5:15 PM - 6:45 PM
[S03P-11] Post-seismic crustal deformation on the Aso caldera associated with the 2016 Kumamoto earthquake based on PALSAR-2 time-series analysis
2016年熊本地震はおよそ45 kmにわたって布田川・日奈久断層が破壊され、最大2m超の地殻変動を伴った.干渉合成開口レーダ (InSAR) などの観測により,布田川断層の破壊領域の北東端は阿蘇カルデラ内にまで到達したことが報告されている.地震に伴い阿蘇中岳を含むカルデラ中央部では40 cm程度の沈降が観測された.九州全体が南北方向の引張応力場下にあることから,阿蘇中岳を含むカルデラ中央部の沈降を断層運動で説明するためには断層の傾斜が南東である必要がある.これは阿蘇カルデラの南西に位置する布田川断層の傾斜方向(北西傾斜)とは一致しない.一方,阿蘇火山は2014年の小規模噴火以降,火山活動が活発な状態が継続している.2016年10月には36年ぶりの爆発的噴火が発生し,2019年5月にも小規模噴火が発生した.2016年以降の阿蘇火山における純粋な火山性地殻変動を抽出・評価するためには,観測結果に重畳している地震後地殻変動との分離が不可欠である.本研究の目的は①地震時・地震後地殻変動の検出と数値計算による再現を通して阿蘇カルデラの変形様式を明らかにし,②2016年以降の阿蘇火山における火山性地殻変動の抽出することにある.本発表では衛星SARが明らかにする熊本地震後の阿蘇カルデラにおける地殻変動の描像と,その時空間変化について報告する.本研究では2016年熊本地震の地震後地殻変動を検出するためにALOS-2/PALSAR-2が撮像したSARデータに,SAR時系列解析手法であるStacking法とSmall Baseline Subset (SBAS) 法を適用する.いずれの手法も対流圏伝搬遅延による影響を軽減し,微小な地殻変動の抽出を実現する.PALSAR-2はSAR画像の撮像に植生の影響を受けにくいL-bandのマイクロ波 (波長23.6 cm) を用いており、植生に富んだ日本の火山における地殻変動観測には優れている.標高依存成分は国土地理院提供の10mメッシュ数値標高モデル (DEM) を用いて補正した.
予備解析として熊本地震後から2018年前半までの期間において,異なる軌道 (Ascending, Descending軌道) の2つの観測パスから撮像されたSARデータ (Path 20, 23, 130, 131) に対してStacking法を適用した.各観測軌道における衛星視線方向の累積変位量に2.5次元解析を適用することにより,独立した2組の準上下・準東西方向の変位量を推定した.準東西変位においては地震時に阿蘇カルデラ北西部に存在が示唆された南東傾斜の断層上端位置に沿って変位の不連続が検出された.阿蘇中岳を含む阿蘇カルデラの中心からカルデラ東側の領域で8 cm程度の西向き変位を示した.一方,変位の不連続の北西側では顕著な準東西変位は検出されなかった.ここは本震に伴う側方流動により,およそ北向きに1m以上の地殻変動が生じていた領域である.阿蘇中岳からカルデラ南西部にかけて,準東西成分が西向きから東向きになだらかに変化していたことも確認した.準上下変位においてはカルデラ北西部から中岳にかけて10 cm程度の沈降が観測された.一方,地震時に検出された変位の不連続の位置において,明瞭な変位の不連続は検出されなかった.沈降領域が北西-南東方向にのびる空間分布は地震時に観測された沈降範囲とおおむね一致し,上述の側方流動が生じていた領域でも沈降が観測された.カルデラ南西部では5 cm程度の隆起が観測され,これは阿蘇カルデラ外の布田川断層北側・出ノ口断層南側にかけて連続的に分布している.地震時に観測された地殻変動の描像とはやや異なる.予備解析ではStacking法を適用したため,位相変化の足し合わせに用いた最初と最後の干渉画像に含まれる対流圏伝搬遅延成分が残っている.ここでは各干渉画像に対して対流圏伝搬遅延量を補正していなかった.しかし独立した2組の準上下・準東西変位場はおおむね同じ空間パターンと同程度の変位量を示しており,ある程度信頼できるといえる.様々な干渉画像を用いて各画像撮像期間における変位速度を最小二乗的に推定するSBAS法との結果を比較することにより,検出した地震後地殻変動の確からしさを検証する.また熊本地震と阿蘇火山の火山活動の関係を議論する上で,カルデラ内の断層が中岳 (草千里ヶ浜) 直下の浅部マグマ供給源に到達しているか否かで,断層運動が浅部マグマ供給源に及ぼす影響は大きく異なると言われている.地震時・地震後地殻変動の描像の比較を通して,カルデラ内の断層形状についても議論する.
予備解析として熊本地震後から2018年前半までの期間において,異なる軌道 (Ascending, Descending軌道) の2つの観測パスから撮像されたSARデータ (Path 20, 23, 130, 131) に対してStacking法を適用した.各観測軌道における衛星視線方向の累積変位量に2.5次元解析を適用することにより,独立した2組の準上下・準東西方向の変位量を推定した.準東西変位においては地震時に阿蘇カルデラ北西部に存在が示唆された南東傾斜の断層上端位置に沿って変位の不連続が検出された.阿蘇中岳を含む阿蘇カルデラの中心からカルデラ東側の領域で8 cm程度の西向き変位を示した.一方,変位の不連続の北西側では顕著な準東西変位は検出されなかった.ここは本震に伴う側方流動により,およそ北向きに1m以上の地殻変動が生じていた領域である.阿蘇中岳からカルデラ南西部にかけて,準東西成分が西向きから東向きになだらかに変化していたことも確認した.準上下変位においてはカルデラ北西部から中岳にかけて10 cm程度の沈降が観測された.一方,地震時に検出された変位の不連続の位置において,明瞭な変位の不連続は検出されなかった.沈降領域が北西-南東方向にのびる空間分布は地震時に観測された沈降範囲とおおむね一致し,上述の側方流動が生じていた領域でも沈降が観測された.カルデラ南西部では5 cm程度の隆起が観測され,これは阿蘇カルデラ外の布田川断層北側・出ノ口断層南側にかけて連続的に分布している.地震時に観測された地殻変動の描像とはやや異なる.予備解析ではStacking法を適用したため,位相変化の足し合わせに用いた最初と最後の干渉画像に含まれる対流圏伝搬遅延成分が残っている.ここでは各干渉画像に対して対流圏伝搬遅延量を補正していなかった.しかし独立した2組の準上下・準東西変位場はおおむね同じ空間パターンと同程度の変位量を示しており,ある程度信頼できるといえる.様々な干渉画像を用いて各画像撮像期間における変位速度を最小二乗的に推定するSBAS法との結果を比較することにより,検出した地震後地殻変動の確からしさを検証する.また熊本地震と阿蘇火山の火山活動の関係を議論する上で,カルデラ内の断層が中岳 (草千里ヶ浜) 直下の浅部マグマ供給源に到達しているか否かで,断層運動が浅部マグマ供給源に及ぼす影響は大きく異なると言われている.地震時・地震後地殻変動の描像の比較を通して,カルデラ内の断層形状についても議論する.