11:00 〜 11:15
[S10-07] 十勝平野断層帯海域延長部における活断層調査:高分解能音波探査記録に基づく分布・性状の把握
平成30年度文部科学省委託「内陸及び沿岸海域の活断層調査」の一環として,十勝平野断層帯の海域延長部における活断層の分布・性状および活動性を明らかにすることを目的として,海底活断層調査を実施した.本講演では,調査によって明らかになった海底活断層の分布・性状について報告する.
十勝平野断層帯は,陸域において断層帯主部と光地園断層に区分されている(地震調査研究推進本部,2005).それらのうち光地園断層は,北西−南東走向を持ち,断層の北東側が相対的に隆起する逆断層によって構成されている.光地園断層は海岸線まで達していると推定されるが,海域延長部における活断層の分布は不明である.そのため,さらに沖合の海域において海底地質図(辻野・他,2014)に記述されている活構造と,陸域の光地園断層との関係も不明である.したがって,光地園断層の海域延長部における地質構造および活構造の分布を高い空間分解能で明らかにすることによって,断層帯の南端位置を明らかにする必要がある.
光地園断層の海域延長部における地質構造を精度良く把握するため,マルチチャンネル反射法音波探査を実施した.探査測線は,推定される海底活断層の走向に直交する向きに,水深50 m以浅の海域ではブーマーを音源として8測線(陸側から順に,B1〜B8測線),水深50〜600 m程度の海域では容積15 inch3のウォーターガンを音源として7測線(陸側から順に,W1〜W7測線)を配置した.構造を対比できるようにB8測線とW1測線を同一線上に配置し,検測線をそれぞれの海域に1測線配置した.受信部にはチャンネル間隔2.5 mの12 chストリーマーケーブルを使用した.ウォーターガンを音源とした探査測線W2における断面図を図に示す.
調査対象海域の層序は,音響層序および既存の海底地質図の成果にもとづき,沖積層(A層),上部更新統(B1層),中部更新統(B2層),下部更新統ないし鮮新統以下(C層)に区分できる(図).ブーマーを音源とした探査記録断面にもとづいて,光地園断層の海域延長部において,B1層を累積的に上下変位させる逆断層(F1断層およびF2断層)が確認できる.また,ウォーターガンを音源とした探査記録断面にもとづいて,ブーマー探査で確認できたF2断層を追跡できる(図).さらに,B2層およびB1層の累積的な褶曲変形にもとづいて,逆断層(F3断層)が推定できる.これらの断層は断層の北東側を相対的に隆起させている.F1断層およびF2断層は,最も陸側の測線(B1測線)まで連続的に認識できるため,陸域の光地園断層に連続すると判断される.これらの断層は,海域によっては2〜3条に分岐している.F2断層およびF3断層の北東側には活背斜(Fo背斜)が分布している(図).Fo背斜は非対称性(背斜の南西翼の傾斜が相対的に急勾配)を有しており,F2断層およびF3断層の関連褶曲であると判断される.これらの活構造による変位はA層/B1層境界(侵食面)およびA層には確認できない.F2断層はB1層を累積的に上下変位させており, B8測線およびW1測線におけるB1層基底面の上下変位量は約14 mである.
断層帯の海域延長部には,活背斜(Fo背斜)の南西側にF1断層,F2断層,F3断層が並走して分布していることが明らかになった.断層帯の海域部における活構造の配置は,十勝平野断層帯主部と類似している.このことは,両者が同様の応力場で形成されてきたことを示唆する.本研究で明らかになったF1断層はB1測線〜B6測線の範囲,F2断層はB1測線〜W4測線の範囲,F3断層はW3測線〜W5測線の範囲,Fo背斜はW1測線〜W5測線の範囲に,それぞれ連続的に確認できる.一連の活構造はW6測線に至って認識できなくなる.そのため,断層帯の海域延長部に分布する活構造の南端位置は,W5測線とW6測線の間にあると推察される.以上にもとづくと,断層帯の海域部の長さ(海岸線から活構造の南端)は,最長で約33 kmとなる.また,陸域における光地園断層と断層帯の海域部を合わせると,その断層長は約58 kmとなる.
地震調査研究推進本部(2005):十勝平野断層帯の評価.23 pp.
辻野・他(2014):襟裳岬沖海底地質図,海洋地質図,no.83(CD),産業技術総合研究所地質調査総合センター.
十勝平野断層帯は,陸域において断層帯主部と光地園断層に区分されている(地震調査研究推進本部,2005).それらのうち光地園断層は,北西−南東走向を持ち,断層の北東側が相対的に隆起する逆断層によって構成されている.光地園断層は海岸線まで達していると推定されるが,海域延長部における活断層の分布は不明である.そのため,さらに沖合の海域において海底地質図(辻野・他,2014)に記述されている活構造と,陸域の光地園断層との関係も不明である.したがって,光地園断層の海域延長部における地質構造および活構造の分布を高い空間分解能で明らかにすることによって,断層帯の南端位置を明らかにする必要がある.
光地園断層の海域延長部における地質構造を精度良く把握するため,マルチチャンネル反射法音波探査を実施した.探査測線は,推定される海底活断層の走向に直交する向きに,水深50 m以浅の海域ではブーマーを音源として8測線(陸側から順に,B1〜B8測線),水深50〜600 m程度の海域では容積15 inch3のウォーターガンを音源として7測線(陸側から順に,W1〜W7測線)を配置した.構造を対比できるようにB8測線とW1測線を同一線上に配置し,検測線をそれぞれの海域に1測線配置した.受信部にはチャンネル間隔2.5 mの12 chストリーマーケーブルを使用した.ウォーターガンを音源とした探査測線W2における断面図を図に示す.
調査対象海域の層序は,音響層序および既存の海底地質図の成果にもとづき,沖積層(A層),上部更新統(B1層),中部更新統(B2層),下部更新統ないし鮮新統以下(C層)に区分できる(図).ブーマーを音源とした探査記録断面にもとづいて,光地園断層の海域延長部において,B1層を累積的に上下変位させる逆断層(F1断層およびF2断層)が確認できる.また,ウォーターガンを音源とした探査記録断面にもとづいて,ブーマー探査で確認できたF2断層を追跡できる(図).さらに,B2層およびB1層の累積的な褶曲変形にもとづいて,逆断層(F3断層)が推定できる.これらの断層は断層の北東側を相対的に隆起させている.F1断層およびF2断層は,最も陸側の測線(B1測線)まで連続的に認識できるため,陸域の光地園断層に連続すると判断される.これらの断層は,海域によっては2〜3条に分岐している.F2断層およびF3断層の北東側には活背斜(Fo背斜)が分布している(図).Fo背斜は非対称性(背斜の南西翼の傾斜が相対的に急勾配)を有しており,F2断層およびF3断層の関連褶曲であると判断される.これらの活構造による変位はA層/B1層境界(侵食面)およびA層には確認できない.F2断層はB1層を累積的に上下変位させており, B8測線およびW1測線におけるB1層基底面の上下変位量は約14 mである.
断層帯の海域延長部には,活背斜(Fo背斜)の南西側にF1断層,F2断層,F3断層が並走して分布していることが明らかになった.断層帯の海域部における活構造の配置は,十勝平野断層帯主部と類似している.このことは,両者が同様の応力場で形成されてきたことを示唆する.本研究で明らかになったF1断層はB1測線〜B6測線の範囲,F2断層はB1測線〜W4測線の範囲,F3断層はW3測線〜W5測線の範囲,Fo背斜はW1測線〜W5測線の範囲に,それぞれ連続的に確認できる.一連の活構造はW6測線に至って認識できなくなる.そのため,断層帯の海域延長部に分布する活構造の南端位置は,W5測線とW6測線の間にあると推察される.以上にもとづくと,断層帯の海域部の長さ(海岸線から活構造の南端)は,最長で約33 kmとなる.また,陸域における光地園断層と断層帯の海域部を合わせると,その断層長は約58 kmとなる.
地震調査研究推進本部(2005):十勝平野断層帯の評価.23 pp.
辻野・他(2014):襟裳岬沖海底地質図,海洋地質図,no.83(CD),産業技術総合研究所地質調査総合センター.