13:00 〜 14:30
[S08P-24] 改良型Olami-Feder-Christensenモデルによる地震の規模と発生頻度の関係
実際の地震は再現は困難であることが多いので、数値シミュレーションによる研究は欠かせない。地震発生サイクルの数値シミュレーションとは、テクトニックな運動、地殻の構造・強度、岩石の構成則などを元に構築された力学的なモデルを数値的に解くことであり、岩石破壊実験や地震観測から得られる地殻の構造などの情報が高精度化することや計算機の高性能化によって、より大規模・高精度、つまり、現実に近いシミュレーションが可能となりつつある。
一方で地震発生サイクルを簡単な数理モデルで理解しようという試みも行なわれている。Olamiらによって考案されたOlami-Feder-Christenseモデル(以下、OFCモデル)は地震を2次元のセルオートマトンによってモデル化したもので、最も簡単な地震発生サイクルモデルのひとつである。OFCモデルでは、各セルのひずみ(エネルギー)または応力の蓄積・開放・伝達のみを考慮している。
従来のOFCモデルおよびその派生モデルでは、グーテンベルグ・リヒターの法則と同様に、地震の規模とその発生頻度との間にべき乗の関係が成り立つことが多い。また、実際の地震と同様に大規模地震の周期性や余震発生頻度の変移が見られるという報告もある。このことは、OFCモデルが単純ながらも地震発生サイクルの本質を捉えている可能性を示している。しかし、実際の地球上で発生する地震発生は上に挙げた力学的な諸条件にも依存する。そこで、本研究では、OFCモデルの結果をより地震学的な立場から評価可能にするために、数理モデルとしての特徴を残しながら力学的な条件のいくつかをモデルに組み込み、条件による地震発生の変化を調査した。
一般的なOFCモデルによる計算手順は以下の通りであり、我々のモデルもこの流れに従っている。
1. 2次元の正方形、または長方形の断層を考え、これをセルに分割し、各セルに初期ひずみ(エネルギー)、または応力としてランダムな数値を与える。
2. すべてのセルでひずみを増加させる。
3. あるセルでひずみが予め設定してある臨界値に達したら、そのセルはひずみを開放し、隣接するセルに開放したひずみを分配する。なお、断層の境界の隣接セルがないセルは、境界方向へのひずみの伝達は行なわない(ひずみは失われる)。
4. もし、3の結果、分配を受けたセルでひずみが臨界値に達したら、そのセルでもひずみの解放・分配を行なう。
5. 4をすべてのセルが持つひずみが臨界値未満となるまで繰り返す。
6. すべてのセルに対して3~5を行なう。ひとつのセルのひずみが臨界値に達したことにより、連鎖的に発生したひずみ開放の回数をひとつの地震の規模とする。
7. 終了時間(回数)に達するまで2~6を繰り返す。
今回は、一部の領域で断層破壊強度(つまり、ひずみの臨界値)を変化するモデル、セルごとの破壊強度が時間に依存して変化するモデル、さらにセルごとのひずみの蓄積率および開放率が時簡・空間に依存して変動するモデルなどを作成し、破壊強度やひずみの蓄積・開放の空間的・時間的な変化を考慮していない従来のOFCモデルとの比較を行なった。その際に、主に、地震の規模とその発生頻度に着目して解析を行なった。
作成したモデルはすべてでグーテンベルグ・リヒター則と同様にべき乗則が成り立ち、そのべき指数は-1.0~-1.6程度であった。断層の破壊強度を空間的にのみ変化させたモデルのべき指数は約-1.2となり、従来のOFCモデル(図の○印)のべき指数とほぼ一致した。しかし、断層の破壊強度を時間的に変化させたモデルではべき指数の変化が見られた。例えば、一度地震の発生したセルの臨界値を80%に減少させ、時間ステップごとに1%づつ回復させたモデル(図の+印)ではべき指数は約-1.4となった。また、ひずみの蓄積率や開放率が変化する場合でもべき指数に変化が生じることが示された。時間とともにひずみの蓄積率が大きくなる場合は関数の形によらずべき指数の絶対値が減少した。ひずみの開放が複数の時間ステップに渡って継続するモデルでは、小規模地震が発生しなくなったが、大規模地震に関してはべき乗則が見られ、べき指数の絶対値は大きくなった。
従来のOFCモデルでもひずみの隣接セルへの分配率を変化させるとべき指数が変化することが知られている。これらのことから、べき指数は、同一時間ステップ、異なる時間ステップに関わらず、系全体が保持し得るひずみ量に対する系全体の保持しているひずみの量に依存していることが示唆される。グーテンベルグリヒター則の傾き(b値)の変化をもたらす地下構造の不均質性や大地震の前後でのひずみ蓄積率の変化はこれに相当する可能性が考えられる。
一方で地震発生サイクルを簡単な数理モデルで理解しようという試みも行なわれている。Olamiらによって考案されたOlami-Feder-Christenseモデル(以下、OFCモデル)は地震を2次元のセルオートマトンによってモデル化したもので、最も簡単な地震発生サイクルモデルのひとつである。OFCモデルでは、各セルのひずみ(エネルギー)または応力の蓄積・開放・伝達のみを考慮している。
従来のOFCモデルおよびその派生モデルでは、グーテンベルグ・リヒターの法則と同様に、地震の規模とその発生頻度との間にべき乗の関係が成り立つことが多い。また、実際の地震と同様に大規模地震の周期性や余震発生頻度の変移が見られるという報告もある。このことは、OFCモデルが単純ながらも地震発生サイクルの本質を捉えている可能性を示している。しかし、実際の地球上で発生する地震発生は上に挙げた力学的な諸条件にも依存する。そこで、本研究では、OFCモデルの結果をより地震学的な立場から評価可能にするために、数理モデルとしての特徴を残しながら力学的な条件のいくつかをモデルに組み込み、条件による地震発生の変化を調査した。
一般的なOFCモデルによる計算手順は以下の通りであり、我々のモデルもこの流れに従っている。
1. 2次元の正方形、または長方形の断層を考え、これをセルに分割し、各セルに初期ひずみ(エネルギー)、または応力としてランダムな数値を与える。
2. すべてのセルでひずみを増加させる。
3. あるセルでひずみが予め設定してある臨界値に達したら、そのセルはひずみを開放し、隣接するセルに開放したひずみを分配する。なお、断層の境界の隣接セルがないセルは、境界方向へのひずみの伝達は行なわない(ひずみは失われる)。
4. もし、3の結果、分配を受けたセルでひずみが臨界値に達したら、そのセルでもひずみの解放・分配を行なう。
5. 4をすべてのセルが持つひずみが臨界値未満となるまで繰り返す。
6. すべてのセルに対して3~5を行なう。ひとつのセルのひずみが臨界値に達したことにより、連鎖的に発生したひずみ開放の回数をひとつの地震の規模とする。
7. 終了時間(回数)に達するまで2~6を繰り返す。
今回は、一部の領域で断層破壊強度(つまり、ひずみの臨界値)を変化するモデル、セルごとの破壊強度が時間に依存して変化するモデル、さらにセルごとのひずみの蓄積率および開放率が時簡・空間に依存して変動するモデルなどを作成し、破壊強度やひずみの蓄積・開放の空間的・時間的な変化を考慮していない従来のOFCモデルとの比較を行なった。その際に、主に、地震の規模とその発生頻度に着目して解析を行なった。
作成したモデルはすべてでグーテンベルグ・リヒター則と同様にべき乗則が成り立ち、そのべき指数は-1.0~-1.6程度であった。断層の破壊強度を空間的にのみ変化させたモデルのべき指数は約-1.2となり、従来のOFCモデル(図の○印)のべき指数とほぼ一致した。しかし、断層の破壊強度を時間的に変化させたモデルではべき指数の変化が見られた。例えば、一度地震の発生したセルの臨界値を80%に減少させ、時間ステップごとに1%づつ回復させたモデル(図の+印)ではべき指数は約-1.4となった。また、ひずみの蓄積率や開放率が変化する場合でもべき指数に変化が生じることが示された。時間とともにひずみの蓄積率が大きくなる場合は関数の形によらずべき指数の絶対値が減少した。ひずみの開放が複数の時間ステップに渡って継続するモデルでは、小規模地震が発生しなくなったが、大規模地震に関してはべき乗則が見られ、べき指数の絶対値は大きくなった。
従来のOFCモデルでもひずみの隣接セルへの分配率を変化させるとべき指数が変化することが知られている。これらのことから、べき指数は、同一時間ステップ、異なる時間ステップに関わらず、系全体が保持し得るひずみ量に対する系全体の保持しているひずみの量に依存していることが示唆される。グーテンベルグリヒター則の傾き(b値)の変化をもたらす地下構造の不均質性や大地震の前後でのひずみ蓄積率の変化はこれに相当する可能性が考えられる。