11:00 AM - 11:15 AM
[S17-07] Near-field array observation of the 2015 Mw6.0 Bonin Trench earthquake: Modeling in-situ tsunami generation field
海底圧力計 (PG) は,沖合で発生した地震による津波 (海面の変動,周期T ~102–103s) の観測に広く用いられてきた (e.g., González et al. 2005).それと同時に,PGは,海洋音響波の卓越周期(~10 s) を超える周期の周波数帯域 (T ~101–102s) では,p=ρ0h0az (ρ0:海水密度, h0:水深, az:海底の鉛直加速度) と表される,海底上下動加速度に比例する動的な圧力変動 (e.g., Kubota et al. 2017; Matsumoto et al. 2018; Saito 2019) も観測することが知られている (e.g., Filloux 1982).2015年9月1日(UTC),小笠原海溝においてMw6.0の低角逆断層型地震が発生し,震源域直上に展開された絶対海底圧力計 (APG) アレイが地震波,津波,地殻変動による圧力変動を同時に観測した (深尾ほか2019SSJ).これほどの観測点密度で「津波発生現場の水圧変化」を記録した事例は希少である.本研究では,地震波,津波,および地殻変動が混在する津波発生場を理解するため,観測された圧力変動の再現を試みる.
震源域直上,直近のアレーで観測されているAPG記録に対して,潮汐変動成分を取り除いたのち,短周期の海洋音響波や地震波成分を除去するために,カットオフ周期30sのローパスフィルタを適用する.震源域直上に大振幅のパルス的な圧力変化や観測点間をゆっくりと伝播する圧力変動成分,水圧オフセットの変化が観測されている.
APGの記録を再現するため,まず,1枚の矩形断層を仮定し,線形長波方程式 (e.g.,Satake 2002) に基づいて津波を計算した.矩形断層の水平位置,深さ,モーメント,幾何 (strike, dip, rake) や断層サイズなどのパラメタはGlobal CMT解を参考にしつつ観測波形を再現するように試行錯誤的に決定した.また,計算された海面高変動の時系列から海底地殻変動に伴う水圧オフセット変化分を差し引くことにより,地殻変動の影響を考慮した.この津波シグナルのモデリングで,震源直上観測点でみられる圧力のオフセットやアレイで観測された伝播速度~ 0.2 km/sで現れる長周期 (T > ~3 min) の波動現象を再現できる (図中,青線).しかしながら,直上観測点の震源時に現れる比較的短周期な大振幅パルス (T < ~100 s) を再現することはできない.
次に,津波計算に用いた矩形断層を,同じ地震モーメント,strike, dip, rakeをもつCMT解で近似し,破壊継続時間を10秒と設定して,震源からの弾性波の伝播を計算し (e.g.,Saikia 1994),海底の圧力変動を計算した (図中,緑線).これによって震源直上に現れる大振幅パルスを再現することができる.津波計算による海底圧力変化は重力に起因し,弾性波計算による圧力変化は重力とは関係なく発生する圧力変化であるため,両者を足し合わせることによって過不足無く永久変位・津波・地震波成分を含む海底圧力変動を合成することができる (Saito & Tsushima2016).
合成した海底の圧力変動によって,観測された海底の圧力変動を良く再現できた (図中,赤線).また,観測記録を再現した断層は,気象庁震源より50kmほど南西,およびUSGS,GCMTのCMT解の10kmほど北東の,観測点B10のごく近傍に位置していた.
震源域直上,直近のアレーで観測されているAPG記録に対して,潮汐変動成分を取り除いたのち,短周期の海洋音響波や地震波成分を除去するために,カットオフ周期30sのローパスフィルタを適用する.震源域直上に大振幅のパルス的な圧力変化や観測点間をゆっくりと伝播する圧力変動成分,水圧オフセットの変化が観測されている.
APGの記録を再現するため,まず,1枚の矩形断層を仮定し,線形長波方程式 (e.g.,Satake 2002) に基づいて津波を計算した.矩形断層の水平位置,深さ,モーメント,幾何 (strike, dip, rake) や断層サイズなどのパラメタはGlobal CMT解を参考にしつつ観測波形を再現するように試行錯誤的に決定した.また,計算された海面高変動の時系列から海底地殻変動に伴う水圧オフセット変化分を差し引くことにより,地殻変動の影響を考慮した.この津波シグナルのモデリングで,震源直上観測点でみられる圧力のオフセットやアレイで観測された伝播速度~ 0.2 km/sで現れる長周期 (T > ~3 min) の波動現象を再現できる (図中,青線).しかしながら,直上観測点の震源時に現れる比較的短周期な大振幅パルス (T < ~100 s) を再現することはできない.
次に,津波計算に用いた矩形断層を,同じ地震モーメント,strike, dip, rakeをもつCMT解で近似し,破壊継続時間を10秒と設定して,震源からの弾性波の伝播を計算し (e.g.,Saikia 1994),海底の圧力変動を計算した (図中,緑線).これによって震源直上に現れる大振幅パルスを再現することができる.津波計算による海底圧力変化は重力に起因し,弾性波計算による圧力変化は重力とは関係なく発生する圧力変化であるため,両者を足し合わせることによって過不足無く永久変位・津波・地震波成分を含む海底圧力変動を合成することができる (Saito & Tsushima2016).
合成した海底の圧力変動によって,観測された海底の圧力変動を良く再現できた (図中,赤線).また,観測記録を再現した断層は,気象庁震源より50kmほど南西,およびUSGS,GCMTのCMT解の10kmほど北東の,観測点B10のごく近傍に位置していた.