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[S06-13] 近畿地域の震源断層モデル
はじめに 近畿地域の西南日本内帯では第四紀に活動的な南北〜北北東走向の逆断層と東西〜東北東走向の横ずれ断層が密に分布し、これらは鮮新-更新統および中後期更新世・完新世に形成された新旧の地形を累積的に変位させる(活断層研究会,1991)。当地域では1995年兵庫県南部地震以降に数多くの反射法地震探査が実施されており,得られた反射法地震探査断面の解釈に基づく震源断層モデルの推定が可能である。また、近畿地域には鮮新・更新統の堆積盆が広く分布し(例えば市原編,1993)、その層序は反射断面の解釈や断層のすべり速度を推定する上で有用である。そこで、当地域で過去に取得された反射法地震探査断面および変動地形・地質構造・鮮新-更新統の層序に基づき構造解釈を行い、近畿地域に分布する活断層の震源断層モデルの構築を試みた。本発表では主要な活構造について例を示すとともに、課題を整理する。
反射法断面と断層モデルの概要 震源断層モデルの構築に際し、1980年代以降に近畿地域で実施された主要な反射法地震探査断面を収集し,測線位置と断面のコンパイルを行った。反射断面の解釈にあたっては,産業技術総合研究所・地質調査総合センター発行の5万分の1・20万分の1地質図に加えて市原編(1993)や吉川・三田村(1999)、Satoguchi and Nagahashi (2012)等の鮮新・更新統の層序・構造を参照するとともに、都市圏活断層図,池田ほか(2002)等の活断層・変動地形の位置・性状に関するデータを参照した。また、重力異常データ(地質調査総合センター編(2013)など)も使用した。
逆断層である琵琶湖西岸断層帯と右横ずれ断層である花折断層帯は近接して並走しており、何れが主要な構造かについてはよく分かっていない。そこで両断層帯の構造的な関係について詳細に検討することを目的として、両者を横断する2測線で実施した高分解能反射法地震探査の結果(石山ほか, 2018)から、琵琶湖西岸断層帯は地表位置から西に中角度で傾斜する逆断層であること、また花折断層帯は高角ないしはほぼ垂直な断層面をなすと考えられる。一方、地震波速度構造モデル(Matsubara et al., 2017)に基づく測線沿いの東西断面・微小地震活動および震源メカニズム解(松原・ヤノ, 2018)によると、右横ずれ断層である花折断層と整合的なメカニズム解を持つ地震活動は深さ10 km以浅に限定されるのに対して、逆断層型のメカニズム解を持つ地震は堅田断層の断層面の下方延長部に分布しており、高角の右横ずれ断層である花折断層帯が、中角度で西に傾斜する逆断層である琵琶湖西岸断層帯の上盤側に発達するとする構造モデル(佐藤ほか, 2007)と整合的である。このように、花折断層帯・琵琶湖西岸断層帯については、反射法地震探査および再決定震源による地震活動・震源メカニズム解から、低角〜中角度で西に傾斜する逆断層である琵琶湖西岸断層帯が主断層であり、花折断層がその上盤側に発達する高角の横ずれ断層と推定される。
大阪平野周辺には、上町断層帯、生駒断層帯に代表される南北走向・東傾斜の逆断層と、有馬-高槻断層帯、六甲-淡路断層帯に代表される東西〜東北東走向の横ずれ断層が近接して分布しており、その構造的な関係は複雑である。上町断層・生駒断層を横断する大大特測線(Sato et al., 2009)の再解析結果や重力異常データから、上町断層・仏念寺山断層が生駒断層とは独立したリストリックな断層面を有する逆断層であること(石山ほか, 2018)、枚方断層や有馬-高槻断層帯が従来の推定よりも北および東に延び、その東端部がとほぼ収斂することなどが明らかとなった。2018年6月18日の大阪府北部の地震(M6.1)の本震・余震は、これらの複数の断層帯が近接する上町断層の北部延長である仏念寺山断層の深部延長周辺にあたるが、震源断層面の推定や大阪府北部の地震との関係を詳細に義論するためには、深部構造探査により仏念寺山断層などの構造的特徴を更に詳細に把握することが必要である。
引用文献 地質調査総合センター編, 日本重力データベースDVD版, 2013;市原編,『大阪層群』, 創元社,1993; 石山, 活断層・古地震研究調査報告, 3, 145-155, 2003; 石山ほか, 活断層・古地震研究調査報告, 4, 155-162, 2004; 石山ほか, 日本地震学会秋季大会予稿集, S24-04, 2018; 活断層研究会,新編日本の活断層,東京大学出版会, 1991; Sato, H. et al., Tectonophysics, 472, 86–94, 2009; Sato, H. et al., Tectonophysics, 644-645, 58-67, 2015, 2015; Satoguchi, Y. and Nagahashi,Y., Island Arc, 21, 149-169, 2012; 吉川・三田村, 地質学雑誌, 105, 332-340, 1999; 吉川ほか, 物理探査学会第77回春季大会講演論文集, 114-117, 1987.
反射法断面と断層モデルの概要 震源断層モデルの構築に際し、1980年代以降に近畿地域で実施された主要な反射法地震探査断面を収集し,測線位置と断面のコンパイルを行った。反射断面の解釈にあたっては,産業技術総合研究所・地質調査総合センター発行の5万分の1・20万分の1地質図に加えて市原編(1993)や吉川・三田村(1999)、Satoguchi and Nagahashi (2012)等の鮮新・更新統の層序・構造を参照するとともに、都市圏活断層図,池田ほか(2002)等の活断層・変動地形の位置・性状に関するデータを参照した。また、重力異常データ(地質調査総合センター編(2013)など)も使用した。
逆断層である琵琶湖西岸断層帯と右横ずれ断層である花折断層帯は近接して並走しており、何れが主要な構造かについてはよく分かっていない。そこで両断層帯の構造的な関係について詳細に検討することを目的として、両者を横断する2測線で実施した高分解能反射法地震探査の結果(石山ほか, 2018)から、琵琶湖西岸断層帯は地表位置から西に中角度で傾斜する逆断層であること、また花折断層帯は高角ないしはほぼ垂直な断層面をなすと考えられる。一方、地震波速度構造モデル(Matsubara et al., 2017)に基づく測線沿いの東西断面・微小地震活動および震源メカニズム解(松原・ヤノ, 2018)によると、右横ずれ断層である花折断層と整合的なメカニズム解を持つ地震活動は深さ10 km以浅に限定されるのに対して、逆断層型のメカニズム解を持つ地震は堅田断層の断層面の下方延長部に分布しており、高角の右横ずれ断層である花折断層帯が、中角度で西に傾斜する逆断層である琵琶湖西岸断層帯の上盤側に発達するとする構造モデル(佐藤ほか, 2007)と整合的である。このように、花折断層帯・琵琶湖西岸断層帯については、反射法地震探査および再決定震源による地震活動・震源メカニズム解から、低角〜中角度で西に傾斜する逆断層である琵琶湖西岸断層帯が主断層であり、花折断層がその上盤側に発達する高角の横ずれ断層と推定される。
大阪平野周辺には、上町断層帯、生駒断層帯に代表される南北走向・東傾斜の逆断層と、有馬-高槻断層帯、六甲-淡路断層帯に代表される東西〜東北東走向の横ずれ断層が近接して分布しており、その構造的な関係は複雑である。上町断層・生駒断層を横断する大大特測線(Sato et al., 2009)の再解析結果や重力異常データから、上町断層・仏念寺山断層が生駒断層とは独立したリストリックな断層面を有する逆断層であること(石山ほか, 2018)、枚方断層や有馬-高槻断層帯が従来の推定よりも北および東に延び、その東端部がとほぼ収斂することなどが明らかとなった。2018年6月18日の大阪府北部の地震(M6.1)の本震・余震は、これらの複数の断層帯が近接する上町断層の北部延長である仏念寺山断層の深部延長周辺にあたるが、震源断層面の推定や大阪府北部の地震との関係を詳細に義論するためには、深部構造探査により仏念寺山断層などの構造的特徴を更に詳細に把握することが必要である。
引用文献 地質調査総合センター編, 日本重力データベースDVD版, 2013;市原編,『大阪層群』, 創元社,1993; 石山, 活断層・古地震研究調査報告, 3, 145-155, 2003; 石山ほか, 活断層・古地震研究調査報告, 4, 155-162, 2004; 石山ほか, 日本地震学会秋季大会予稿集, S24-04, 2018; 活断層研究会,新編日本の活断層,東京大学出版会, 1991; Sato, H. et al., Tectonophysics, 472, 86–94, 2009; Sato, H. et al., Tectonophysics, 644-645, 58-67, 2015, 2015; Satoguchi, Y. and Nagahashi,Y., Island Arc, 21, 149-169, 2012; 吉川・三田村, 地質学雑誌, 105, 332-340, 1999; 吉川ほか, 物理探査学会第77回春季大会講演論文集, 114-117, 1987.