日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

S09P

2019年9月16日(月) 17:15 〜 18:45 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:15 〜 18:45

[S09P-18] 地動ノイズに含まれる等時間差の相似波形

*勝俣 啓1、一柳 昌義1 (1. 北海道大学大学院理学研究院附属地震火山研究観測センター)

1.はじめに

前震には相似波形が多いという報告が複数ある(例えば,Pechmann and Kanamori, 1982, JGR;Motoya and Abe, 1985, Earthquake Prediction Research)。 高周波数まで波形の相関が良いことから,震源が非常に近接していると解釈された。そこで本研究では,地動ノイズの中から相似波形を探索し,前震の検出を試みた。

2.データと解析

2018年9月6日午前3時7分頃,北海道胆振東部地震(Mj6.7)が発生した。この地震の発生前の期間,2018年8月25日00時00分から9月6日03時06分までの7観測点の連続波形データを使用した(図1)。7観測点の内,TKOとSKJが北海道大学の観測点,それ以外の5つは防災科学技術研究所のHi-net観測点である。今回解析したのは上下動成分のみで,サンプリング周波数は7観測点共に100Hzである。なお,9月5日02時00分から16時59分までは欠測観測点があるので解析対象から外した。

解析手順は以下の通りである。
① ある1つの観測点において,1分間の上下動成分を用意する。以下②および③の処理はこの1分間のデータに対して行うものとする。
② 生データに8-16Hzのバンドパスフィルターをかける。
③ 0.5秒間の時間窓を1サンプルずつずらして,全ての組合せについて相関係数を計算する。相関係数の絶対値が0.8以上の組合せの時刻をT1,T2とする
④ ①~③の処理を7観測点について行い,以下の3条件が満たされた場合をイベントとして認定する。
(a) 7観測点でのT1が±3秒以内で一致している
(b) 7観測点での時間差ΔT=T2-T1が±0.03秒以内で一致している
(c) ΔTが10秒以上である

3.結果

検出されたイベントの1時間毎の数を図2に示す。イベント数は,昼間に多く,夜間に少ない傾向が見られる。また,日曜日(8月26日と9月2日)に少なく,それ以外の平日に多い傾向も見られる。胆振東部地震直前の9月6日00:00~03:06に検出されたイベントはなかった。また,図2で20個以上のイベントを検出した時間帯は,遠地地震が観測されていて,その波形内にイベントが存在している。

4.検出されたイベントは前震か?

イベント数の時間変化は,地動ノイズの高低の時間変化とよく一致しているので,地動ノイズが起源のイベントであると推測される。ごく小さい前震がほぼ同じ場所を震源として1分以内に連続発生したとも考えられるが,その場合は,ノイズレベルの低い夜間にイベント数が多く,ノイズレベルが高い昼間はイベント数が少なくなるはずである。したがって,検知されたイベントが前震である可能性は低い。しかし,上記④の3条件(a)~(c)を満たすイベントは非常に特異な現象であり,7観測点のT1を用いて相似波形の発生位置(震源)を推定する予定である。