11:15 〜 11:30
[S08-25] 大阪府北部の地震の余震域とその周辺の応力場
1. はじめに
大阪府北部の地震(Mj 6.1)は、有馬高槻断層帯(ATL)の東端部付近、京都西山断層帯(KNF)、生駒断層帯、宇治川断層など活断層が集中する地域で2018年6月18日に発生した。余震域とその周辺の104か所において臨時地震観測を行い、周辺の「満点計画」の観測点および定常観測点のデータと統合して、詳細な余震の震源分布、地震メカニズム解の空間分布、および応力場を推定した。さらに、地震発生の約10年前から継続している満点計画による地震データを用いて、震源域周辺の広域の応力場を推定した。これらの推定結果と、浅野(2018)による震源モデルから推定される今回の地震による応力変化を組み合わせて、震源断層の両端部等における応力状態の推定を試みた。
2. 結果
余震の震央分布(2018年6月18日~9月1日)と観測点の分布を図に示す。余震は、阿武山観測所の直下、ATLとKNF付近に広く分布している。ATLの南側には微小地震のリニアメント(線状分布)が知られていたが(京都大学, 1995)、分布の南西端付近では、余震はそれに沿って延びているように見える。ATLの北方にも広く延びている。これらは、水平成層構造を用いて観測点補正値を考慮して決定されたものであるが、ATLとKNFを境にして浅部の速度構造が大きく異なっているため、震源の絶対位置については、3次元の速度構造を考慮して検討する必要がある。地震のメカニズム解は、基本的には南部で横ずれ型、北部で逆断層であり、2枚の断層が関係している震源モデル(例えば、浅野,2018)と調和的である。
余震のメカニズム解を用いた応力逆解析によると、余震域の応力場は、最大圧縮応力の向きが西北西-東南東の横ずれ型であり、近畿地方で一般的な東西方向より時計回りに回転している。余震域の北部では逆断層型となっている。満点計画データによる広域の応力場もこれと調和的であり、ATLの深部延長のすべりによる応力集中の可能性が示唆される。余震域の南部と北部における典型的なメカニズム解を示す地震(南部は横ずれ型、北部は逆断層型)に着目すると、その下限は、余震活動が延びている南西方向および北方に向かって浅くなるお椀型を示しており、これらの端部において応力集中が発生していない可能性が示唆される。
謝辞:地元の皆さまには臨時観測に際して大変お世話になっております。記して感謝申し上げます。
図 余震の震央分布と観測点の分布 余震分布は2018年6月18日から9月1日まで。
+と▽が104カ所の臨時点、+は0.1満点の1成分観測点(松本・他, 2018)、▽はオンラインの3成分観測点。△は満点計画の3成分観測点、□は高感度の定常観測点。
大阪府北部の地震(Mj 6.1)は、有馬高槻断層帯(ATL)の東端部付近、京都西山断層帯(KNF)、生駒断層帯、宇治川断層など活断層が集中する地域で2018年6月18日に発生した。余震域とその周辺の104か所において臨時地震観測を行い、周辺の「満点計画」の観測点および定常観測点のデータと統合して、詳細な余震の震源分布、地震メカニズム解の空間分布、および応力場を推定した。さらに、地震発生の約10年前から継続している満点計画による地震データを用いて、震源域周辺の広域の応力場を推定した。これらの推定結果と、浅野(2018)による震源モデルから推定される今回の地震による応力変化を組み合わせて、震源断層の両端部等における応力状態の推定を試みた。
2. 結果
余震の震央分布(2018年6月18日~9月1日)と観測点の分布を図に示す。余震は、阿武山観測所の直下、ATLとKNF付近に広く分布している。ATLの南側には微小地震のリニアメント(線状分布)が知られていたが(京都大学, 1995)、分布の南西端付近では、余震はそれに沿って延びているように見える。ATLの北方にも広く延びている。これらは、水平成層構造を用いて観測点補正値を考慮して決定されたものであるが、ATLとKNFを境にして浅部の速度構造が大きく異なっているため、震源の絶対位置については、3次元の速度構造を考慮して検討する必要がある。地震のメカニズム解は、基本的には南部で横ずれ型、北部で逆断層であり、2枚の断層が関係している震源モデル(例えば、浅野,2018)と調和的である。
余震のメカニズム解を用いた応力逆解析によると、余震域の応力場は、最大圧縮応力の向きが西北西-東南東の横ずれ型であり、近畿地方で一般的な東西方向より時計回りに回転している。余震域の北部では逆断層型となっている。満点計画データによる広域の応力場もこれと調和的であり、ATLの深部延長のすべりによる応力集中の可能性が示唆される。余震域の南部と北部における典型的なメカニズム解を示す地震(南部は横ずれ型、北部は逆断層型)に着目すると、その下限は、余震活動が延びている南西方向および北方に向かって浅くなるお椀型を示しており、これらの端部において応力集中が発生していない可能性が示唆される。
謝辞:地元の皆さまには臨時観測に際して大変お世話になっております。記して感謝申し上げます。
図 余震の震央分布と観測点の分布 余震分布は2018年6月18日から9月1日まで。
+と▽が104カ所の臨時点、+は0.1満点の1成分観測点(松本・他, 2018)、▽はオンラインの3成分観測点。△は満点計画の3成分観測点、□は高感度の定常観測点。