17:15 〜 18:45
[S09P-08] 蔵王山における深部低周波地震活動の時空間的特徴
2011年東北地方太平洋沖地震 (Mw 9.0) の発生により,東北地方では広域にわたり歪・応力の変化が生じ,地殻内部の火山性流体も影響を受けたと考えられる.深部火山性流体の挙動を表すと考えられている深部低周波地震の活動を調べることは,巨大地震後の中長期的な火山活動を考える上で重要である.そこで,本発表では,東北地方太平洋沖地震後に火山活動の活発化が見られる蔵王山について,深部低周波地震活動の時空間的特徴を解析した結果を報告する.
東北地方太平洋沖地震後,蔵王山直下では2012年初頭から深部低周波地震が増加し,2013年には浅部 (深さ約2 km以浅) における火山性地震や長周期地震が発生し始めた.さらに,2015年には浅部の火山性地震活動の活発化により蔵王山で初めて火口周辺警報(噴火警戒レベル2と同等)が発表された.その後,地震活動は数か月間隔で消長を繰り返し,2018年1月に火口周辺警報が再度発表されたものの,全般的には火山活動は静穏になりつつある.このような一連の火山活動活発化の期間における深部低周波地震の活動様式を明らかにするために,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) では,相関を用いたイベント検出法であるMatched Filter法を連続波形に対して適用し,気象庁一元化震源カタログの約7倍にあたる数の深部低周波地震の検出に成功した.さらに,2012年と2015年に活動度が活発化した地震と2016年に活発化した地震の波形特性が異なることを明らかにした.そこで本研究では,先行研究で検出した深部低周波地震の分類を行い,蔵王山における深部低周波地震の時空間的な特徴を明らかにすることを目的とする.
解析には,2012年1月~2016年9月における気象庁一元化震源カタログ記載の深部低周波地震146個(テンプレート)とIkegaya and Yamamoto (2019, JpGU) で検出・震源決定された2012年1月~2018年5月に発生した深部低周波地震1056個の計1202イベントを使用した.震源位置や波形の特性が類似したイベントを抽出し,タイプ別のグループを作るためにイベント間の波形相関を用いた分類を行った.分類には,東北大学 七ヶ宿,釜房,防災科学技術研究所Hi-net 上山の3観測点3成分における1-8 Hz帯の波形データを使用した.テンプレートについて3観測点3成分の相関の平均値が0.4以上のイベント群でグループを作り,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) による検出イベントについては相関が最大となるテンプレートと同じグループに分類した.
相関によるイベント分類の結果,1202イベントのうち939個を7つのグループに分類できた.主要なグループは浅部クラスターで発生するグループA(241個),グループB(222個)と深部クラスターで発生するグループC(295個)である(図1a).グループA,BはOkada et al. (2015) による地震波トモグラフィーの高Vp/Vs領域の側面及び内部に位置する一方,グループCは高Vp/Vs領域の下部に位置する.これらのグループは,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) で波形の特徴をもとにイベント分類を行ったもののうち,低周波成分のみが卓越する波形タイプ(グループA, B)と高周波成分が重畳する波形タイプ(グループC)に概ね一致する.
これらの各グループの活動の推移に着目すると,図1bに示すように,深部低周波地震活動の活発化が始まった2012年には深部におけるグループCの活発化が見られ,震源領域が相対的に浅いグループA, B の活動がやや遅れて増加し始めたことが分かる.その後,火山浅部(深さ約2 km)における地震活動の活発化や深さ約5 kmを変動源とする山体膨張 (Miura et al., 2019, JpGU) が2015年前半に観測された時期にグループCの活動が再活発化し,翌2016年には,グループA,Bの活動が活発化した.このように深部低周波地震の発生領域や活動に火山活動の推移と対応した時空間的変動が認められ,深部マグマの活動と浅部火山活動の相互作用が示唆される.また,グループCとグループA,BそれぞれのP波・S波のスペクトル比を推定したところ,前者はダブルカップル成分に富む一方,後者は体積変化成分を含む震源メカニズムであることも明らかとなった.
今後,各グループの深部低周波地震の震源メカニズムをさらに精査することで,蔵王山における深部火山性流体の挙動の時空間変化について明らかにできることが期待される.
東北地方太平洋沖地震後,蔵王山直下では2012年初頭から深部低周波地震が増加し,2013年には浅部 (深さ約2 km以浅) における火山性地震や長周期地震が発生し始めた.さらに,2015年には浅部の火山性地震活動の活発化により蔵王山で初めて火口周辺警報(噴火警戒レベル2と同等)が発表された.その後,地震活動は数か月間隔で消長を繰り返し,2018年1月に火口周辺警報が再度発表されたものの,全般的には火山活動は静穏になりつつある.このような一連の火山活動活発化の期間における深部低周波地震の活動様式を明らかにするために,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) では,相関を用いたイベント検出法であるMatched Filter法を連続波形に対して適用し,気象庁一元化震源カタログの約7倍にあたる数の深部低周波地震の検出に成功した.さらに,2012年と2015年に活動度が活発化した地震と2016年に活発化した地震の波形特性が異なることを明らかにした.そこで本研究では,先行研究で検出した深部低周波地震の分類を行い,蔵王山における深部低周波地震の時空間的な特徴を明らかにすることを目的とする.
解析には,2012年1月~2016年9月における気象庁一元化震源カタログ記載の深部低周波地震146個(テンプレート)とIkegaya and Yamamoto (2019, JpGU) で検出・震源決定された2012年1月~2018年5月に発生した深部低周波地震1056個の計1202イベントを使用した.震源位置や波形の特性が類似したイベントを抽出し,タイプ別のグループを作るためにイベント間の波形相関を用いた分類を行った.分類には,東北大学 七ヶ宿,釜房,防災科学技術研究所Hi-net 上山の3観測点3成分における1-8 Hz帯の波形データを使用した.テンプレートについて3観測点3成分の相関の平均値が0.4以上のイベント群でグループを作り,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) による検出イベントについては相関が最大となるテンプレートと同じグループに分類した.
相関によるイベント分類の結果,1202イベントのうち939個を7つのグループに分類できた.主要なグループは浅部クラスターで発生するグループA(241個),グループB(222個)と深部クラスターで発生するグループC(295個)である(図1a).グループA,BはOkada et al. (2015) による地震波トモグラフィーの高Vp/Vs領域の側面及び内部に位置する一方,グループCは高Vp/Vs領域の下部に位置する.これらのグループは,Ikegaya and Yamamoto (2019, JpGU) で波形の特徴をもとにイベント分類を行ったもののうち,低周波成分のみが卓越する波形タイプ(グループA, B)と高周波成分が重畳する波形タイプ(グループC)に概ね一致する.
これらの各グループの活動の推移に着目すると,図1bに示すように,深部低周波地震活動の活発化が始まった2012年には深部におけるグループCの活発化が見られ,震源領域が相対的に浅いグループA, B の活動がやや遅れて増加し始めたことが分かる.その後,火山浅部(深さ約2 km)における地震活動の活発化や深さ約5 kmを変動源とする山体膨張 (Miura et al., 2019, JpGU) が2015年前半に観測された時期にグループCの活動が再活発化し,翌2016年には,グループA,Bの活動が活発化した.このように深部低周波地震の発生領域や活動に火山活動の推移と対応した時空間的変動が認められ,深部マグマの活動と浅部火山活動の相互作用が示唆される.また,グループCとグループA,BそれぞれのP波・S波のスペクトル比を推定したところ,前者はダブルカップル成分に富む一方,後者は体積変化成分を含む震源メカニズムであることも明らかとなった.
今後,各グループの深部低周波地震の震源メカニズムをさらに精査することで,蔵王山における深部火山性流体の挙動の時空間変化について明らかにできることが期待される.