5:15 PM - 6:45 PM
[S03P-12] GNSS observation at southern Kyushu active shear zone and numerical modeling
近年のGNSS速度場を用いたひずみ速度の解析から、南九州には10-7/yrを上回るせん断ひずみ速度の大きな領域(以下、南九州せん断帯という)の存在が明らかにされている。同領域は、北緯32度付近を幅約50 kmにわた渡り九州を東西に横切るように分布している。また、同領域では1997年に鹿児島県北西部地震(M6.5、M6.3)、1994年に鹿児島県北部地震(M5.7)、1968年にえびの地震(M6.1)などのM5~6クラスの内陸地震が発生しているが(宮町ほか, 1998)、これらに対応する明瞭な活断層の分布が認められていないことなどから、これらの地震は活断層や地質学的な断層として知られてはいないものの、被害地震を引き起こす断層が地下に存在することを示唆(村田, 1999)しているのかもしれない未成熟な未知の断層の運動によるとの可能性も指摘されている(村田, 1999)。本研究では、このような地形的に活断層の存在が不明瞭な領域での地殻変動を明らかにするため、南九州せん断帯を南北に横断するように10ヶ所のGNSS観測点を設置し、2016年2月より地殻変動観測を開始した。2016年4月~2018年11月に得られた変位速度を用いて、鉛直横ずれ断層モデル(Savage and Burford, 1973)に従って、断層の固着域の深さ・すべり速度などを推定したところ固着域最深部が15~16 km、深部のすべり速度が12~14 mm/yrで左横ずれの運動が生じていることを明らかにした(渡部ほか, 2019)。
続いて、このような深部すべりが地殻浅部の変形にどのような影響を及ぼすかについて考察した。既往研究では、地下深部の横ずれの断層運動によりその直上の地殻内部には花弁状のすべり面(フラワー構造)が発達し、地表に雁行状のリーデルせん断帯が形成される(Naylor et al., 1986)ことが知られている。そこで、本研究では、南九州せん断帯の形成過程について、''リーデルせん断帯の形成'' という観点から有限差分法を用いた三次元の数値シミュレーションを行った。モデルについて、媒質は、モール・クーロンの破壊基準に従う弾塑性帯(物性パラメータは、図1-A内に記載)を仮定し、縦方向100 km、横方向400 km、深さ方向15 kmの領域を設定した。そして、深さ15 kmの底面にGNSS観測より得られた7 mm/yrの左横ずれの相対運動を与えた。また、相対運動と直交する境界面にはローラー条件を課した(図1-A)。その結果、既往研究より得られていた深部から立ち上る花弁状の構造や地表の雁行状のリーデルせん断の形成が確認できた。定性的ではあるが、この結果を1997年鹿児島県北西部地震の余震分布(Miyamachi et al., 1999)と比較すると、東西方向の2本の平行に並ぶ余震分布はリーデルせん断に対応し、南北方向の断面に見られる深部から浅部にかけて広がる余震分布は花弁状の構造に対応しているようにも見える(図1-B)。ただし、地表では活断層は分布していない(村田, 1999)。この結果は、物性パラメータや地下の不均質構造、摩擦や水の影響に関する検討は今後必要ながらも、地形的に活断層の存在が不明瞭な地域における未成熟な断層の形成・成長を考える上で本研究のアプローチが有効な手法となり得る可能性を示している。
本発表は、経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成29年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」及び「平成30年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。
参考文献
宮町ほか (1998): 北海道大学地球物理学研究報告, vol.61, pp.85-97.
村田 (1999): 構造地質, vol.43, pp.93-97.
Savage and Burford (1973): Journal of Geophysical Research, vol.78, pp.832-845.
渡部ほか (2019): 日本地球惑星科学連合2019年大会, SSS16-P22.
Naylor et al. (1986): Journal of Structural Geology, vol.8, pp.737-752.
Miyamachi et al. (1999): Earth Planets Space, vol.51, pp.233-246.
続いて、このような深部すべりが地殻浅部の変形にどのような影響を及ぼすかについて考察した。既往研究では、地下深部の横ずれの断層運動によりその直上の地殻内部には花弁状のすべり面(フラワー構造)が発達し、地表に雁行状のリーデルせん断帯が形成される(Naylor et al., 1986)ことが知られている。そこで、本研究では、南九州せん断帯の形成過程について、''リーデルせん断帯の形成'' という観点から有限差分法を用いた三次元の数値シミュレーションを行った。モデルについて、媒質は、モール・クーロンの破壊基準に従う弾塑性帯(物性パラメータは、図1-A内に記載)を仮定し、縦方向100 km、横方向400 km、深さ方向15 kmの領域を設定した。そして、深さ15 kmの底面にGNSS観測より得られた7 mm/yrの左横ずれの相対運動を与えた。また、相対運動と直交する境界面にはローラー条件を課した(図1-A)。その結果、既往研究より得られていた深部から立ち上る花弁状の構造や地表の雁行状のリーデルせん断の形成が確認できた。定性的ではあるが、この結果を1997年鹿児島県北西部地震の余震分布(Miyamachi et al., 1999)と比較すると、東西方向の2本の平行に並ぶ余震分布はリーデルせん断に対応し、南北方向の断面に見られる深部から浅部にかけて広がる余震分布は花弁状の構造に対応しているようにも見える(図1-B)。ただし、地表では活断層は分布していない(村田, 1999)。この結果は、物性パラメータや地下の不均質構造、摩擦や水の影響に関する検討は今後必要ながらも、地形的に活断層の存在が不明瞭な地域における未成熟な断層の形成・成長を考える上で本研究のアプローチが有効な手法となり得る可能性を示している。
本発表は、経済産業省資源エネルギー庁委託事業「平成29年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価確証技術開発)」及び「平成30年度高レベル放射性廃棄物等の地層処分に関する技術開発事業(地質環境長期安定性評価技術高度化開発)」の成果の一部である。
参考文献
宮町ほか (1998): 北海道大学地球物理学研究報告, vol.61, pp.85-97.
村田 (1999): 構造地質, vol.43, pp.93-97.
Savage and Burford (1973): Journal of Geophysical Research, vol.78, pp.832-845.
渡部ほか (2019): 日本地球惑星科学連合2019年大会, SSS16-P22.
Naylor et al. (1986): Journal of Structural Geology, vol.8, pp.737-752.
Miyamachi et al. (1999): Earth Planets Space, vol.51, pp.233-246.