17:15 〜 18:45
[S15P-03] 模擬砂層地盤を用いた弾性波モニタリングによる強震動に伴う弾性波応答特性の変化の検討
§はじめに
強震動によって浅部地盤の地震波速度や増幅係数のピーク周波数が低下するなどの地盤特性の変化が見られる時がある。その変化についてSawazaki et al.(2009)は、2000年鳥取県西部地震の余震記録を用い、そのコーダスペクトル比から本震直後に浅部地盤の増幅係数のピーク周波数が低下したことを検出した。又、数日から数年をかけてピーク周波数が回復することも検出し、岩石試験から提案されているスローダイナミクスとの類似点を指摘している。
スローダイナミクスの様なサイトの地盤特性の変化を理解することは、地震動の予測に重要となる。しかし、実地震においては余震記録を用いるため、余震発生数に依存して時間分解能が落ちてしまう。これについては、弾性波モニタリングできる室内実験が有効だと考える。更に、室内実験では振動の強さや周波数などがコントロール可能である。
室内実験について、TenCate et al.(2000)は、直径50 mm、長さ300 mmの細長い円筒形岩石試料に一定時間の弾性波を加えた後に、一次元棒と見立てた時の試料の基本共振周波数(約3900 Hz)の前後100 Hz幅のスイープ信号を加えモニタリングすることで、試料の共振周波数の低下を観測した。その後、時間をかけて最終的に共振周波数は元に戻ったと報告している。しかし、モニタリング波が狭帯域で基本共振周波数以外の周波数帯については述べられておらず、より広帯域で観測する必要がある。なお、先行研究によればスローダイナミクスの詳細は不明なままでモデルがないので数値シミュレーションを行うことが難しい。
以上のことから本研究では、模型砂層地盤に強震動を与える実験を実施し、地盤の変化、回復のモニタリングを行った。モニタリングに用いるSweep信号を繰り返し与えることで時間分解を上げ、Sweep信号の帯域を広くとった。
§実験方法
アルミ板(40×40×20 mm)を底に取り付けた容器(150×280×165 mm)に厚さ30 mmのモルタルを流し込み固めた。これは工学的基盤を模したものであると同時に、容器の底に直接取り付ける震動源(シェーカー)の変位そのものが砂層地盤に局所的で不可逆的な変形を生じさせることを避けるためである。その後、モルタルの上に厚さ75 mmのシリコンを含んだ砂を敷きつめ、浅部地盤を模した砂層を作成し、加速度センサーを砂層内部に鉛直に、モルタル基盤との境界から高さ10 mm、40 mm、70 mmの箇所にA1, A2, A3の順に設置した(図1)。
容器の底からシェイカーでモニタリング波としてのSweep信号(0~20 kHz、100 mVpp)と強震としてのsine波(0.1 kHz、1700 mVpp)を繰り返し(Sweep 8分→sine2分→Sweep60分→sine2分→Sweep60分→sine2分→Sweep60分)砂層に入力した。
§結果
実験結果により得られた弾性波速度からSweep信号の波長は砂の直径よりも1桁以上大きく、砂層サイズに対しては最少で波数が3であることを確認した。鉛直に設置した加速度センサーA1, 2, 3で振幅スペクトル比、速度比を表すと各々図2、3のようになった。図2より、砂層の共振周波数が強震後に約12.5 kHzから約12 kHzに低下した。その後、20分程かけて、12.5 kHz付近まで回復していく過程を確認することができた。図3より、強震により砂層の共振周波数が低下するのに伴い、12 kHz付近の弾性波速度が0.5%程低下し、回復していく過程を確認することができた。今回の実験では強震、モニタリングともに弾性波としてP波的な振動を用いているが、コーダ波を用いたSawazaki et al.(2009)とよく似た地盤の増幅係数のピーク周波数の低下、回復を確認することができた。
強震動によって浅部地盤の地震波速度や増幅係数のピーク周波数が低下するなどの地盤特性の変化が見られる時がある。その変化についてSawazaki et al.(2009)は、2000年鳥取県西部地震の余震記録を用い、そのコーダスペクトル比から本震直後に浅部地盤の増幅係数のピーク周波数が低下したことを検出した。又、数日から数年をかけてピーク周波数が回復することも検出し、岩石試験から提案されているスローダイナミクスとの類似点を指摘している。
スローダイナミクスの様なサイトの地盤特性の変化を理解することは、地震動の予測に重要となる。しかし、実地震においては余震記録を用いるため、余震発生数に依存して時間分解能が落ちてしまう。これについては、弾性波モニタリングできる室内実験が有効だと考える。更に、室内実験では振動の強さや周波数などがコントロール可能である。
室内実験について、TenCate et al.(2000)は、直径50 mm、長さ300 mmの細長い円筒形岩石試料に一定時間の弾性波を加えた後に、一次元棒と見立てた時の試料の基本共振周波数(約3900 Hz)の前後100 Hz幅のスイープ信号を加えモニタリングすることで、試料の共振周波数の低下を観測した。その後、時間をかけて最終的に共振周波数は元に戻ったと報告している。しかし、モニタリング波が狭帯域で基本共振周波数以外の周波数帯については述べられておらず、より広帯域で観測する必要がある。なお、先行研究によればスローダイナミクスの詳細は不明なままでモデルがないので数値シミュレーションを行うことが難しい。
以上のことから本研究では、模型砂層地盤に強震動を与える実験を実施し、地盤の変化、回復のモニタリングを行った。モニタリングに用いるSweep信号を繰り返し与えることで時間分解を上げ、Sweep信号の帯域を広くとった。
§実験方法
アルミ板(40×40×20 mm)を底に取り付けた容器(150×280×165 mm)に厚さ30 mmのモルタルを流し込み固めた。これは工学的基盤を模したものであると同時に、容器の底に直接取り付ける震動源(シェーカー)の変位そのものが砂層地盤に局所的で不可逆的な変形を生じさせることを避けるためである。その後、モルタルの上に厚さ75 mmのシリコンを含んだ砂を敷きつめ、浅部地盤を模した砂層を作成し、加速度センサーを砂層内部に鉛直に、モルタル基盤との境界から高さ10 mm、40 mm、70 mmの箇所にA1, A2, A3の順に設置した(図1)。
容器の底からシェイカーでモニタリング波としてのSweep信号(0~20 kHz、100 mVpp)と強震としてのsine波(0.1 kHz、1700 mVpp)を繰り返し(Sweep 8分→sine2分→Sweep60分→sine2分→Sweep60分→sine2分→Sweep60分)砂層に入力した。
§結果
実験結果により得られた弾性波速度からSweep信号の波長は砂の直径よりも1桁以上大きく、砂層サイズに対しては最少で波数が3であることを確認した。鉛直に設置した加速度センサーA1, 2, 3で振幅スペクトル比、速度比を表すと各々図2、3のようになった。図2より、砂層の共振周波数が強震後に約12.5 kHzから約12 kHzに低下した。その後、20分程かけて、12.5 kHz付近まで回復していく過程を確認することができた。図3より、強震により砂層の共振周波数が低下するのに伴い、12 kHz付近の弾性波速度が0.5%程低下し、回復していく過程を確認することができた。今回の実験では強震、モニタリングともに弾性波としてP波的な振動を用いているが、コーダ波を用いたSawazaki et al.(2009)とよく似た地盤の増幅係数のピーク周波数の低下、回復を確認することができた。