日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S16. 地盤構造・地盤震動

S16P

2019年9月17日(火) 17:00 〜 18:30 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:00 〜 18:30

[S16P-16] 水中スピーカーを用いた浅海用同時発振三次元反射法地震探査システムの開発における発振波形の検討

*小川 真由1、鶴 哲郎1、古山 精史郎1、朴 進午2、郭 晨2、荒井 晃作3、井上 卓彦3 (1. 東京海洋大学、2. 東京大学 大気海洋研究所、3. 国立研究開発法人産業技術総合研究所)

1. はじめに
 地震探査とは人工的に発生させた地震波を利用して,地下の地質構造を得るための探査法である.主に資源探査などで用いられる海上三次元反射法地震探査(以下,3D地震探査)はコストが高く,浅海域や船舶の輻輳する海域での探査が困難である.
よって浅海域での地震探査は二次元探査であることが多く,得られる情報が測線上のみであるため,面的な考察は推定の域を出ない.
 そこで考案されたのが,図1に示すような同時発振方式である(東京海洋大学,2017; 鶴,2019).我々の研究グループは,振源として非パルス波振源である水中スピーカーを複数台用いた同時発振3D地震探査システムの実用化に向けて開発を行っている.複数の水中スピーカーと一本の受振ケーブルによって探査を行うことで,従来の探査システムより船舶を小型化することができ,低コストかつ海洋生物への影響も低減することが可能となる(Tsuru et al., 2018). 本システムの開発は特に東京湾など,水深が非常に浅く,船舶の航行が激しい湾内において,海底下100mの地質構造を観測することを目的とする.

2. 発振波形比較試験
 2018年8月,沼津沖にて海上試験を行った.2種類の水中スピーカーからの発振波形には周波数成分の異なるランダム波形を作成した.波形は,メルセンヌ・ツイスタの疑似ランダム発生手法を用い,2種類の発生方法を用いて作成した。1つは、 sin波をかけあわせることによって波形を滑らかにして作成し(図2)、もう1つの波形は、-1と1で構成されるパルスをランダムに配置することによって作成した。
 また,水槽実験では,各水中スピーカーから音を発振し,ハイドロフォンにて波形を取得した.得られた波形を解析し,相互相関結果と周波数範囲から発振波形を評価した.

3. 結果
 海上試験で得られた反射断面図を比較すると水中スピーカーの種類と波形の周波数成分によって,得られる反射断面図の精度に差があることがわかった.水槽実験にて水中スピーカーごとの差を確認したところ,水中スピーカー①では100Hz以上,水中スピーカー②では300Hz以上の周波数成分から出力できることが確認できた.そのため,水中スピーカー②で取得された反射断面図は,水中スピーカー①で得られたものと比較すると波形が高分解能ではあるが,低周波成分よりも強く減衰を受けるため,海底下100mの詳細な地質構造を観測することはできなかった.また、sin波をかけ合わせた波形は周波数成分が低周波数に集中していたため、水中スピーカー②では出力が弱くなり、反射断面図はノイズの影響を強く受けた.
このことから、水中スピーカー②で地質構造観測を行うためには減衰量を上回るエネルギーが必要である.しかし,水中スピーカーが発振可能な音圧レベルは限られている。そこで、特に相互相関に伴うS/N比の向上による実質的な音圧レベルの向上を目指し発振波形の改良を行った.今回は,それらの結果について考察を加える.

参考文献
Tetsuro Tsuru, Jin-Oh Park, Mamoru Takanashi, Kohsaku Arai, Takahiro Inoue, Seishiro Furuyama, Kazuo Amakasu, Kazuhiro Takao, Mayu Ogawa, Shio Shimizu, An envitonment-friendly MCS surveys by using underwater speakers in Tokyo Bay,Proceedings of the 13th SEGJ International Symposium, 2018.
鶴哲郎, 海洋音響探査, 海洋音響学会誌, 46, 14-20, 2019.
東京海洋大学, 海底地質探査システム、海底地質探査方法および海底地質探査プログラム, JP20170086440, 2017.