09:45 〜 10:00
[S09-02] 2018年北海道胆振東部地震の余震の震源メカニズム解と応力場
(1)はじめに
2018年9月6日,北海道胆振東部地震(MJMA6.7)(以下,胆振地震と呼ぶ)が発生した。Katsumata et al. (Earth, Planets and Space, 2019) によると,本震の特徴として以下の2つが挙げられる。第一に,本震の震源の深さは30 km以深であり,日本の他地域の内陸地震が20 km以浅であるのに比べて深い。第二に,P波初動の押し引きから決定した震源メカニズム解は横ずれ断層型を示し,逆断層型を示すCMT解と一致しない。Katsumata et al. (2019) は本震直後数時間の余震が,北部・中部・南部と3つに大別される点に着目し,本震の破壊は中部の小さい横ずれ断層で始まり,その後,北部と南部の大きな逆断層が滑りを起こしたというモデルを提唱した。
本研究では,胆振地震の余震の震源メカニズム解を多数決定し,応力インバージョン法により震源域の応力場を推定した。胆振地震の震源域付近は,定常的な地震活動が非常に低いため,震源メカニズム解を用いた応力場の推定は困難であった場所である。また,得られた応力場の空間分布とKatsumata et al. (2019)が提唱した断層モデルとの比較を行った。
(2)データと解析
胆振地震発生直後から10月31日まで,北海道大学・東京大学地震研究所・九州大学・東北大学・鹿児島大学・名古屋大学・弘前大学・京都大学防災研究所・千葉大学・防災科学技術研究所が合同で臨時余震観測を実施した。本研究では,この臨時観測点と定常観測点(北海道大学・気象庁・Hi-net)のP波初動の押し引きを使用して震源メカニズム解を決定した。振幅値は使用していない。震源メカニズム解の推定には,HASH (Hardebeck and Shearer, 2004) を用いた。その際,Katsumata et al. (2019) の一次元地震波速度構造を仮定した。HASHで決定した震源メカニズム解の内,精度の良い,Quality A, B, C の解を選び,Hardebeck and Michael (2006) が開発した応力インバージョン法を適用した。
(3)結果
余震の震源メカニズム解は全部で802個決定され,それらのMはMW1.0からMW5.7であった。その内,Quality Aが241個,Quality Bが266個,Quality Cが155個だった。応力インバージョンによると,震源域での最大主応力軸の向きは東北東―西南西であり,本震のCMT解のP軸の向きと調和的である。最大主応力軸の向きは,震源域内において空間的にほとんど変化していないが,応力比には空間的変化が見られた。震源域の中部では,応力比が0.5に近く,横ずれ断層型の応力場を示唆する。また,震源域の南部では,応力比が0.7に近く,やや逆断層型の応力場を示唆する。
謝辞
本研究は, 2018年胆振東部地震余震観測, 防災科研の常時観測点および気象庁の常時観測点から得られたデータを用いて解析を行っております。2018年胆振東部地震余震観測グループの皆様, 防災科研, 気象庁などの基盤的地震観測に携わっている方々に心より感謝申し上げます。
2018年9月6日,北海道胆振東部地震(MJMA6.7)(以下,胆振地震と呼ぶ)が発生した。Katsumata et al. (Earth, Planets and Space, 2019) によると,本震の特徴として以下の2つが挙げられる。第一に,本震の震源の深さは30 km以深であり,日本の他地域の内陸地震が20 km以浅であるのに比べて深い。第二に,P波初動の押し引きから決定した震源メカニズム解は横ずれ断層型を示し,逆断層型を示すCMT解と一致しない。Katsumata et al. (2019) は本震直後数時間の余震が,北部・中部・南部と3つに大別される点に着目し,本震の破壊は中部の小さい横ずれ断層で始まり,その後,北部と南部の大きな逆断層が滑りを起こしたというモデルを提唱した。
本研究では,胆振地震の余震の震源メカニズム解を多数決定し,応力インバージョン法により震源域の応力場を推定した。胆振地震の震源域付近は,定常的な地震活動が非常に低いため,震源メカニズム解を用いた応力場の推定は困難であった場所である。また,得られた応力場の空間分布とKatsumata et al. (2019)が提唱した断層モデルとの比較を行った。
(2)データと解析
胆振地震発生直後から10月31日まで,北海道大学・東京大学地震研究所・九州大学・東北大学・鹿児島大学・名古屋大学・弘前大学・京都大学防災研究所・千葉大学・防災科学技術研究所が合同で臨時余震観測を実施した。本研究では,この臨時観測点と定常観測点(北海道大学・気象庁・Hi-net)のP波初動の押し引きを使用して震源メカニズム解を決定した。振幅値は使用していない。震源メカニズム解の推定には,HASH (Hardebeck and Shearer, 2004) を用いた。その際,Katsumata et al. (2019) の一次元地震波速度構造を仮定した。HASHで決定した震源メカニズム解の内,精度の良い,Quality A, B, C の解を選び,Hardebeck and Michael (2006) が開発した応力インバージョン法を適用した。
(3)結果
余震の震源メカニズム解は全部で802個決定され,それらのMはMW1.0からMW5.7であった。その内,Quality Aが241個,Quality Bが266個,Quality Cが155個だった。応力インバージョンによると,震源域での最大主応力軸の向きは東北東―西南西であり,本震のCMT解のP軸の向きと調和的である。最大主応力軸の向きは,震源域内において空間的にほとんど変化していないが,応力比には空間的変化が見られた。震源域の中部では,応力比が0.5に近く,横ずれ断層型の応力場を示唆する。また,震源域の南部では,応力比が0.7に近く,やや逆断層型の応力場を示唆する。
謝辞
本研究は, 2018年胆振東部地震余震観測, 防災科研の常時観測点および気象庁の常時観測点から得られたデータを用いて解析を行っております。2018年胆振東部地震余震観測グループの皆様, 防災科研, 気象庁などの基盤的地震観測に携わっている方々に心より感謝申し上げます。