日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

B会場

一般セッション » S11. 地震に伴う諸現象

[S11]PM-1

2019年9月18日(水) 15:15 〜 16:15 B会場 (国際科学イノベーション棟シンポジウムホール)

座長:古本 宗充(東濃地震科学研究所)、小村 健太朗(防災科学技術研究所)

15:45 〜 16:00

[S11-03] やや長周期の表面波の通過に同期した地磁気変動

*古本 宗充1、村上 理1、浅井 康広1 (1. 東濃地震科学研究所)

地震波通過に伴い電磁気変動が発生することについて,これまでにも多くの報告がなされている.それらの発生機構として,地殻内を起源とするものについては,岩体の圧電現象や圧磁現象,導電性を持つ物質としての岩体の運動による電磁誘導,そして空隙弾性体内の界面動電現象など,様々な性質や現象が提案されてきている.

 これまでに報告されている地殻内を起源とする電磁場の変動現象は,主に周波数1Hz 程度やそれ以上の短周期帯域のものである.一方周期数十秒程度の帯域の変動としては,大気音波を経由した電離層の擾乱に伴うものなどについては報告されているが,地殻内を起源とするものはほとんどない. 地殻内を起源とする電磁気変動の機構や関連する地下構造を知る上で,より広い帯域での検出は重要であると考えられる.本研究では2011年東北地方太平沖地震およびその余震などを利用して,大振幅のやや長周期表面波に同期した磁気変動が見られることを報告する.

 地震動と地磁気の観測計器は,東濃地震科学研究所により岐阜県瑞浪市に設置された,水圧計(瑞浪超深地層研究所立穴,深度200m)と3成分磁力計(ボアホール,深度500m)である.両計器の水平方向の距離は約200mであり,ほぼ同一の観測点と見なすことができる.データのサンプリング間隔は両者とも1/20秒である.なお,地震動の計測に地震計を利用していないのは,コイル等を内蔵する地震計自体が磁気変動を混入させる可能性を持つためである.

 解析に利用した地震波は,東北地方太平洋沖地震の本震(Mw=9.0)と直後に発生した最大余震(Mw=7.8),およびM=7クラスの前震1個と余震5個である.各地震からの直達Rayleigh波(以下R波)の振幅は大きいが,対象とした周波数帯域では通常の地磁気変動そのものが大きい.そのため本震においても波形同士の直接比較では,地震動と地磁気変動には明確な対応は見られない.特に本震時には磁気嵐が発生しており地磁気変動が大きい.そこで,各地震の地震動と磁気変動の相互相関関数により,同期した信号が含まれているかを検討した.使用したデータは,直達R波以降のコーダ部分20分間を利用した.コーダ部分を用いることで,安定した相互相関関数を求めるのに適した,ある程度定常的な波動場になっていると期待される.また直達R波部分を除いたのは,振幅が突出して大きいため,定常性が保てなくなると考えたからである.使用したコーダ部分には,周期20秒程度のR波を主として,より長周期成分が含まれていると考えられる.なお,地震波データとして水圧を利用しているので,地震波データ中にSH波やLove波成分は含まれていないことになる.

 地震波と磁気変動データについて周波数15 mHz程度より高周波側でいくつかのバンドパスフィルターをかけ,各帯域の出力時系列間で相互相関関数を計算した.図1に示したのは 本震後のコーダ部分の水圧と地磁気の鉛直成分の25 - 30 mHz帯域の相互相関関数である.横軸のlagが正の値は,地震波に対して磁気変動が遅れることを表している.図から明らかなように,相互相関関数はlag=0 においてピークを持っている.このことは地震波と磁気変動には同期した成分があることを示している.同様のピークは 15 ~ 40 mHz の帯域で見られる.しかし,40 mHz より高周波帯域ではlag=0 で明瞭なピークは現れない.一方15 mHz より低周波側でもピークはlag=0 にはない.

 最大余震 (Mw=7.8) についても,相互相関関数は同様の帯域でlag=0 にピークを持っており,大きな振幅の場合での再現性はあるように見える.一方,それより小さい振幅になる前震(Mw=7.2) やMw<7.5クラスの余震では,lag=0 における明瞭なピークは見られない.

 本震と最大余震においては,鉛直以外の地磁気水平2成分においても水圧と同期した変動が見られる.地磁気の3方向成分との相互相関関数から地震動と同期した磁気変動の偏光の様子を知ることができる.偏光は直線的で,南東下向きー北西上向きとなる.そして地下水圧が最大(= 岩盤の最大圧縮時)の時,地磁気は南東下向きで最大になる.