13:00 〜 14:30
[S08P-08] 豊後水道における深部低周波微動の潮汐相関の時間変化: 長期的スロースリップイベントおよび深部超低周波地震との関係
豊後水道では,長期的スロースリップイベント(LSSE)が数年間隔で繰り返し[例えば,Kobayashi, 2017, EPS; Takagi et al., 2019, JGR],それに同期して深部低周波微動(LFT)・深部低周波地震(LFE)が活発化している[Obara, 2010, JGR; Hirose et al., 2010, Science].弘瀬・他 [2019, JpGU]は,気象庁LFEの潮汐相関がLSSE前に大きくなる傾向を示し,この変化はLSSEによる応力擾乱の影響が小さくなるためと解釈した.ただし,気象庁の目視によるLFEの検知能力の時間的安定性はエンベロープ相関法で決定されたLFTに比べると低い[Obara, 2010]ため,人為的な影響が含まれている可能性もある.
そこで本研究では,エンベロープ相関法で検出された防災科研LFT[https://hinetwww11.bosai.go.jp/auth/tremor/auto_hypo_catalog]の潮汐相関の時間変化についても調査した.用いたLFTは,2001年1月1日~2017年4月30日に豊後水道直下(LSSEに隣接する領域Ba[Obara, 2010に準拠])で発生した1507個である.理論潮汐応答を計算する際には,位置・発生時刻・断層の情報が必要となる.LFTの位置については,震央はカタログ情報をそのまま用いたが,深さは,LFTはプレート境界で発生していると考えプレート形状[Hirose et al., 2008, JGR]を考慮して決めた.発生時刻については,カタログ値をそのまま用いたが,分解能は1時間である.領域Ba内で同時刻に発生したとされたLFTは39ペアあった.断層パラメータについては,LFTはプレート境界における応力解放現象の一つという解釈を前提とし,プレート形状とプレート収束方向[DeMets et al., 2010, GJI]を考慮してLFT毎に設定した.
LFTの震源における理論潮汐応答は,固体地球潮汐と海洋潮汐荷重効果の両方を考慮し,潮汐指標として体積歪ΔV,仮定した断層面上のせん断応力Δτ,法線応力Δσ,及びΔCFF(見掛けの摩擦係数は0.1, 0.4, 0.7)の6成分を解析対象とした.体積歪及び法線応力については膨張・拡張を正,収縮・圧縮を負とした.せん断応力及びΔCFFについては断層すべりを促進する方向を正,抑制する方向を負とした.潮汐位相角は,各時系列についてイベント前及び後の極小値の位相を-180°及び180°,極小値間の極大値の位相を0°とし,その間は等分割した位相と定義した.潮汐位相角に基づき,LFTと潮汐との相関度をp値[Schuster, 1897]で評価した.p値は小さい方が高い潮汐相関度を示す.
解析の結果,LFTはΔτの潮汐位相角が0°(すべりを促進)であるときに発生しやすいことが明らかとなった.同様の結果は,気象庁LFEでもみられていた.この結果は見掛けの摩擦係数が極めて小さく,間隙水圧が極めて高いことを示唆しており,地震波速度構造から推測される流体の存在[Hirose et al., 2008]とも整合する.
解析期間中にLSSEは複数回発生している[例えば,Kobayashi, 2017, EPS; Takagi et al., 2019, JGR].p値はそれらLSSE時に極めて小さく(潮汐との相関が高く)なった.同様の結果は,気象庁LFEでもみられていた.しかし,LFTではp値がLSSE前に小さくなる傾向は認められなかった.気象庁LFEは目視による検測であるため,イベントの見落としの可能性はある.ただし,LFEはLFTの中でも継続時間が特に短く孤立的なイベントであるため,この特性の違いが,LFTとLFEのp値の時間変化における違いの要因である可能性は否定できない.細かく見ると,LSSE期間中でもp値が大きい(潮汐相関が低い)時期が見られ,そのタイミングでは,深部超低周波地震(dVLFE)が発生している.dVLFEも全期間ではLFTよりは低いながらも潮汐相関を持つが,上記期間の潮汐相関は低かった.
そこで本研究では,エンベロープ相関法で検出された防災科研LFT[https://hinetwww11.bosai.go.jp/auth/tremor/auto_hypo_catalog]の潮汐相関の時間変化についても調査した.用いたLFTは,2001年1月1日~2017年4月30日に豊後水道直下(LSSEに隣接する領域Ba[Obara, 2010に準拠])で発生した1507個である.理論潮汐応答を計算する際には,位置・発生時刻・断層の情報が必要となる.LFTの位置については,震央はカタログ情報をそのまま用いたが,深さは,LFTはプレート境界で発生していると考えプレート形状[Hirose et al., 2008, JGR]を考慮して決めた.発生時刻については,カタログ値をそのまま用いたが,分解能は1時間である.領域Ba内で同時刻に発生したとされたLFTは39ペアあった.断層パラメータについては,LFTはプレート境界における応力解放現象の一つという解釈を前提とし,プレート形状とプレート収束方向[DeMets et al., 2010, GJI]を考慮してLFT毎に設定した.
LFTの震源における理論潮汐応答は,固体地球潮汐と海洋潮汐荷重効果の両方を考慮し,潮汐指標として体積歪ΔV,仮定した断層面上のせん断応力Δτ,法線応力Δσ,及びΔCFF(見掛けの摩擦係数は0.1, 0.4, 0.7)の6成分を解析対象とした.体積歪及び法線応力については膨張・拡張を正,収縮・圧縮を負とした.せん断応力及びΔCFFについては断層すべりを促進する方向を正,抑制する方向を負とした.潮汐位相角は,各時系列についてイベント前及び後の極小値の位相を-180°及び180°,極小値間の極大値の位相を0°とし,その間は等分割した位相と定義した.潮汐位相角に基づき,LFTと潮汐との相関度をp値[Schuster, 1897]で評価した.p値は小さい方が高い潮汐相関度を示す.
解析の結果,LFTはΔτの潮汐位相角が0°(すべりを促進)であるときに発生しやすいことが明らかとなった.同様の結果は,気象庁LFEでもみられていた.この結果は見掛けの摩擦係数が極めて小さく,間隙水圧が極めて高いことを示唆しており,地震波速度構造から推測される流体の存在[Hirose et al., 2008]とも整合する.
解析期間中にLSSEは複数回発生している[例えば,Kobayashi, 2017, EPS; Takagi et al., 2019, JGR].p値はそれらLSSE時に極めて小さく(潮汐との相関が高く)なった.同様の結果は,気象庁LFEでもみられていた.しかし,LFTではp値がLSSE前に小さくなる傾向は認められなかった.気象庁LFEは目視による検測であるため,イベントの見落としの可能性はある.ただし,LFEはLFTの中でも継続時間が特に短く孤立的なイベントであるため,この特性の違いが,LFTとLFEのp値の時間変化における違いの要因である可能性は否定できない.細かく見ると,LSSE期間中でもp値が大きい(潮汐相関が低い)時期が見られ,そのタイミングでは,深部超低周波地震(dVLFE)が発生している.dVLFEも全期間ではLFTよりは低いながらも潮汐相関を持つが,上記期間の潮汐相関は低かった.