13:00 〜 14:30
[S08P-03] 1984年長野県西部地震の余震の震源パラメータ
1984年長野県西部地震(M6.8)は,1984年9月14日08:48 (JST)に御嶽山の南東で発生し,地滑りなどによる被害をもたらした.本震断層については, Yoshida and Koketsu (1990)により,東北東-西南西方向の右横ずれ断層と解釈されているが,本震の約23時間後に発生した最大余震(M6.2)は,本震断層とは共役な左横ずれ断層の地震と考えられている(e.g., Ooida et al., 1989).
この地震の震源域では地震活動が活発なため,本震発生後の臨時地震観測(e.g., 1986年長野県西部合同地震観測班, 1989)のみならず,1995年以降,高密度な地震観測が行われている(Iio et al., 1999).この高密度地震観測データを活用して,この領域で発生した地震の震源パラメータの推定も多く行われている(Imanishi et al., 2004; Venkataraman et al., 2006など).しかしながら,1984年の本震発生直後の余震の震源パラメータの解析事例は少ない.そこで,本研究では,1984年の本震後の余震の震源パラメータの推定を行った.
本研究では,Albuquerque Seismological Laboratory (ASL)/USGS (1976)による,Modified High Gain Long Period Observatory (ASRO)の観測網で展開されていた観測点MAJOのSHZ成分の波形データを使用した.ただし,1983年3月3日に地震計の感度設定の変更が行われており,1988年8月23日に地震計の変更が行われている.このような設定変更をまたいだデータも利用可能であるが,簡単のため,本研究では地震計やその感度設定が一定かつ,1984年長野県西部地震の本震と多くの余震を含む期間である,1983年3月3日から1988年8月22日の約5年間のデータを用いた.気象庁カタログでは,この期間に1984年長野県西部地震の震源域で発生したM3.5以上のイベントは81個ある.なお,使用した波形データのサンプリングレートは20Hzであり,後述のスペクトル比法の適用にあたり,微小地震のコーナー周波数の分離は困難なことが想定されるため,使用するイベントをM3.5以上に限定した.
本研究では,基本的にBaltay et al. (2011)のスペクトル比法に従い,震源パラメータを推定した.ただし,このスペクトル比法を適用するためには,解析対象とする地震と経験的グリーン関数(EGF)として使用する地震の震源位置が互いに近く,さらにそれらのメカニズム解が類似している必要がある.気象庁カタログに掲載されている震源位置は,特に深さ方向の拘束が良くないが,観測点MAJOまでの震央距離は100km程度あるため,2つの地震の間の距離が5km以内であれば,スペクトル比法の適用にあたっての波線経路の近似が可能であると仮定した.また,メカニズム解については,特にEGFとして使用する地震については推定されていない場合が多いので,観測波形の相関の高いイベントのみを使用した.図1に,1984年9月16日に発生したM4.6の地震について,1985年5月28日に発生したM3.9の地震をEGFとして使用した例を示した.ここでは,P波初動到達の2.0秒前から7.0秒後までのP波部分を使用した例を示す(S波到達はP波初動到達の約12秒後).この9.0秒間のタイムウィンドウについて,両端10%のコサインテーパーを適用した後にFFTを行い,7ポイント移動平均によりスペクトルを平滑化した.そして,2つのイベントの観測スペクトルの比について,オメガ二乗モデルをグリッドサーチでfittingすることで,2つの地震の震源スペクトルのコーナー周波数(fc)を推定した.図1の例では,M4.6のイベントのfcは1.26Hz,M3.9のEGFのfcは2.51Hzと推定された.
発表では,その他のイベントについての解析結果も示し,上述の高密度地震観測で得られた結果と比較する.また,本研究では単一観測点のデータしか使用できないため,放射パターン等の補正についても検討する.
謝辞:本研究では,IRIS-DMCの波形データ,気象庁震源カタログ,ISC Bulletinを使用させていただきました.
この地震の震源域では地震活動が活発なため,本震発生後の臨時地震観測(e.g., 1986年長野県西部合同地震観測班, 1989)のみならず,1995年以降,高密度な地震観測が行われている(Iio et al., 1999).この高密度地震観測データを活用して,この領域で発生した地震の震源パラメータの推定も多く行われている(Imanishi et al., 2004; Venkataraman et al., 2006など).しかしながら,1984年の本震発生直後の余震の震源パラメータの解析事例は少ない.そこで,本研究では,1984年の本震後の余震の震源パラメータの推定を行った.
本研究では,Albuquerque Seismological Laboratory (ASL)/USGS (1976)による,Modified High Gain Long Period Observatory (ASRO)の観測網で展開されていた観測点MAJOのSHZ成分の波形データを使用した.ただし,1983年3月3日に地震計の感度設定の変更が行われており,1988年8月23日に地震計の変更が行われている.このような設定変更をまたいだデータも利用可能であるが,簡単のため,本研究では地震計やその感度設定が一定かつ,1984年長野県西部地震の本震と多くの余震を含む期間である,1983年3月3日から1988年8月22日の約5年間のデータを用いた.気象庁カタログでは,この期間に1984年長野県西部地震の震源域で発生したM3.5以上のイベントは81個ある.なお,使用した波形データのサンプリングレートは20Hzであり,後述のスペクトル比法の適用にあたり,微小地震のコーナー周波数の分離は困難なことが想定されるため,使用するイベントをM3.5以上に限定した.
本研究では,基本的にBaltay et al. (2011)のスペクトル比法に従い,震源パラメータを推定した.ただし,このスペクトル比法を適用するためには,解析対象とする地震と経験的グリーン関数(EGF)として使用する地震の震源位置が互いに近く,さらにそれらのメカニズム解が類似している必要がある.気象庁カタログに掲載されている震源位置は,特に深さ方向の拘束が良くないが,観測点MAJOまでの震央距離は100km程度あるため,2つの地震の間の距離が5km以内であれば,スペクトル比法の適用にあたっての波線経路の近似が可能であると仮定した.また,メカニズム解については,特にEGFとして使用する地震については推定されていない場合が多いので,観測波形の相関の高いイベントのみを使用した.図1に,1984年9月16日に発生したM4.6の地震について,1985年5月28日に発生したM3.9の地震をEGFとして使用した例を示した.ここでは,P波初動到達の2.0秒前から7.0秒後までのP波部分を使用した例を示す(S波到達はP波初動到達の約12秒後).この9.0秒間のタイムウィンドウについて,両端10%のコサインテーパーを適用した後にFFTを行い,7ポイント移動平均によりスペクトルを平滑化した.そして,2つのイベントの観測スペクトルの比について,オメガ二乗モデルをグリッドサーチでfittingすることで,2つの地震の震源スペクトルのコーナー周波数(fc)を推定した.図1の例では,M4.6のイベントのfcは1.26Hz,M3.9のEGFのfcは2.51Hzと推定された.
発表では,その他のイベントについての解析結果も示し,上述の高密度地震観測で得られた結果と比較する.また,本研究では単一観測点のデータしか使用できないため,放射パターン等の補正についても検討する.
謝辞:本研究では,IRIS-DMCの波形データ,気象庁震源カタログ,ISC Bulletinを使用させていただきました.