9:30 AM - 9:45 AM
[S21-02] Hazard and risk assessment for the long-period ground motion of megathrust earthquakes
千島海溝南部で発生した2003年十勝沖地震、日本海溝沿いで発生した2011年東北地方太平洋沖地震によるタンク火災や超高層建物の被害により長周期地震動の重要性が再認識された。今後、南海トラフや相模トラフ沿いで発生する海溝型巨大地震による長周期地震動やその影響を事前に検討しておくことは重要である。気象庁による「長周期地震動に関する観測情報」の発表や、気象庁と防災科研による「長周期地震動の予測情報に関する実証実験」など、地震発生時の長周期地震動情報に関する検討が進められている。一方で、防災科研では、事前の準備に資する情報として長周期地震動のハザードやリスクに関する検討を行っている。本発表では、防災科研における長周期地震動のハザードリスク評価に関する研究について概観する。
平野や盆地などでは震源から遠く離れていても長周期地震動が長時間継続することが知られている。震源からの距離に依存せず、3次元地下構造に強く影響を受ける長周期地震動の評価に対しては地震波伝播シミュレーションが有効である。地震動シミュレーションに用いる震源モデルに関しては、強震動予測と同様に特性化震源モデルを用いており、過去の地震の知見を参考に、断層面の拡がりやアスペリティの配置、破壊開始点の位置などの多様性を考慮するとともに、アスペリティサイズよりも小スケールの断層破壊のランダム不均質を導入し、周期1秒程度まで適用可能な多数の震源モデルを構築している。シミュレーションに使用可能な全国規模の地下構造モデルとして、J-SHISで公開されている深部地盤モデルや、地震本部による長周期地震動予測地図(試作版)のために構築された全国1次地下構造モデルがある。一方、防災科研では関東地域や東海地域などを対象に浅部・深部統合地盤モデルを構築している。膨大なボーリングデータや稠密な微動探査に基づいており、地点毎の3次元地下構造による地盤特性が反映された地震動シミュレーションが可能となっている。防災科研では差分法による地震動シミュレータ(GMS)を公開し、継続的に更新を続けている。GMSでは計算格子数を低減する工夫として不連続格子が採用されており、長時間の地震動計算を効率的に行う工夫がなされている。これに加え、高並列化やGPGPUへ対応することで更なる効率化を図っている。さらに、タイムステップの増大に伴い生じる計算の不安定性(発散)への対応の検討も進めている。これらは主に差分法計算についての改良であるが、プレ処理や可視化を含めたポスト処理についても改良を続けており、有効性が確認された機能については、公開版のプログラムに反映している。
これまでに南海トラフ、相模トラフ沿いで発生するプレート間地震を対象とした大量の地震動シミュレーションデータが蓄積されている。大量のデータから重要な情報を抽出する手法についての検討も進めており、機械学習のひとつであるクラスタリングの手法を用いることで、多数のシナリオによる面的な地震動分布を10ケース程度のシナリオで代表させることが可能となっている。
これまでは主としてハザードに関する検討を行ってきているが、ハザード情報をリスク評価へ繋げる一例として、シミュレーションによる時刻歴波形を用いた超高層建物への影響評価について検討を行っている。多様な震源モデルによる地震動シミュレーション結果を入力とした建物応答と、長期評価を参考に設定した地震の発生確率を対応付けることで、超高層建物の確率論的なリスク評価を試行している。
今後は、千島海溝や日本海溝など、日本周辺の海溝型地震や内陸の長大な断層を対象とした長周期地震動の検討を進めるとともに、リスク評価のためのデータ整備や手法開発を進める必要がある。
平野や盆地などでは震源から遠く離れていても長周期地震動が長時間継続することが知られている。震源からの距離に依存せず、3次元地下構造に強く影響を受ける長周期地震動の評価に対しては地震波伝播シミュレーションが有効である。地震動シミュレーションに用いる震源モデルに関しては、強震動予測と同様に特性化震源モデルを用いており、過去の地震の知見を参考に、断層面の拡がりやアスペリティの配置、破壊開始点の位置などの多様性を考慮するとともに、アスペリティサイズよりも小スケールの断層破壊のランダム不均質を導入し、周期1秒程度まで適用可能な多数の震源モデルを構築している。シミュレーションに使用可能な全国規模の地下構造モデルとして、J-SHISで公開されている深部地盤モデルや、地震本部による長周期地震動予測地図(試作版)のために構築された全国1次地下構造モデルがある。一方、防災科研では関東地域や東海地域などを対象に浅部・深部統合地盤モデルを構築している。膨大なボーリングデータや稠密な微動探査に基づいており、地点毎の3次元地下構造による地盤特性が反映された地震動シミュレーションが可能となっている。防災科研では差分法による地震動シミュレータ(GMS)を公開し、継続的に更新を続けている。GMSでは計算格子数を低減する工夫として不連続格子が採用されており、長時間の地震動計算を効率的に行う工夫がなされている。これに加え、高並列化やGPGPUへ対応することで更なる効率化を図っている。さらに、タイムステップの増大に伴い生じる計算の不安定性(発散)への対応の検討も進めている。これらは主に差分法計算についての改良であるが、プレ処理や可視化を含めたポスト処理についても改良を続けており、有効性が確認された機能については、公開版のプログラムに反映している。
これまでに南海トラフ、相模トラフ沿いで発生するプレート間地震を対象とした大量の地震動シミュレーションデータが蓄積されている。大量のデータから重要な情報を抽出する手法についての検討も進めており、機械学習のひとつであるクラスタリングの手法を用いることで、多数のシナリオによる面的な地震動分布を10ケース程度のシナリオで代表させることが可能となっている。
これまでは主としてハザードに関する検討を行ってきているが、ハザード情報をリスク評価へ繋げる一例として、シミュレーションによる時刻歴波形を用いた超高層建物への影響評価について検討を行っている。多様な震源モデルによる地震動シミュレーション結果を入力とした建物応答と、長期評価を参考に設定した地震の発生確率を対応付けることで、超高層建物の確率論的なリスク評価を試行している。
今後は、千島海溝や日本海溝など、日本周辺の海溝型地震や内陸の長大な断層を対象とした長周期地震動の検討を進めるとともに、リスク評価のためのデータ整備や手法開発を進める必要がある。