第21回日本蛋白質科学会年会

講演情報

ワークショップ

[WS9] 抗体工学と蛋白質科学の親和性成熟化 −抗体利用の新たな可能性−

2021年6月18日(金) 09:45 〜 12:15 チャンネル2

オーガナイザー:禾 晃和(横浜市立大学)、日野 智也(鳥取大学)

11:27 〜 11:51

[WS9-05] 温度感受性抗原抗体反応とTHETAシステム

岡野 俊行 (早大・先進理工・電生)

従来、光刺激によって光受容蛋白質とその相互作用蛋白質の結合ー解離を制御する系が多数構築されてきた。一方、磁気や熱といった光以外の刺激を用いる系は少ない。光刺激は、刺激のON/OFFや刺激量の調節が容易であるといった利点がある一方、ROSの生成や光センサー自体の研究に使いづらいといった欠点がある。熱刺激、すなわち温度変化による生体分子制御系には、このような欠点がないため、新たな生体分子制御系として研究・開発する意義は大きい。 我々は、青色光受容蛋白質であるクリプトクロムの研究過程において、反応温度に依存して抗原との結合強度が大幅に変化するモノクローナル抗体を得た。そこで、当該抗体とエピトープペプチドを組み合わせ、温度感受性の抗原―抗体反応を利用した、温度変化による新たな蛋白質精製系THETA-system(Thermal-elution-based tag system)を構築した。THETA-systemでは、抗体可変領域遺伝子を元に作製した一本鎖抗体scFv(THETAL)をカラムに固定し、エピトープであるTHETASをタグとして付加した蛋白質を濃縮することができる。本講演では、THETA-systemの概要紹介に加え、温度感受性の基盤となる分子機構についての考察、さらに、熱刺激による分子操作技術への応用の可能性について議論する。