17:00 〜 18:30
[S16P-15] 関西地震観測研究協議会の連続観測記録を利用した雑微動相互相関関数解析
関西地域に広帯域速度型強震計を展開している関西地震観測研究協議会(関震協)は,2009年3月から2011年8月にかけて,連続観測に対応したデータロガーを全ての自前観測点に順次設置した。この新しい観測装置により得られる記録は,強震から微動に至るまで,広帯域で高い精度を有することが明らかとなっている(赤澤・他,2013)。赤澤・他(2011)は,1か月2期間の連続観測記録を利用して,地震波干渉法による相互相関関数解析を行った。その結果,抽出された観測点間グリーン関数において,各観測点ペアに共通する幾つかの信号波群の存在を確認し,これらの信号は特定の周期帯で分散性を有すること,最も見かけの群速度が遅い約0.3 km/sの波群は典型的なRayleigh波の特徴を有すること,等を示した。一方で,安定した関数を得るために,1年間程度の記録を利用する必要性も指摘されている(山下・他,2010)。本検討では,大阪堆積盆地構造モデルの検証およびその高度化を見据えて,長期間の連続観測記録を利用した相互相関関数解析を実施し,より安定した観測点間グリーン関数の抽出を試みた。
解析の手順は,大阪平野に臨時観測点を展開し,得られた連続観測記録を利用して相互相関関数解析を実施した,Asano et al.(2017)を参考にした。各解析区間の時間長は30分とし,区間の半分がオーバーラップするように(15分ずつずらしながら)連続記録から切り出した。その際,データが欠落もしくは飽和している,時刻が較正されていない,等により解析に支障をきたす区間は除外した。切り出された時刻歴波形に零線補正とチェビシェフ型のバンドパスフィルタを施し,Running Absolute Mean法(Bensen et al., 2007)により振幅値を時間領域で正規化した後,相互相関関数を計算した。このようにして得られた各区間の相互相関関数を時間領域で重合して得られた関数を,観測点間グリーン関数と見なした。
図1に,解析結果の一例として,神戸市から東大阪市にかけて東西方向にほぼ一直線に並ぶ5観測点(観測点の名称と位置は赤澤・他(2013)を参照)を対象に,2017年に観測された1年分の上下成分記録から抽出された各観測点ペアの観測点間グリーン関数(周波数範囲0.2~0.5 Hz)を,観測点間距離でペーストアップして示す(ここでは,相互相関関数の計算過程で,周波数領域でのスペクトルホワイトニング操作は行っていない)。観測点ペアを「Site 1-Site 2」とするとき,正のラグタイムはSite 1からSite 2への,負のラグタイムはSite 2からSite 1への信号の伝播を示している。図1において,各観測点間グリーン関数に,時刻原点に対して対象となるように,SN比が良い信号波群が確認できる。図2に,MOT-FKSペアを対象に,2017年に観測された1か月毎の上下成分記録から抽出された観測点間グリーン関数を,1年分の記録から抽出された関数(図1と同じ)と並べて示す。各波形の上に示した数値は,相互相関関数の重合数を示す。月別の観測点グリーン関数には季節性が認められ,安定した観測点間グリーン関数を得るためには,少なくとも1年間程度の記録を利用する必要があることが,本検討で確認された。
参考文献 赤澤・他(2011),日本地球惑星科学連合2011年大会,SSS023-P31. 赤澤・他(2013),日本地震工学会論文集,第13巻,第4号,4_55-4_67. 山下・他(2010),京都大学防災研究所年報,第53号B,175-180. Asano et al. (2017), Earth, Planets and Space, Vol.69:108. Bensen et al. (2007), Geophys. J. Int., 169, 1239-1260.
解析の手順は,大阪平野に臨時観測点を展開し,得られた連続観測記録を利用して相互相関関数解析を実施した,Asano et al.(2017)を参考にした。各解析区間の時間長は30分とし,区間の半分がオーバーラップするように(15分ずつずらしながら)連続記録から切り出した。その際,データが欠落もしくは飽和している,時刻が較正されていない,等により解析に支障をきたす区間は除外した。切り出された時刻歴波形に零線補正とチェビシェフ型のバンドパスフィルタを施し,Running Absolute Mean法(Bensen et al., 2007)により振幅値を時間領域で正規化した後,相互相関関数を計算した。このようにして得られた各区間の相互相関関数を時間領域で重合して得られた関数を,観測点間グリーン関数と見なした。
図1に,解析結果の一例として,神戸市から東大阪市にかけて東西方向にほぼ一直線に並ぶ5観測点(観測点の名称と位置は赤澤・他(2013)を参照)を対象に,2017年に観測された1年分の上下成分記録から抽出された各観測点ペアの観測点間グリーン関数(周波数範囲0.2~0.5 Hz)を,観測点間距離でペーストアップして示す(ここでは,相互相関関数の計算過程で,周波数領域でのスペクトルホワイトニング操作は行っていない)。観測点ペアを「Site 1-Site 2」とするとき,正のラグタイムはSite 1からSite 2への,負のラグタイムはSite 2からSite 1への信号の伝播を示している。図1において,各観測点間グリーン関数に,時刻原点に対して対象となるように,SN比が良い信号波群が確認できる。図2に,MOT-FKSペアを対象に,2017年に観測された1か月毎の上下成分記録から抽出された観測点間グリーン関数を,1年分の記録から抽出された関数(図1と同じ)と並べて示す。各波形の上に示した数値は,相互相関関数の重合数を示す。月別の観測点グリーン関数には季節性が認められ,安定した観測点間グリーン関数を得るためには,少なくとも1年間程度の記録を利用する必要があることが,本検討で確認された。
参考文献 赤澤・他(2011),日本地球惑星科学連合2011年大会,SSS023-P31. 赤澤・他(2013),日本地震工学会論文集,第13巻,第4号,4_55-4_67. 山下・他(2010),京都大学防災研究所年報,第53号B,175-180. Asano et al. (2017), Earth, Planets and Space, Vol.69:108. Bensen et al. (2007), Geophys. J. Int., 169, 1239-1260.