11:30 AM - 11:45 AM
[S03-08] Attempt to detect intra-plate SSEs based on GEONET data (F3 solution)
スロー地震と呼ばれる、同規模の通常の地震より長い時定数で発生する地震は、その時定数に応じて超低周波地震、低周波地震・微動、スロースリップイベント(SSE)に分けられる。この中でもSSEは最も長い時間スケールで進行し、その観測には主としてGNSSが用いられている。スロー地震データベース( http://www-solid.eps.s.u-tokyo.ac.jp/~sloweq/ )によれば、SSEは、これまで主にプレート境界で観測されており、内陸での検出例は北海道で観測された事例しかない(池田・日置,2014,JpGU; Ozono et al., 2015)。プレート境界型のSSEは、例えばプレート境界上にSSEを起こす矩形断層を仮定する事で地上の観測点各々の位置における地殻変動が予測できる上に、ある程度まとまった数の観測点が同じ方向に動く事が期待できる。プレート境界型のSSEは、この予測に従ってシグナルを探す事で検出が可能である。一方、内陸SSEは、発生する断層を仮定する事が困難であり、地殻変動観測点の移動方向の予測も難しく、内陸SSEが浅部で発生した場合はシグナルを捉える観測点の数も限定的なものになる。このような点が、これまで内陸SSEの検出事例がごく限られていた理由である。
そこで本研究では、国土地理院が提供するGNSSデータ(GEONET, F3解)を用いて、下で述べる[手法概略]に沿って日本の地殻変動を包括的に調査し、その他の内陸SSEの検出を試みる。本研究は予稿投稿時点で[手法概略]の(8)まで進行しており、これまでに内陸SSEの可能性が疑われる数十の地殻変動の検出に成功した。学会講演では、この成果について報告する。
ただし、本研究は地殻変動データにのみ基づいており、検出した地殻変動が内陸SSE起源であると断定することは現時点では不可能である。内陸SSE起源の可能性が非常に高いことを示すためには、今後、例えば同時期における同じ場所での低周波微動の発生の有無などを確認していくことが必要である。
[手法概略]
(1) 第一に、F3解を利用して日本中の水平方向の地殻変動量の時系列を作成する。この段階では誤差の大きい鉛直方向は使わない。(dE)^2 + (dN)^2 の平方根(dE, dN は各々東向き変動量と北向き変動量)を用いる事で、地殻変動の発生方向に依存せずにシグナルが検出できる。
(2) 作成した時系列に対して、一ヶ月幅の移動時間窓を作成し、その時間窓の中で(中央値 +/- 3×中央絶対偏差)の外側に位置したデータを外れ値として除外する。
(3) F3解の時系列にはアンテナ交換や、地震時の地殻変動、火山活動による地殻変動などによって不連続が含まれる。この不連続は本研究ではノイズとなるため、この補正を行う。まず移動時間窓を作成し、この時間窓を前半と後半に分割する。そして前半と後半の各々に最小二乗法で二次関数をフィッティングする。前半の終端と、後半の始端の値を見積もり、その差を取る。この差が、ある閾値を超えていた場合、その差の分だけ不連続が存在すると見做して、時間窓の後半以降すべてのデータから、その値を差し引く。ただし、これには閾値が大きいと小さな不連続が見逃され、小さいと大きな不連続が上手く補正できないという問題がある。そこで大きく設定した閾値を徐々に小さくしながら補正を繰り返し行う。
(4) 不連続を補正した時系列に対し、(2)と同じ方法で、再度、外れ値の除去を行う。
(5) σ = 10日のガウシアンフィルターを適用し、時系列を平滑化する。
(6) 平滑化した時系列の中で、ジグザグ型の地殻変動が存在する部分を抽出する。
(7) シグザグ型の地殻変動が抽出された観測点を含む、その近傍5観測点の内、4観測点以上で同時にジグザグ型の地殻変動が抽出された場合、そこで地殻変動を検出したとする。
(8) 検出された地殻変動について、各観測点で東西方向・南北方向・上下方向の地殻変動量を見積もる。
(9) 見積もられた地殻変動を内陸SSEによるものだと仮定し、その地殻変動を説明可能な断層を数値計算で求める。
そこで本研究では、国土地理院が提供するGNSSデータ(GEONET, F3解)を用いて、下で述べる[手法概略]に沿って日本の地殻変動を包括的に調査し、その他の内陸SSEの検出を試みる。本研究は予稿投稿時点で[手法概略]の(8)まで進行しており、これまでに内陸SSEの可能性が疑われる数十の地殻変動の検出に成功した。学会講演では、この成果について報告する。
ただし、本研究は地殻変動データにのみ基づいており、検出した地殻変動が内陸SSE起源であると断定することは現時点では不可能である。内陸SSE起源の可能性が非常に高いことを示すためには、今後、例えば同時期における同じ場所での低周波微動の発生の有無などを確認していくことが必要である。
[手法概略]
(1) 第一に、F3解を利用して日本中の水平方向の地殻変動量の時系列を作成する。この段階では誤差の大きい鉛直方向は使わない。(dE)^2 + (dN)^2 の平方根(dE, dN は各々東向き変動量と北向き変動量)を用いる事で、地殻変動の発生方向に依存せずにシグナルが検出できる。
(2) 作成した時系列に対して、一ヶ月幅の移動時間窓を作成し、その時間窓の中で(中央値 +/- 3×中央絶対偏差)の外側に位置したデータを外れ値として除外する。
(3) F3解の時系列にはアンテナ交換や、地震時の地殻変動、火山活動による地殻変動などによって不連続が含まれる。この不連続は本研究ではノイズとなるため、この補正を行う。まず移動時間窓を作成し、この時間窓を前半と後半に分割する。そして前半と後半の各々に最小二乗法で二次関数をフィッティングする。前半の終端と、後半の始端の値を見積もり、その差を取る。この差が、ある閾値を超えていた場合、その差の分だけ不連続が存在すると見做して、時間窓の後半以降すべてのデータから、その値を差し引く。ただし、これには閾値が大きいと小さな不連続が見逃され、小さいと大きな不連続が上手く補正できないという問題がある。そこで大きく設定した閾値を徐々に小さくしながら補正を繰り返し行う。
(4) 不連続を補正した時系列に対し、(2)と同じ方法で、再度、外れ値の除去を行う。
(5) σ = 10日のガウシアンフィルターを適用し、時系列を平滑化する。
(6) 平滑化した時系列の中で、ジグザグ型の地殻変動が存在する部分を抽出する。
(7) シグザグ型の地殻変動が抽出された観測点を含む、その近傍5観測点の内、4観測点以上で同時にジグザグ型の地殻変動が抽出された場合、そこで地殻変動を検出したとする。
(8) 検出された地殻変動について、各観測点で東西方向・南北方向・上下方向の地殻変動量を見積もる。
(9) 見積もられた地殻変動を内陸SSEによるものだと仮定し、その地殻変動を説明可能な断層を数値計算で求める。