日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(3日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

S08P

2019年9月18日(水) 13:00 〜 14:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

13:00 〜 14:30

[S08P-23] 日向灘における大地震発生シナリオの再検討

*中田 令子1、堀 高峰1、兵藤 守1 (1. 海洋研究開発機構)

日向灘では近年、スロー地震やM5~6の地震が発生するなど、地殻活動が活発である。日向灘から豊後水道にかけて分布している長期的スロースリップイベントのすべり域は3つのセグメントに分けられるが、活動の中心が隣接するセグメントに移動しているように見える。つまり、プレート間の固着があまり強くなく、すべりが走向方向に伝播できる状況であることを示唆している。長期的スロースリップイベントのupdip側は、過去に大地震が発生している場所である。この領域で、2019年3月と5月に、M5.4~6.3の地震が5回発生した。ともに、過去のM7前後の地震(3月の地震は1970年の地震、5月の地震は1996年10月の地震)の震源域とほぼ同じエリアで発生したと見られる。

将来の大地震の震源域となりうる強く固着した領域の端では、応力集中が生じやすい。それまで比較的静穏であった領域で地殻活動が活発になってきたということは、それまで強く固着していた領域で、固着がはがれてきていることを示唆していると考えられる。つまり、その付近で大地震発生が近くなっている可能性がある。日向灘単独で起きうる大地震としては、2タイプある。約200年に1回の頻度で発生しているM7.5以上の地震(1662年・1968年)と、10数年~数十年間隔で発生しているM7前後(6.7~7.2)の地震(1970年・1996年など)である。また、1968年の地震の震源域を含む日向灘の北側は、南海トラフで発生するM>8地震の震源域の西端になる可能性もある。1662年の地震の震源域を含む日向灘の南側は、2011年東北地方太平洋沖地震前の状況との類似点もみられる。どのような地殻活動が、どのタイプの地震発生が近いことを示唆しているのか、起こりうるシナリオを今から検討しておく必要がある。

そこで、我々は日向灘に注目し、過去や近年の地殻活動についてまとめるとともに、新たなモデル構築および地震発生サイクルシミュレーションに取り掛かっている。本講演では、日向灘における地殻活動のまとめと、新たなシミュレーション結果に加えて、南海トラフ[Nakata et al., 2012; 2014; Hyodo et al., 2016; Nakano et al., 2018]および日本海溝 [Nakata et al., 2016]での地震発生サイクルシミュレーションで得られた知見をもとに、日向灘におけるプレート固着の現状や今後起こりうるシナリオについて検討する。