17:00 〜 18:30
[S16P-02] 鳥取県湯梨浜町小鹿谷・高辻地区の稠密微動観測による地盤構造の推定
1.はじめに
2016年10月21日に鳥取県中部の地震(Mj6.6)が発生し,震源近傍の倉吉市,北栄町,湯梨浜町,三朝町など鳥取県中部の広範囲で建物被害が生じた.湯梨浜町の小鹿谷および高辻地区で住宅が密集する領域は両地区とも200~300m四方の領域の狭い範囲内であったがその中でも木造建物の屋根瓦の被害が局所的にみられ,近隣では無被害の家屋もみられた.そこで本研究では,局所的に被害が発生する原因を追究するために,両地区において稠密微動観測並びに地震観測を実施した.
2.微動探査による地盤構造の推定
微動観測は2017/7/21,24の日中に,小鹿谷(OSK),高辻(TK)の2地点で実施した.3成分単点観測を小鹿谷で82点,高辻で20点,アレイ観測をそれぞれ1地点で観測を行った.使用機器には加速度型微動計JU410(白山工業)を用い,測定方向を水平動2成分(NS,EW)成分,上下動成分の3成分とし,サンプリング周波数は3成分単点観測時で100Hz,アレイ観測時で200Hzとした.GPSクロックにより時刻同期させる仕様で,測定時間は10分間程度の測定を行った.アレイ観測は微動計4台を用いて,円の中心に1台,円周上に等間隔で3台(内接する三角形の各頂点)に配置して実施した.
微動の3成分観測記録より,20.48秒を5区間以上選定し,3成分のフーリエスペクトルを算出,対数ウィンドウ(係数20)で平滑化し,水平動のスペクトルと上下動のスペクトルの比(H/V)を求めた.アレイ観測記録は,CCA法1)によりセグメント長10.24秒,Parzenウィンドウ(バンド幅0.3Hz)でスペクトルを平滑化し,位相速度分散曲線を求めた.位相速度分散曲線とH/Vを用いて,レイリー波基本モードを仮定して,試行錯誤で地盤構造モデルを推定した.その結果,両地域でS波速度200m/s以下の層が15m程度堆積していること,地表から15m以深でS波速度700m/sの非常に硬い層が存在していることがわかった.このことより,両地域とも山麓付近に位置しており,堆積層が薄いことを示している.また図1に小鹿谷,図2に高辻の卓越周期分布図を示す.小鹿谷では西側で卓越周期が0.1~0.2秒,東側で0.5~0.6秒であり山際に近付くにつれて短くなる傾向がみられた.卓越周期の分布が変化する境目で建物被害が集中しており,その周期は0.5~0.6秒であった.H/Vのピーク値に注目すると,南側の山の麓付近では2.0以下,平野部に近い場所では3.0以上の地点が多く,谷筋から平野部に向うにつれてピーク値が大きくなる傾向がみられた.高辻では全体的に卓越周期は0.1~0.3秒,ピーク値2.0以下の地点が分布しており,目立った特徴はみられなかった.ピークが明瞭な地点において建物被害がみられ,その周期は0.2~0.3秒であった.
3.地震記録による地盤構造の推定
小鹿谷では2017年7月から2018年7月まで,高辻では2015年10月から両地域で地震計を設置して地震観測を行っており,高辻では2016年鳥取県中部の地震の本震記録が得られている.観測機器は東京測震製のセンサ一体型記録計CV-374Aを使用し,測定方向を水平動2成分(NS,EW)成分,上下動成分の3成分とし,サンプリング周波数100Hzで常時収録,GPSクロックによる時刻校正を行う仕様である.
地震観測記録より,S波部の10.24秒の区間を切り出し,両端に0.5秒のコサインテーパーを施し,Parzenウィンドウ(バンド幅0.3Hz)でスペクトルを平滑化し,各成分のフーリエスペクトルを算出,微動記録と同様にH/Vを求めた.この観測H/Vを用いて,S波速度700m/sよりも遅い浅部構造は微動観測により得られたモデル,深部構造は野口・他2)による地盤構造モデルをベースとして,拡散波動場理論3)に基づく理論H/Vを用いてフォワードモデリングで推定した。さらにそのモデルをベースにハイブリッドヒューリスティック探索法4)によるインバージョンで最終的に地盤構造モデルを求めた.今回は減衰定数,第1層目の層厚とS波速度,最下層のS波速度・P波速度を固定し,その他の層に関してはS波速度・P波速度・層厚共に初期値から±25%の範囲で探索を行った.観測H/Vと計算H/Vの比較を図3に,逆解析により算出された地盤構造モデルを図4に示す.小鹿谷ではS波速度400m/s以下の層が50m堆積しているのに対して,高辻ではS波速度200m/s以下の層が10m堆積しており,浅部構造に違いがみられる.そのため鳥取県中部の地震発生時に揺れ方が異なっていた可能性がある.今後は作成したモデルの妥当性を本震波形を用いて検討する予定である.
参考文献 :1)Cho,et. al., J. Geophys. Res., 2006., 2)野口竜也・他;土木学会論文集 A1(構造・地震工学)Vol.72, 2016., 3)Kawase, H, et. al., Bull. Seism. Soc. Am. Vol.101, 2011., 4)山中浩明;物理探査, 2007.
2016年10月21日に鳥取県中部の地震(Mj6.6)が発生し,震源近傍の倉吉市,北栄町,湯梨浜町,三朝町など鳥取県中部の広範囲で建物被害が生じた.湯梨浜町の小鹿谷および高辻地区で住宅が密集する領域は両地区とも200~300m四方の領域の狭い範囲内であったがその中でも木造建物の屋根瓦の被害が局所的にみられ,近隣では無被害の家屋もみられた.そこで本研究では,局所的に被害が発生する原因を追究するために,両地区において稠密微動観測並びに地震観測を実施した.
2.微動探査による地盤構造の推定
微動観測は2017/7/21,24の日中に,小鹿谷(OSK),高辻(TK)の2地点で実施した.3成分単点観測を小鹿谷で82点,高辻で20点,アレイ観測をそれぞれ1地点で観測を行った.使用機器には加速度型微動計JU410(白山工業)を用い,測定方向を水平動2成分(NS,EW)成分,上下動成分の3成分とし,サンプリング周波数は3成分単点観測時で100Hz,アレイ観測時で200Hzとした.GPSクロックにより時刻同期させる仕様で,測定時間は10分間程度の測定を行った.アレイ観測は微動計4台を用いて,円の中心に1台,円周上に等間隔で3台(内接する三角形の各頂点)に配置して実施した.
微動の3成分観測記録より,20.48秒を5区間以上選定し,3成分のフーリエスペクトルを算出,対数ウィンドウ(係数20)で平滑化し,水平動のスペクトルと上下動のスペクトルの比(H/V)を求めた.アレイ観測記録は,CCA法1)によりセグメント長10.24秒,Parzenウィンドウ(バンド幅0.3Hz)でスペクトルを平滑化し,位相速度分散曲線を求めた.位相速度分散曲線とH/Vを用いて,レイリー波基本モードを仮定して,試行錯誤で地盤構造モデルを推定した.その結果,両地域でS波速度200m/s以下の層が15m程度堆積していること,地表から15m以深でS波速度700m/sの非常に硬い層が存在していることがわかった.このことより,両地域とも山麓付近に位置しており,堆積層が薄いことを示している.また図1に小鹿谷,図2に高辻の卓越周期分布図を示す.小鹿谷では西側で卓越周期が0.1~0.2秒,東側で0.5~0.6秒であり山際に近付くにつれて短くなる傾向がみられた.卓越周期の分布が変化する境目で建物被害が集中しており,その周期は0.5~0.6秒であった.H/Vのピーク値に注目すると,南側の山の麓付近では2.0以下,平野部に近い場所では3.0以上の地点が多く,谷筋から平野部に向うにつれてピーク値が大きくなる傾向がみられた.高辻では全体的に卓越周期は0.1~0.3秒,ピーク値2.0以下の地点が分布しており,目立った特徴はみられなかった.ピークが明瞭な地点において建物被害がみられ,その周期は0.2~0.3秒であった.
3.地震記録による地盤構造の推定
小鹿谷では2017年7月から2018年7月まで,高辻では2015年10月から両地域で地震計を設置して地震観測を行っており,高辻では2016年鳥取県中部の地震の本震記録が得られている.観測機器は東京測震製のセンサ一体型記録計CV-374Aを使用し,測定方向を水平動2成分(NS,EW)成分,上下動成分の3成分とし,サンプリング周波数100Hzで常時収録,GPSクロックによる時刻校正を行う仕様である.
地震観測記録より,S波部の10.24秒の区間を切り出し,両端に0.5秒のコサインテーパーを施し,Parzenウィンドウ(バンド幅0.3Hz)でスペクトルを平滑化し,各成分のフーリエスペクトルを算出,微動記録と同様にH/Vを求めた.この観測H/Vを用いて,S波速度700m/sよりも遅い浅部構造は微動観測により得られたモデル,深部構造は野口・他2)による地盤構造モデルをベースとして,拡散波動場理論3)に基づく理論H/Vを用いてフォワードモデリングで推定した。さらにそのモデルをベースにハイブリッドヒューリスティック探索法4)によるインバージョンで最終的に地盤構造モデルを求めた.今回は減衰定数,第1層目の層厚とS波速度,最下層のS波速度・P波速度を固定し,その他の層に関してはS波速度・P波速度・層厚共に初期値から±25%の範囲で探索を行った.観測H/Vと計算H/Vの比較を図3に,逆解析により算出された地盤構造モデルを図4に示す.小鹿谷ではS波速度400m/s以下の層が50m堆積しているのに対して,高辻ではS波速度200m/s以下の層が10m堆積しており,浅部構造に違いがみられる.そのため鳥取県中部の地震発生時に揺れ方が異なっていた可能性がある.今後は作成したモデルの妥当性を本震波形を用いて検討する予定である.
参考文献 :1)Cho,et. al., J. Geophys. Res., 2006., 2)野口竜也・他;土木学会論文集 A1(構造・地震工学)Vol.72, 2016., 3)Kawase, H, et. al., Bull. Seism. Soc. Am. Vol.101, 2011., 4)山中浩明;物理探査, 2007.