16:00 〜 16:15
[S09-14] 地震・ゆっくり地震の力学モデル
地震は、規模の小さいものから大きなものまで、また発生する場所によらず(震源となる断層を構成する物質が異なっていたり、すべりが不安定になる物理過程が異なっていたりしても)、弾性波で見れば相似な振る舞いをする。その振る舞いは、弾性体中にすべり弱化(すべりに依存して強度が低下する)の性質を持ったすべり面を仮定し、スケールに応じた破壊エネルギーとすべり弱化距離、スケールに依存しない応力降下量を仮定することで表現できる(大中・松浦, 2002)。そして、様々なスケールが混在した状態での地震の発生過程(1つの地震時のすべりの広がり方だけでなく、様々な規模の地震の発生)は、例えば、すべり面上に様々な大きさの円形のパッチを、その半径の分布がフラクタル的な性質を持ちつつ空間的にランダムに分布させ、その半径にすべり弱化距離を比例させるように断層を設定することで表現できる(Ide and Aochi, 2005)。ここでポイントになるのは、空間的なランダム不均質性が、自然の中で不可避的に存在するものであり、それとスケール依存のすべり弱化過程が組み合わさることで、小さいスケールで始まった破壊が必然的に止まりやすい仕組みになっているということである。
一方、ゆっくり地震は、スケールに依存してすべりの伝播速度等が大きく異るため、発見された当初は時間スケールや空間スケールに応じて異なる名称が与えられ、異なる現象として扱われてきた。しかし、それらが地震とは別の相似性とスケール依存性を持った断層すべり現象であることがわかってきている(Ide et al., 2007, 2008; Kaneko et al., 2018等)。ゆっくり地震も、地震と同様にせん断すべり現象であり、弾性体中にすべり面を仮定し、すべり面に何らかの力学特性(断層構成則)を与えることで、その振る舞いを表現できると思われる。実際様々な力学モデルが提案されているが、地震と異なる相似性・スケール依存性を適切に扱えるモデルは、そのような力学モデルではなく、時間的なランダムさを持つstochasticなモデルである(Ide 2008, 2010; Ide and Yabe, 2018)。Stochasticなモデルのうち、空間的な広がりを導入したIde and Yabe(2018)のモデルを含めて、様々なゆっくり地震のモデルで共通していることは、すべりの伝搬を止める性質やすべりにブレーキをかける性質が何らかの形で入っていることである。すべり面を離散化した小パッチが単独ですべりを起こせるように設定されている(Ide and Yabe, 2018; Ben-Zion, 2012; Collella et al, 2012など)ものもあれば、不安定なすべりそのものが加速できない性質を持つ(Shibazaki and Iio, 2003; Matsuzawa et al., 2010)もの、不安定なすべりを起こす部分の周辺に粘性やすべり速度強化などでブレーキをかける(Ando et al., 2010; Ariyoshi et al., 2012)ものもある。もう一つのブレーキのかけ方は、すべり弱化距離を大きくするものである(Hashimoto and Matsu'ura, 2000; Liu and Rice, 2005; Nakata et al., 2014)。ここで、地震の力学モデルのポイントが、断層の持つ空間不均質性が小規模なすべりの伝播を止める性質を持っていたこと、ゆっくり地震を起こしている断層は、普通の地震を起こしている断層の深部延長や浅部延長であることが多いこと、さらに、断層の深部では温度が高いために、浅部では断層ガウジが厚いこと等のためにすべり弱化距離が大きいこと(Kato et al, 2003; Marone, 1998)などを考慮すれば、空間的なランダム不均質を仮定した地震のモデルに対して、よりすべり弱化距離を大きくしただけで、様々なゆっくり地震を表すモデルになることが期待される。すべり弱化距離が大きいというのは、すべりに対する強度の低下率が小さく、すべりにブレーキかけるので、結果的にすべり速度強化の振る舞いをすることになり、余効すべりも表現される(Hori and Miyazaki 2010等)。つまり、地震のモデルと同じ力学モデルで1つのパラメータを変更するだけで、様々なスケールのゆっくり地震や余効すべりも表現できるモデルになると期待される。この普通・ゆっくり地震の力学モデルの有効性を確認するためには、空間的なランダム不均質を仮定した断層にloadingをかけて自発的にすべりを起こしていった場合に、stochasticなモデルで仮定されていた時間的なランダムさがもたらす結果と同様な性質を満たすかどうかを調べる必要があり、講演ではその検討結果について報告する。
一方、ゆっくり地震は、スケールに依存してすべりの伝播速度等が大きく異るため、発見された当初は時間スケールや空間スケールに応じて異なる名称が与えられ、異なる現象として扱われてきた。しかし、それらが地震とは別の相似性とスケール依存性を持った断層すべり現象であることがわかってきている(Ide et al., 2007, 2008; Kaneko et al., 2018等)。ゆっくり地震も、地震と同様にせん断すべり現象であり、弾性体中にすべり面を仮定し、すべり面に何らかの力学特性(断層構成則)を与えることで、その振る舞いを表現できると思われる。実際様々な力学モデルが提案されているが、地震と異なる相似性・スケール依存性を適切に扱えるモデルは、そのような力学モデルではなく、時間的なランダムさを持つstochasticなモデルである(Ide 2008, 2010; Ide and Yabe, 2018)。Stochasticなモデルのうち、空間的な広がりを導入したIde and Yabe(2018)のモデルを含めて、様々なゆっくり地震のモデルで共通していることは、すべりの伝搬を止める性質やすべりにブレーキをかける性質が何らかの形で入っていることである。すべり面を離散化した小パッチが単独ですべりを起こせるように設定されている(Ide and Yabe, 2018; Ben-Zion, 2012; Collella et al, 2012など)ものもあれば、不安定なすべりそのものが加速できない性質を持つ(Shibazaki and Iio, 2003; Matsuzawa et al., 2010)もの、不安定なすべりを起こす部分の周辺に粘性やすべり速度強化などでブレーキをかける(Ando et al., 2010; Ariyoshi et al., 2012)ものもある。もう一つのブレーキのかけ方は、すべり弱化距離を大きくするものである(Hashimoto and Matsu'ura, 2000; Liu and Rice, 2005; Nakata et al., 2014)。ここで、地震の力学モデルのポイントが、断層の持つ空間不均質性が小規模なすべりの伝播を止める性質を持っていたこと、ゆっくり地震を起こしている断層は、普通の地震を起こしている断層の深部延長や浅部延長であることが多いこと、さらに、断層の深部では温度が高いために、浅部では断層ガウジが厚いこと等のためにすべり弱化距離が大きいこと(Kato et al, 2003; Marone, 1998)などを考慮すれば、空間的なランダム不均質を仮定した地震のモデルに対して、よりすべり弱化距離を大きくしただけで、様々なゆっくり地震を表すモデルになることが期待される。すべり弱化距離が大きいというのは、すべりに対する強度の低下率が小さく、すべりにブレーキかけるので、結果的にすべり速度強化の振る舞いをすることになり、余効すべりも表現される(Hori and Miyazaki 2010等)。つまり、地震のモデルと同じ力学モデルで1つのパラメータを変更するだけで、様々なスケールのゆっくり地震や余効すべりも表現できるモデルになると期待される。この普通・ゆっくり地震の力学モデルの有効性を確認するためには、空間的なランダム不均質を仮定した断層にloadingをかけて自発的にすべりを起こしていった場合に、stochasticなモデルで仮定されていた時間的なランダムさがもたらす結果と同様な性質を満たすかどうかを調べる必要があり、講演ではその検討結果について報告する。