日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

S09P

2019年9月16日(月) 17:15 〜 18:45 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:15 〜 18:45

[S09P-22] 徳山ダムにおける微小地震観測(第3報)

*佐野 貴之1、塚本 守1、曽田 英揮2、三塚 隆3、神藤 史明3、片尾 浩4 (1. 独立行政法人 水資源機構、2. 一般財団法人 国土技術研究センター、3. 地質計測株式会社、4. 京都大学 防災研究所)

1.はじめに
 徳山ダムは,独立行政法人水資源機構(JWA)が2008年に完成した堤高161m,総貯水容量660百万m3の大規模ロックフィルダムである.同ダムは岐阜県揖斐川町の揖斐川上流に位置し,洪水調節,新規利水,発電等を目的としている.ダム周辺には濃尾地震を引き起こした根尾谷断層,及び活断層とされる揖斐川断層が存在するため,JWAでは,湛水による地震活動への影響を監視する目的で,1976年から微小地震観測を行ってきた.
 本稿は,ダム完成から10年を経過した2018年までの貯水池周辺の地震観測記録に基づき,湛水による地震活動への影響を評価するものである.

2.地震観測の概要
 観測は1976年当初3地点で開始し,2002年に8地点,2006年に9地点になり,2016年以降は徳山ダム近傍5地点で実施している.記録形式は当初トリガー起動により磁気テープに記録していたが,2002年末にデジタル連続観測(地震計は固有周波数2Hz地表設置型)に移行し,現在に至る.当該地域は山間部で電源と通信手段の確保が困難なため,各点で独立に収録したwin形式の地震記録を定期的に回収し,目視による験震を実施してきた.図1に,2002年12月から2018年6月までの震央分布を示す.図1右の範囲は,ダムを中心とした±20km,深度20kmまでであり,地震総数は35,028個である.気象庁一元化震源カタログによる同エリア,同期間の地震総数は6,864個で,およそ5倍の地震を検知している.ダムおよび貯水池の近傍には地震が少なく,東側の根尾谷断層沿い,西側の岐阜・滋賀県境沿いおよびダムサイト南側で地震活動が活発である.以降の評価はJWAの観測結果による.

3.地震活動の評価
 図2左に,JWAの観測記録による徳山ダム貯水池周辺エリア内(図1緑色枠内)を震源とするM>0.5地震の月あたり地震発生数とダム貯水位を,図2右に湛水前後のG-R図を示す.地震発生数はランダムに変動しているが時間経過に伴う増減傾向はない.G-R図も,湛水前のb値0.97に対し湛水後は0.94であり,湛水前後で明確な変化はない.湛水後の観測期間を累積地震数が同程度になるよう分割した小期間のb値も,多少の変動はあるものの増減傾向は認められなかった.

4.今後に向けて
 ダム完成から10年以上が経過し,湛水前後の地震活動に明確な変化は認められなかった.これをふまえて2019年からは,JWAの2観測点とHi-netの3観測点の記録を統合処理することで気象庁一元化震源よりも高い験震精度を確保できる体制に移行した.観測継続については,今後の気象庁一元化震源の験震精度や既設観測機器の寿命をふまえて判断する予定である.