日本地震学会2019年度秋季大会

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A会場

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08]PM-2

2019年9月17日(火) 15:15 〜 16:45 A会場 (百周年記念ホール)

座長:鈴木 岳人(青山学院大学)、麻生 尚文(東京工業大学)

15:45 〜 16:00

[S08-14] 多孔質媒質中での渦粘性の時間発展の理解とその地震学的意義

*鈴木 岳人1 (1. 青山学院大学)

断層岩をはじめとした多孔質媒質中の流れにおいて、それが乱流となる場合は広く理論的・実験的に扱われてきた。それを記述するモデルも多数あるが、特にk-epsilonモデルはしばしば用いられている [例えばPedras and de Lemos, 2001 (PdL)]。ここでkとepsilonはそれぞれ乱流エネルギーとその高波数領域への散逸率を表す。これらを用いて渦粘性率を求め、乱流の状態を考察していくというモデルである。

 特に、kとepsilonの時間発展を考えるにあたって、多孔質媒質中では、平均流から擾乱へのエネルギーの移送が起こり続けることに注意されたい。平均流が空隙の壁に衝突することで乱れが生成されるからである。それゆえ、一様な平均流を伴う定常状態で有限のkとepsilonが存在し得る(PdL)。通常の乱流においては見られない特徴であるこの事実は、k-epsilon相空間上でアトラクタの連続的な分布を示唆する。このような特殊なアトラクタが存在する場合の解軌道の振る舞いを明らかにし、特に上述の渦粘性率の時間発展との関係を調べることは、地震学的・物理学的観点から重要である。

 定式化についてはPdLに従う。大きさuDの一様平均流が存在するとすれば、系の並進対称性から支配方程式中の空間微分の項が全て消える。この時直線epsilon=ck uD k/sqrt{K}が二変数に共通のヌルクラインであることが分かり、また解軌道としてepsilon=epsilon0 (k/k0)^C2も得られた。ここでckとC2はモデルパラメータ、Kは透水係数、k0とepsilon0はそれぞれkとepsilonの初期値である。しばしばck=0.28, C2=1.9が用いられる。ここで、k-epsilon相空間上で0k uD k/sqrt{K}を満たす領域を領域I, epsilon>ck uD k/sqrt{K}>0を満たす領域を領域IIとする。支配方程式から、領域I(II)では解軌道上を時間とともに右上(左下)に移動することがわかった。これはヌルクラインが線状のアトラクタになることを示す。

 一方渦粘性はnuT=Cmu k2/epsilonで与えられることに注意する。ここでCmuは正定数である。ゆえに、その上では渦粘性が一定値となる曲線(等渦粘性線)はepsilon=Cmu k2 /nuTで与えられ、原点を頂点とする放物線であることが分かる。先の解軌道の方程式と比較してみると、C2=1.9<2から、等渦粘性線と解軌道の交点で前者の勾配の方が後者のそれより大きい。従って、解の運動方向も合わせて考えれば、領域I(II)では渦粘性率は増加(減少)することが分かる。多孔質媒質中の乱流においては、渦粘性の時間変化がk-epsilon相空間上の領域によって異なることになる。

 この振る舞いは、物理的には領域Iでは平均流から擾乱へのエネルギー供給が支配的、領域IIではエネルギー散逸の効果が支配的であることによる。これを理解するために、k=const.の直線を考えよう。この時、領域IIの方が領域Iよりもepsilonの値が大きい。変数epsilonはエネルギー散逸を表すため、領域IIではその効果がより強く働くのである。

 こういった渦粘性の時間発展は、平均流の振る舞いにも影響を与え得る(例えばAkbari and Namin, 2013)。本モデルではこの効果を取り入れていないが、第一近似として本結果を拡張すると、領域I(II)ではより平均流を増加(減少)させることが示唆される。こういった振る舞いから、例えば亀裂型とパルス型、あるいは通常の地震とゆっくり地震の振る舞いの違いを、乱流の観点から統一的に説明することを目指す。