9:45 AM - 10:00 AM
[S06-01] Anisotropic P wave velocity structure around the shallow plate boundary in the northern Hikurangi margin
地震波異方性は媒質の層構造や応力状態に依存するため、これらを推定する指標として広く用いられている。プレート沈み込み帯の海溝軸周辺では、海域観測データを用いたS波スプリッティング解析等から、海底下浅部のS波方位異方性が複数の沈み込み帯で明らかになってきた(例えば、Tonegawa et al. 2017)。一方、P波の異方性推定には制御震源データを用いた解析が最適であるが、南海トラフ等の一部地域を除くとmulti azimuthを密にカバーするデータの取得はほとんどなされておらず、地域性や沈み込み環境との関係など未知な点が多い。
海洋研究開発機構は2017年度に日米英ニュージーランドの各研究機関と共同で、ニュージーランド北島東方沖のヒクランギ沈み込み帯にて大規模な3次元地震探査データを取得した。調査地域は海溝海側から前弧海盆までの領域で、海溝直交方向に60km、海溝平行方向に14kmである。この領域内に4列に2km間隔で展開した97台の海底地震計(OBS)で140,000以上のエアガン発振の記録が収録された。エアガン発振は3次元反射法探査用に非常に稠密に実施されたため、異方性研究に適したmulti-azimuthのデータの取得に成功した。
このデータセットにまず初動走時トモグラフィ解析を適用し、等方性を仮定した3次元P波速度構造を推定した。得られた3次元P波速度モデルから、沈み込む太平洋プレート上の堆積層や上盤プレート内の付加体に対応する低速度域が明らかとなった。既存の反射断面(Barker et al., 2018)と比較すると、この付加体内にはプレート境界からの分岐断層が複数存在すると考えられる。次に、上記の3次元P波速度モデルから計算される初動の走時残差を各OBSと地震波の伝播方向の方位角ごとに分類したところ、走時残差は顕著な方位依存性を示すことがわかった。特に、前弧海盆上に設置したOBSでこの方位依存性が明瞭であり、最大で約4%のP波速度の方位異方性が存在することがわかった。一方、海溝より海側ではこの異方性の特徴は不明瞭になる。また、海溝より陸側ではP波がより速く伝播する軸がほぼ東西(海溝に直交する方向)に向くことも確認した。調査海域のヒクランギ沈み込み帯では、構造探査と同じ時期に掘削調査も行われており、borehole breakoutのデータから最大水平圧縮応力がおおよそ海溝と直交する方向に向くことが明らかになっている。これらの結果から、P波速度の異方性も大局的にはプレート沈み込みに起因する広域応力場を反映していると考えられる。
海洋研究開発機構は2017年度に日米英ニュージーランドの各研究機関と共同で、ニュージーランド北島東方沖のヒクランギ沈み込み帯にて大規模な3次元地震探査データを取得した。調査地域は海溝海側から前弧海盆までの領域で、海溝直交方向に60km、海溝平行方向に14kmである。この領域内に4列に2km間隔で展開した97台の海底地震計(OBS)で140,000以上のエアガン発振の記録が収録された。エアガン発振は3次元反射法探査用に非常に稠密に実施されたため、異方性研究に適したmulti-azimuthのデータの取得に成功した。
このデータセットにまず初動走時トモグラフィ解析を適用し、等方性を仮定した3次元P波速度構造を推定した。得られた3次元P波速度モデルから、沈み込む太平洋プレート上の堆積層や上盤プレート内の付加体に対応する低速度域が明らかとなった。既存の反射断面(Barker et al., 2018)と比較すると、この付加体内にはプレート境界からの分岐断層が複数存在すると考えられる。次に、上記の3次元P波速度モデルから計算される初動の走時残差を各OBSと地震波の伝播方向の方位角ごとに分類したところ、走時残差は顕著な方位依存性を示すことがわかった。特に、前弧海盆上に設置したOBSでこの方位依存性が明瞭であり、最大で約4%のP波速度の方位異方性が存在することがわかった。一方、海溝より海側ではこの異方性の特徴は不明瞭になる。また、海溝より陸側ではP波がより速く伝播する軸がほぼ東西(海溝に直交する方向)に向くことも確認した。調査海域のヒクランギ沈み込み帯では、構造探査と同じ時期に掘削調査も行われており、borehole breakoutのデータから最大水平圧縮応力がおおよそ海溝と直交する方向に向くことが明らかになっている。これらの結果から、P波速度の異方性も大局的にはプレート沈み込みに起因する広域応力場を反映していると考えられる。