日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09]AM-1

2019年9月16日(月) 09:30 〜 10:30 B会場 (国際科学イノベーション棟シンポジウムホール)

座長:澤崎 郁(防災科学技術研究所)、尾鼻 浩一郎(海洋研究開発機構)

10:00 〜 10:15

[S09-03] OBS観測による宮城県沖日本海溝アウターライズ域の地震活動

*尾鼻 浩一郎1、高橋 努1、山本 揚二朗1、藤江 剛1、中村 恭之1、三浦 誠一1、小平 秀一1 (1. 海洋研究開発機構)

2011年3月に発生した東北沖地震以降、日本海溝の海溝軸海側アウターライズ域では、太平洋プレート内部で地震が活発に発生している。宮城県沖のアウターライズ域においては、2011年4月から2014年4月にかけて、海底地震計(OBS)を用いた地震観測が繰り返し実施されてきており、深さ40km付近まで正断層型の地震が発生していることが示されている(Obana et al., 2012)。これらの観測では、従来からの多くの調査と同様にガラス製耐圧容器を用いたOBSが使用されており、観測点のほとんどが水深6000mより浅い場所に限られていた。水深6000mを超える海溝軸に設置可能な超深海型OBSの実用化は当時から進められていたが、海溝軸における観測は極めて限定的に行われただけであった。一方、2015年以降に行われた日本海溝北部(三陸沖)および南部(福島・茨城沖)の海溝軸からアウターライズ域における観測では、実用化された超深海型OBSを用いた観測が実施され、アウターライズ域における地震活動が明らかになってきている。例えば、日本海溝北部三陸沖では、1933年昭和三陸地震に関連していると思われる地震活動が水深7000mに達する海溝軸近傍で発生していることが捉えられており(Obana et al., 2018)、超深海型OBSを用いた観測の重要性が示されている。そこで、2017年9月から2018年7月にかけて、宮城沖日本海溝の海溝軸周辺ならびに海溝海側において、超深海型OBSを含む計45台のOBSを用いた地震観測を再び実施した。この観測では、海溝軸を挟んだ35点において、2017年9月から2018年2月(一部は3月)まで観測を行なっている。また2018年3月から7月にかけては海溝軸の東約60kmから100kmの範囲に10点のOBSを設置して観測を実施した。

解析では、OBSによる連続記録からイベントを検出したのち、手動で検測を行ない、1次元構造で震源決定を行なった。震源決定に使用した速度構造は、過去に観測領域周辺で行われた研究を参考にしている。堆積層による走時の遅れに関しては、観測点ごとに基盤上面で生じたPS変換波と直逹P波の到着時間差から観測点補正値を推定して補正した。また、P波初動極性を用いて震源メカニズムを推定した。

得られた震源分布からは、2011年3月11日の東北沖地震の40分後に海溝海側で発生したMw7.6の正断層地震の震源域周辺の余震活動をはじめ、2011年東北地方太平洋沖地震後に活発化した太平洋プレート内部の地震活動が継続していることが示されている。震源メカニズムも、2014年までの観測の結果と同様に、アウターライズ域において深さ40km付近まで正断層型のメカニズムが卓越しており、時間的に大きな変化は見られない。一方、今回の観測期間中には、宮城県沖を中心としたアウターライズ域において、M6クラスの地震が複数発生している(2017年9月21日M6.3、10月6日M6.3、11月13日M6.0)。特に10月6日の地震は震源のごく近傍にOBSが設置されており、本震とそれに伴う余震活動が詳細に捉えられている。この地震は、正断層で形成されたホルスト・グラーベン構造が不連続になっている部分で発生しており、余震は複数の傾斜方向の異なる断層面にそって分布している。ホルスト・グラーベン構造は日本海溝のアウターライズ域に広く分布しているが、必ずしも連続性はよくなく、細かくセグメント化されている。一方、1933年昭和三陸地震のような大規模なアウターライズ地震の際には、複数の断層が連動して破壊する可能性が指摘されている(Uchida et al., 2016, Obana et al., 2018)。今回の観測結果は、複数の正断層が連動して活動する様子を捉えたものと考えられる。