日本地震学会2019年度秋季大会

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一般セッション » S15. 強震動・地震災害

[S15]PM-2

2019年9月16日(月) 14:45 〜 15:45 A会場 (百周年記念ホール)

座長:三宅 弘恵(東京大学)、長坂 陽介(港湾空港技術研究所)

15:15 〜 15:30

[S15-12] 広域の観測記録を用いた2008年岩手県沿岸北部のスラブ内地震の震源モデルの推定

*熊谷 周治1、田中 信也2、新井 健介3 (1. 東北電力株式会社、2. 東電設計株式会社、3. 清水建設株式会社)

2008年7月24日0:26の岩手県沿岸北部のスラブ内地震(Mw6.8)を対象として、浅野・岩田(2009)では経験的グリーン関数法により震源モデルの推定を行っている。しかしながら、震源モデルの推定に用いたのは岩手県内のKiK-net観測点のみであり、特に破壊開始点やライズタイムといったパラメータは、震源直上の4観測点のみから決定されている。このように、震源との位置関係が限定された観測点のみで震源モデルを推定すると、決定されたモデルパラメータに本震時の指向性効果が含まれてしまう可能性がある。そこで、本稿においては、より広域で観測記録を再現可能な震源モデルの推定を目指して、青森県の観測点も加えて浅野・岩田(2009)のモデルパラメータの再検討を行った。

検討対象観測点として、浅野・岩田(2009)で用いられている岩手県内のKiK-net観測点に加えて、青森県内の観測点も用いた。経験的グリーン関数としては、浅野・岩田(2009)と同様に2008年7月24日11:27の余震(Mw5.1)を用いた。

まず、岩手県内の観測点と青森県内の観測点それぞれについて、本震と余震のフーリエスペクトル比を確認した。その結果、岩手県内と青森県内ではフーリエスペクトル比の特徴に有意な差が見られた。また、浅野・岩田(2009)の震源モデルを用いて経験的グリーン関数法で青森県内の観測点の地震動を計算したところ、観測記録と必ずしも整合しない結果となった。

そこで、浅野・岩田(2009)モデルのパラメータを再検討することで、青森県内の観測点にも適用可能な震源モデルの構築を試みた。具体的には、ライズタイム及び強震動生成域(SMGA)の破壊開始点、破壊開始時刻を再検討した。これらのパラメータを変動させ、検討対象とした全ての観測点で再現性が高くなる最適モデルの選定を行った。最適モデルの選定には減衰定数5%の擬似速度応答スペクトルの適合度を基準とした。適合度の定量化のために、Dreger et al. (2015)によるCombined Goodness-of-fit(CGOF)を用いた。その結果、2つのSMGAのうち、大きいほうのSMGAの破壊開始点を中央下端付近に変更すると再現性が向上することが分かった。また、ライズタイムについては、青森県内の観測点では、長めにした方が観測記録の再現性が良く、岩手県内の観測点では短めの方が観測記録の再現性が良いことが分かった。浅野・岩田(2009)モデルのライズタイムの値は同規模のスラブ内地震と比較して短くなっており、この傾向を反映していると考えられる。SMGAの破壊時刻は浅野・岩田(2009)と同程度となった。得られた震源モデル(図1)を用いて地震動評価を行うことで、浅野・岩田(2009)の震源モデルに比べて青森県内の観測点の再現性が向上することと共に、岩手県内の観測点においても、浅野・岩田(2009)の震源モデルと同程度の再現性となることを確認した(図2)。

謝辞: 本研究では、防災科学技術研究所KiK-netの強震記録を使用しました。
参考文献: 浅野・岩田(2009), 日本地球惑星科学連合2009年大会, S152-009. Dreger et al. (2015), Seismological Research Letters, Vol. 86, pp. 39-47. Suzuki et al. (2009), Bulletin of the Seismological Society of America, Vol. 99, No. 5, pp. 2825–2835.