日本地震学会2019年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S19. 地震一般・その他

S19P

2019年9月16日(月) 17:15 〜 18:45 P会場 (時計台国際交流ホールII・III)

17:15 〜 18:45

[S19P-02] 観測点側から見た一元化処理震源カタログ

*関根 秀太郎1 (1. 公益財団法人 地震予知総合研究振興会)

1.はじめに

気象庁の一元化処理震源カタログデータは1997年10月以来約350万個の震源が決定されてきており,非常に重要なデータとして使用されている.そしてそのデータは震源情報を得るためだけでなく,読み取られた走時データや振幅データを用いる事で地球内部の構造の推定に用いられている.一元化カタログ内の読み取りでは,観測点の個数制限や距離制限はあったとしても方位による恣意性はない.従って,もし地下に大規模な低減衰域があるならば,その方角は読み取るのが困難な為,読み取れずに震源が決定されるために長期間蓄積されたデータには傾向が現れてくるはずである.さらに,観測点は地表やボアホール内など様々な環境化にあるので,そのデータがどのような範囲で読み取られているかを確認しておく事は,リアルタイム地震等で使用する際には非常に重要である.上手くグルーピングすることで観測点のデータの着・未着の実効的な判定条件として加えることができるかもしれない.そこで,本研究では,普段用いられる震源側からではなく,読み取りが行われた観測点の方から情報を精査し,他の既知の情報と併せてみる事により,観測点の状態や内部構造に対して傾向を見出す事ができないかという事について考えてみた.

2.解析手法

気象庁一元化震源カタログのデータ1997年10月1日から2019年6月30日までの読み取りデータに対して,観測点から見た方位角や震源距離等を計算し,それを観測点毎にまとめた.

3.結果および考察

図に気象庁の松代観測点の読み取りが行われた震源方位と震源距離およびマグニチュードと震源距離のグラフを示す.この観測点の場合,震源から200kmの距離において全方位の地震を観測している事がわかる.なお,松代観測点においては,90度から180度の方向の100km以内の地震に対する読み取りが少ない事が見て取れるが,その方角には火山フロントの低速度・高減衰領域があり,その影響が出ていると推測できる.また,震源距離とマグニチュードのグラフでは,読み取り下限を赤い点線で示しているが,この線の傾きが観測点から約100kmで変化している.各観測点によって線の傾きの大きさは違うが,100kmほどで傾きが変わる傾向は他の観測点でも現れており,地震の読み取りに対して上限が設定されている事が関係している可能性があると思われる.なお,距離で方向の色が揃うように見えるのは,本震の後に余震の読み取りがあると,同じ方向からマグニチュードが違う地震を読み取るからであると考えられる.

このようにカタログを図示すると近い地震から遠い地震や深い地震もきちんと読まれているが連続的にすべての地震が読まれているわけではない事がわかる.観測点が読まれている分布を確認する事でトモグラフィ解析等を行う際には,実際には波は来ているが読まれていない可能性もあることにも注意すべきである.

謝辞

本研究で用いた気象庁一元化震源は, 気象庁・文部科学省が協力してデータを処理した結果であり, 処理に用いられた読み取りデータおよび波形データは, 気象庁, 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 北海道大学, 弘前大学, 東北大学, 東京大学, 名古屋大学, 京都大学, 高知大学, 九州大学, 鹿児島大学, 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 国土地理院, 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 青森県, 東京都, 静岡県, 神奈川県温泉地学研究所および公益財団法人地震予知総合研究振興会から提供されたものです. 記して関係機関に感謝します.