日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S15. 強震動・地震災害

S15P

2019年9月16日(月) 17:15 〜 18:45 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:15 〜 18:45

[S15P-17] 高知県内の強震観測記録の精査による考察

*山田 伸之1、大久保 慎人1 (1. 高知大学理工学部)

高知県は想定される南海トラフの地震の震源域直上に位置し,有事の際には,大震度の揺れに見舞われる可能性がある[地震調査研究推進本部(2019)]。そこで得られる強震記録は,震源域近傍における地震・防災研究にとって貴重なものになると考えられる。しかしながら,想定地震の被害想定[高知県(2013)]によれば,県内の強震観測点のうち,人口が集まる沿岸部地域にある地点の大半は,地震後の津波等による浸水想定区域内にある。これらの観測点は,水没により長期間機能不全に陥る恐れがあり,さらに強震動や津波等によって,観測点周辺の状況が現状と著しく変化する可能性もあり得る。
防災科学技術研究所の強震観測網は,1996年の運用から間もなく四半世紀を迎える。その間,日本各地で被害地震が多数発生しているが,高知県内においては顕著な被害に見舞われることなく今日に至っている。高知県の各地では,普段,地震の揺れを感じることも少なく,震度観測点で過去数十年間,震度5強相当以上の記録もない[気象庁震度データベースより]。従って,強く揺らされた経験のない対策が不十分な既存の各種中小の住家等については,中程度の地震動でも甚大な被害が生じる可能性があり,それらによってその後の避難行動にも大きな支障をきたす恐れもある。
こうした背景から,本報告では,想定地震発生前に地震動・地盤などの関連情報を蓄積させておくとともに,実記録に基づく地域の防災に繋げることを目指すために,高知県内の強震観測点(現段階ではK-NETの17地点)の約24年間の記録を対象に精査し,その特徴を抽出することを試みた。対象データは,1996年6月から2019年7月15日の間で最大加速度5 gal以上とした。データ数は,KOC015(宿毛)で突出して多く160個で,他は平均50個程度であり,全点の合計は979個であった。これまでの強震記録の最大振幅値は,KOC008(本川)で537 cm/s2がある。また,速度応答値では,最大でも10数 cm/s程度であり,県内のすべての地点でこの傾向は同じである。現在までに得られている記録による傾向として,応答スペクトル形状には,特徴的な様相を呈する地点が見られ,地震の規模や位置によらず,その形状は類似しており,またそのピーク周期の変化は非常に小さくなっていた。今後,こうした傾向をあらためて抽出し,表層地盤構造や常時微動記録の情報等を交え考察する予定である。
なお,ここでの内容では,防災科学技術研究所のK-NETのデータ(http://www.doi.org/10.17598/NIED.0004)を利用させて頂きました。記して感謝申し上げます。