17:15 〜 18:45
[S09P-20] 2011年東北沖地震後の流体圧変化に伴う内陸の群発地震震源域近傍の速度構造の時間変化
地震の発生に,地球内部の流体による断層強度の低下の効果が強く影響している可能性が指摘されてきている (e.g. Hasegawa, 2017; Hasegawa et al., 2005; Hubbert and Rubey, 1959; Nur and Booker, 1972; Sibson, 1992)。その顕著な例として,2011年東北沖地震後に東西圧縮応力の減少した東北日本の内陸部において活発化した群発地震活動が挙げられる。それらの活動は,2011年東北沖地震後の流体圧の増加による断層強度の低下により生じたと推定されており (Terakawa et al., 2013; Okada et al., 2016, Yoshida et al., 2016, 2017, 2018),震源の深部から浅部へ向かう顕著な migrationが見られる。断層強度,応力降下量,b値,地震活動度の顕著な時間変化も検出され、それは震源域における間隙流体圧の時間変化に起因すると推定されたている (Yoshida et al., 2016, 2017; Yoshida & Hasegawa, 2018)。本研究では,2011年東北沖地震後震源域の間隙水圧変化について異なる情報から調べる目的で、震源域の地震波速度の時間変化を推定した。
対象としたのは,2011年東北沖地震後に山形-福島県境で活発化した群発地震活動である。この活動は、東北沖地震後の流体圧変化により引き起こされたと推定されている活動の中で最も規模が大きい。Vp/Vsの推定には, 複数地震のP波と S波の到達時刻差データに基づくLin & Shearer (2007)の手法を用いた。ここで、到達時刻差データには Yoshida & Hasegawa (2018)が,波形相関により高精度で求めたものを使用した。対象とした地震は2011年から2018年までの期間において発生した M>2の地震 2,458個である。
結果,610個の地震について信頼性の高い Vp/Vsの値が推定された。得られた Vp/Vsは,群発地震活動の初期に大きめの値を取り (~1.75),100日程度まで減少し,その後およそ一定値 (~1.65)を取る (図 1)。推定のばらつきが大きいものの、仙台大倉で生じた同種の群発地震活動についても同様の Vp/Vsの時間変化の傾向が見られた。その時間変化のパターンは先行研究により独立に推定された断層強度 (Yoshida et al., 2016)・応力降下量・b値 (Yoshida et al., 2017)・定常地震活動度 (Yoshida et al., 2018)と同期するように見える。このことは、この群発地震活動が間隙流体圧の急激な上昇に起因することを示すもう一つの観測的証拠と考えられる。
図1. 推定した Vp/Vsの時間変化。灰色の丸で個々の推定値を,青色の丸で平均値を,縦の線分で標準偏差に基づいて推定した 95%信頼範囲を示す。
対象としたのは,2011年東北沖地震後に山形-福島県境で活発化した群発地震活動である。この活動は、東北沖地震後の流体圧変化により引き起こされたと推定されている活動の中で最も規模が大きい。Vp/Vsの推定には, 複数地震のP波と S波の到達時刻差データに基づくLin & Shearer (2007)の手法を用いた。ここで、到達時刻差データには Yoshida & Hasegawa (2018)が,波形相関により高精度で求めたものを使用した。対象とした地震は2011年から2018年までの期間において発生した M>2の地震 2,458個である。
結果,610個の地震について信頼性の高い Vp/Vsの値が推定された。得られた Vp/Vsは,群発地震活動の初期に大きめの値を取り (~1.75),100日程度まで減少し,その後およそ一定値 (~1.65)を取る (図 1)。推定のばらつきが大きいものの、仙台大倉で生じた同種の群発地震活動についても同様の Vp/Vsの時間変化の傾向が見られた。その時間変化のパターンは先行研究により独立に推定された断層強度 (Yoshida et al., 2016)・応力降下量・b値 (Yoshida et al., 2017)・定常地震活動度 (Yoshida et al., 2018)と同期するように見える。このことは、この群発地震活動が間隙流体圧の急激な上昇に起因することを示すもう一つの観測的証拠と考えられる。
図1. 推定した Vp/Vsの時間変化。灰色の丸で個々の推定値を,青色の丸で平均値を,縦の線分で標準偏差に基づいて推定した 95%信頼範囲を示す。