Seismological Society of Japan Fall Meeting

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Poster session (Sept. 18th)

General session » S10. Active Faults, Historical Earthquakes

S10P

Wed. Sep 18, 2019 1:00 PM - 2:30 PM ROOM P (International Conference Halls II and III)

1:00 PM - 2:30 PM

[S10P-03] Relationship between linear surface displacements of the 2016 Kumamoto earthquake sequence and distribution of aftershocks

*Satoshi Fujiwara1, Hiroshi Yarai1, Tomokazu Kobayashi1, Yu Morishita1, Takayuki Nakano1 (1. Geospatial Information Authority of Japan)

1.はじめに
 2016年熊本地震では地表の広範囲で地殻変動による変位が生じており、筆者らはALOS-2のSARを用いてその変位を面的に検出している。これらの地表変位の大部分は震源断層の断層運動で説明できるものの、地表には震源断層の動きでは説明できない地表断層群(お付き合い地震断層)が数多く現れている(Fujiwara et al. 2016, EPS)。
 本報告では、余震分布との関係から地表断層群がどのように生じたのかを考察する。

2.地表断層群と余震分布
 図に地表断層群と2016年4月14日から2016年末までの震央分布(主に余震と考えられる)を示した。余震は、日奈久断層帯から布田川断層帯の西部にかけてと、 阿蘇カルデラの北東側に集中して存在している。地表断層群もこれらの余震活動が活発な場所に存在しているものが多い。

(1) 日奈久断層帯
 断層帯の北部で地表断層群と余震分布はよく一致している。日奈久断層帯に直交し、共役関係にあると考えられる中部の地表断層付近の余震活動も一致している。南部では地表断層は見られないが余震は多い。

(2) 水前寺付近
 布田川断層帯に直交する地表断層群の存在が特徴的であり、余震活動とよく一致している。この場所は震源断層モデルによるΔCFFの増加とも一致している。

(3) 阿蘇カルデラ北東
 阿蘇カルデラ内からカルデラの縁を越えて北東に延びる地表断層群と余震活動が一致している。さらに北東延長にも余震活動は続いているが地表断層は見いだされていない。

(4) 阿蘇カルデラ北西・布田川断層帯東部
 阿蘇カルデラの北西部は、その変位断面がのこぎりの歯のように規則的に連なる特徴的な地表断層群が数多く現れた場所である。しかし、他の地表断層群とは異なり、余震活動がまったく見られない。その南の布田川断層帯の東部やさらに南の阿蘇カルデラの南西部の地表断層帯でもまったく余震が観測されていない。

3.考察
 地表断層群の出現は、熊本地震をトリガーとして発生していることは事実である。しかしながら、熊本地震の震源断層が作り出した新たなひずみ場だけからは地表断層群の動きを説明できないため、熊本地震発生前までに地表断層群を動かすひずみの蓄積があったことが必要である。余震活動の存在は、少なくとも熊本地震後にひずみが存在している証拠でもあるので、余震活動と地表断層群の成因に何らかの関連があると考えられる。

(1) 地表断層と余震が一致
 水前寺付近のように、熊本地震の発生によって生じた地殻変動と地表断層の動きが一致する場所であり、震源断層によって生じた地殻変動によるひずみが余震活動も活発化させていると考えられる。

(2) 地表断層があっても余震がない
 余震活動がないのは、もともとひずみがたまっていない、熊本地震でひずみがほぼ解消された、もしくは地震が発生しにくい構造になっている、のいずれかであろう。ただし、地表断層群が発生していることから、もともとひずみがたまっていないとは考えられない。ここで注目すべきは、阿蘇カルデラの北西部に接している布田川断層帯東部でも余震活動がほとんどみられないことである。これらの場所は阿蘇カルデラ縁の西側にまとまって存在しており、火山に影響を受けた構造であることが推定される。その火山性構造も相まって、布田川断層帯東部及び地表断層群が熊本地震時に一気にひずみを解消したという仮説が考えられる。

(3) 地表断層がなく余震が活発
 図の北東端や南西端にあたる。余震活動があることからひずみはある程度たまっている場所ではある。しかし、震源断層から遠くなることより、地表断層群を熊本地震がトリガーする効果が小さかったことが推測される。

謝辞
 本報告で使用したALOS-2データの所有権はJAXAにあります。これらのデータは、国土地理院とJAXAの間の協定及び地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動に基づいて、JAXAから提供されたものです。地震データは気象庁の一元化震源を用いました。