Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Room B

General session » S06. Crustal Structure

[S06]AM-2

Tue. Sep 17, 2019 10:45 AM - 12:15 PM ROOM B (Symposium Hall, International Science Innovation Building)

chairperson:Ryuta Arai(JAMSTEC), ryosuke Azuma(Tohoku University)

11:00 AM - 11:15 AM

[S06-05] Phase velocity estimation based on spatial gradient of surface wave arrival time of teleseismic earthquakes observed by S-net

*Akira Ishigami1, Ryota Takagi1 (1. Univ. of Tohoku)

地震発生環境やプレート境界面におけるすべり特性の理解のためには,地震波速度構造が重要な情報の一つになる.また,近年の稠密観測網の整備により,観測波形を波動場として捉えることが可能になってきた.本研究では,2011年東北地方太平洋沖地震後に防災科学技術研究所が整備した日本海溝海底地震津波観測網(S-net)の観測データを用いて,東北日本前弧海域下における表面波位相速度分布を,位相到達時間の空間勾配を取ることで推定した.
解析には加速度計で記録された遠地地震による長周期表面波を使用する.観測記録をXYZ成分からUNE成分への座標変換後,上下動成分を用いて,Rayleigh波について解析を行った.解析手法はLin et al.(2009) に従い,解析手順は以下の通りである.まず,狭帯域フィルタを使用した周波数時間解析(FTAN)を行い,観測点毎に位相速度分散曲線を得た.次に,ある周期に着目してその周期における各観測点での到達時刻を空間的に補間して,到達時刻マップを得た.この到達時刻の勾配を計算することでRayleigh波のスローネスを求めることができ,スローネスの逆数を取ることで位相速度分布を得た.これを様々な周期で同様の解析を行い,20-50sの周期について5sごとに位相速度分布を得た.
上で述べた手順のうち,周波数時間解析における位相速度推定には,位相の2πの任意性の問題が存在する.一般に,標準的な位相速度分散曲線を基準としてサイクル数を推定することが行われるが,基準の位相速度分散曲線と実際の位相速度の差が大きい場合や,初期位相による影響が大きい場合には,サイクル数を誤って推定する可能性がある.本研究では,基準とする位相速度分散曲線を繰り返し修正することでこの問題を解決した.まず,初期モデルを陸域におけるPREM1Dモデルで与え,周波数時間解析を行い,各観測点で位相速度の分散曲線を得る.次に,得られた位相速度分散曲線の平均を取り,それを次のイタレーションの際の基準分散曲線として用いて周波数時間解析を行う.この処理を繰り返し行うことで,観測網において一定のサイクル数を得ることができた.
以上の解析で得られた位相速度は3.6-3.9km/sであり,Rayleigh波の位相速度として妥当な値が得られた.位相速度の周波数分散も確認することができ,周期45sにおいては高速度領域であるスラブを示すような速度異常が確認できた.また,宮城・福島沖の領域がそれより北および南の領域に比べて高速度を示すパターンも確認できた.
今後は,今回推定された位相速度の空間パターンが地下構造を反映したものであるのか,それとも解析上生じたものなのかを,解析する地震を増やすことで確かめたいと考えている.また,位相到達走時マップを得る際の補間方法も位相速度の空間パターンに影響を与えている可能性があり,これについても検討を行いたい.さらに,陸上の地震計のデータも用いて上記の解析を行うことで,海域だけでなく陸上を含めたより広い範囲における位相速度マップを得,先行研究と比較を行いたいと考えている.