3:00 PM - 3:15 PM
[S12-03] Experimental investigation of cumulative effect on thermal maturation of carbonaceous material as a proxy for earthquake slip
地震発生時に断層で開放されるエネルギーの大部分が熱であり(Chester et al.2005)、この摩擦熱が断層弱化メカニズムや地震のエネルギー収支に直接関係している。そのため、断層に記録されている摩擦熱の検出は、これらの理解において極めて重要である。摩擦熱の検出手法の1つとして、炭質物の熱熟成に伴う有機化学的特性の変化が注目を集めている。これまでに、赤外分光法・ラマン分光法(Hirono et al.2015; Kaneki et al.2016,2018)や質量分析法(Savage et al.,2014)元素組成分析(Kaneki et al.2016)、ビトリナイト反射率測定(Sakaguchi et al.2011)などを使用することによる様々なアプローチが行われてきた。しかし、摩擦熱のより定量的に推定するためには、剪断により促進されるメカノケミカル効果だけのみならず、繰り返し加熱を考慮した化学反応速度論を検討する必要がある。地震イベントは、地質学的タイムスケールでは何度も繰り返すため、断層における多数の加熱イベントが断層に含まれる炭質物の熱熟成反応に与える影響はいまだ未解決である。そこで、本研究では炭質物の熱熟成反応における繰り返し加熱の影響の解明を目的とし、複数の地震イベントを模擬した室内実験および実験前後試料の分光分析を実施した。
研究手法として、まず瀝青炭と無煙炭の炭質物2種類をそれぞれガラス管に真空封入、そのガラス管を管状電気炉の中に挿入し、100, 300, 500, 600, 700, 900,1100, 1300℃の温度で40秒間、繰り返す地震イベントを模擬して、10, 100回の加熱を行なった。また、瀝青炭のみ上記の実験に加え、500℃における8,16時間加熱を、600℃における8時間加熱を行なった。その後、実験前後試料において、赤外分光分析およびラマン分光分析を行なった。
結果、各温度において赤外・ラマン両分光分析ともに加熱回数による熱熟成度の有意な差は認められなかった。但し、500℃における長時間加熱では脂肪族CH鎖の吸収帯が8時間では消失せず、16時間でようやく消失することが確認できた。地震時の短いタイムスケールの滑り事象では何度繰り返しても化学反応速度的制約より熱熟成が促進されることはないと結論づけることが出来る。すわなち、断層に保存されている炭質物の最高到達温度は、かつてその断層が履歴した最大規模の地震イベントを示していると言える。
研究手法として、まず瀝青炭と無煙炭の炭質物2種類をそれぞれガラス管に真空封入、そのガラス管を管状電気炉の中に挿入し、100, 300, 500, 600, 700, 900,1100, 1300℃の温度で40秒間、繰り返す地震イベントを模擬して、10, 100回の加熱を行なった。また、瀝青炭のみ上記の実験に加え、500℃における8,16時間加熱を、600℃における8時間加熱を行なった。その後、実験前後試料において、赤外分光分析およびラマン分光分析を行なった。
結果、各温度において赤外・ラマン両分光分析ともに加熱回数による熱熟成度の有意な差は認められなかった。但し、500℃における長時間加熱では脂肪族CH鎖の吸収帯が8時間では消失せず、16時間でようやく消失することが確認できた。地震時の短いタイムスケールの滑り事象では何度繰り返しても化学反応速度的制約より熱熟成が促進されることはないと結論づけることが出来る。すわなち、断層に保存されている炭質物の最高到達温度は、かつてその断層が履歴した最大規模の地震イベントを示していると言える。