治療ウイルスベクターの分析・品質管理と規制科学

2021年6月17日(木) 18:00 〜 20:30 チャンネル3

オーガナイザー:内山 進(大阪大学)、石井 明子(国立医薬品食品衛生研究所)

18:50 〜 19:10

[WS7-03] プレフィルドシリンジ製剤中におけるタンパク質の吸着と凝集

米田 早紀1, 丸野 孝浩1, 森 飛鳥1, 日置 彩那1, 西海 遥夏1, 福原 彩乃2, 原内 洋輔3, 足達 慧3, 奥山 久美3, 澤口 太一3, 鳥巣 哲生1, 内山 進1,4 (1.阪大・工・生命先端, 2.ユー・メディコ, 3.日本ゼオン, 4.生命創成探究センター)

プレフィルドシリンジ製剤(PFS)はその利便性と安全性の高さから、利用が拡大している。蛋白質を主成分とするバイオ医薬品の場合、PFS中でのタンパク質凝集体形成は、タンパク質の構造安定性やコロイド安定性だけでなく、固液界面におけるタンパク質の吸着および脱離によっても影響を受ける。そのため、シリンジ表面へのタンパク質吸着を抑制することがタンパク質凝集体抑制につながる可能性があるが、シリンジ表面へのタンパク質の吸着メカニズムの詳細には不明点が多い。本研究では、シリコンオイルフリーシリンジとして利用されている、ホウケイ酸ガラスおよびシクロオレフィンポリマー(COP)に焦点を絞り、それぞれの表面へのタンパク質吸着およびその要因を検証した。タンパク質およびシリンジ表面材料の電荷と疎水性の計測、さらに高速原子間力顕微鏡と水晶振動子マイクロバランスによる吸着のダイナミクス解析により、親水性表面であるガラス表面へのタンパク質吸着には溶液pHや塩濃度に依存する静電相互作用が、疎水性表面であるCOP表面へのタンパク質吸着には溶液pHや塩濃度には依存しない疎水性相互作用が支配的に働きながら、複数の要因の組み合わせにより吸着の程度が決まり、さらに、吸着の主要因の違いが凝集発生の程度と関係することが明らかとなった。