10:15 〜 10:30
[S21-05] [招待講演]気象庁の長周期地震動への取り組みと今後について
長周期地震動は、規模の大きな地震が発生したときに生じる周期が長い揺れで、高層ビル等の長大構造物を長時間にわたって大きく揺らすとともに、あまり減衰せず遠くまで伝わりやすいという性質があり、特に大都市圏での被害の発生が懸念されている。
地震による揺れの大きさや被害の程度を表す指標としては震度が幅広く利用されているが、震度は長周期地震動を測る指標としては不十分であることが以前より課題とされてきた。このため、気象庁は、地震工学、地震防災、建築や放送・情報の各分野の有識者、関係団体、行政機関からなる「長周期地震動に関する情報のあり方検討会」(*1、平成23年11月~平成24年3月、座長:翠川三郎東京工業大学名誉教授)及び「長周期地震動に関する情報検討会」(*2、平成24年10月~平成31年3月、座長:福和伸夫名古屋大学減災連携研究センター長)を開催し、長周期地震動に関する情報の基本的なあり方、長周期地震動階級の作成、観測情報や予測情報の実用化のための技術的検討等を進めてきた。
これらの検討会の議論等を踏まえ、平成25年3月には、長周期地震動による高層ビルの室内の様相や体感の程度を示すため、絶対速度応答に基づく「長周期地震動階級」(*3)を策定するとともに「長周期地震動階級関連解説表」(*3)を作成した。また、「長周期地震動に関する観測情報」(*4)について、気象庁のウェブサイトでの公表を開始し、地域ごと、観測点ごとの長周期地震動階級や、観測波形等を掲載した。加えて、アプリ事業者、消防機関等から、より早いタイミングで確実にデータを受領できるオンラインでのデータ提供を求められていることから、電文形式での情報発表についても予定している。
一方、緊急地震速報のように長周期地震動に対しても事前に予測情報を提供できれば、高層ビル等における災害の防止・軽減に効果を発揮することが期待できる。このため、気象庁では、平成25年度以降、長周期地震動の予測技術についての検討を行ってきた。平成29年3月に取りまとめられた長周期地震動に関する情報検討会の報告書においては、長周期地震動について「広く国民に警戒・注意を呼びかける予測情報」は気象庁が担うべきとされ、現行の緊急地震速報(警報)を発表する基準に長周期地震動階級の予測値(階級3以上)を追加することが適切とされた(図参照)。気象庁では、緊急地震速報で推定された震源要素を用いて、距離減衰式から即時的に予測地点の長周期地震動階級を予測する手法(*5)を用いる予定である。今後は、この方針に従って、気象庁による予測情報の発表に向けて準備を進めていく。
加えて、個別ビル等への固有周期や地盤を考慮した多様なニーズに対応する予測情報の提供については、緊急地震速報(予報)と同様、民間の役割が重要である。平成29年11月より、気象庁と防災科学技術研究所が共同で予測情報の実証実験(*6)を行っており、本年度以降は、民間事業者からも予測情報を提供する予定である。気象庁では、民間事業者による長周期地震動の予測情報を国民が安心して使っていけるための制度作りを併せて行っていく。
文献
*1) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_kentokai/index.html
*2) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_joho_kentokai/index.html
*3) https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/ltpgm_explain/about_level.html
*4) https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/ltpgm/index.html
*5) Dhakal et al.(2015), 日本地震工学会論文集, 15, 91-111.
*6) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_joho_kentokai/ex/index.html
地震による揺れの大きさや被害の程度を表す指標としては震度が幅広く利用されているが、震度は長周期地震動を測る指標としては不十分であることが以前より課題とされてきた。このため、気象庁は、地震工学、地震防災、建築や放送・情報の各分野の有識者、関係団体、行政機関からなる「長周期地震動に関する情報のあり方検討会」(*1、平成23年11月~平成24年3月、座長:翠川三郎東京工業大学名誉教授)及び「長周期地震動に関する情報検討会」(*2、平成24年10月~平成31年3月、座長:福和伸夫名古屋大学減災連携研究センター長)を開催し、長周期地震動に関する情報の基本的なあり方、長周期地震動階級の作成、観測情報や予測情報の実用化のための技術的検討等を進めてきた。
これらの検討会の議論等を踏まえ、平成25年3月には、長周期地震動による高層ビルの室内の様相や体感の程度を示すため、絶対速度応答に基づく「長周期地震動階級」(*3)を策定するとともに「長周期地震動階級関連解説表」(*3)を作成した。また、「長周期地震動に関する観測情報」(*4)について、気象庁のウェブサイトでの公表を開始し、地域ごと、観測点ごとの長周期地震動階級や、観測波形等を掲載した。加えて、アプリ事業者、消防機関等から、より早いタイミングで確実にデータを受領できるオンラインでのデータ提供を求められていることから、電文形式での情報発表についても予定している。
一方、緊急地震速報のように長周期地震動に対しても事前に予測情報を提供できれば、高層ビル等における災害の防止・軽減に効果を発揮することが期待できる。このため、気象庁では、平成25年度以降、長周期地震動の予測技術についての検討を行ってきた。平成29年3月に取りまとめられた長周期地震動に関する情報検討会の報告書においては、長周期地震動について「広く国民に警戒・注意を呼びかける予測情報」は気象庁が担うべきとされ、現行の緊急地震速報(警報)を発表する基準に長周期地震動階級の予測値(階級3以上)を追加することが適切とされた(図参照)。気象庁では、緊急地震速報で推定された震源要素を用いて、距離減衰式から即時的に予測地点の長周期地震動階級を予測する手法(*5)を用いる予定である。今後は、この方針に従って、気象庁による予測情報の発表に向けて準備を進めていく。
加えて、個別ビル等への固有周期や地盤を考慮した多様なニーズに対応する予測情報の提供については、緊急地震速報(予報)と同様、民間の役割が重要である。平成29年11月より、気象庁と防災科学技術研究所が共同で予測情報の実証実験(*6)を行っており、本年度以降は、民間事業者からも予測情報を提供する予定である。気象庁では、民間事業者による長周期地震動の予測情報を国民が安心して使っていけるための制度作りを併せて行っていく。
文献
*1) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_kentokai/index.html
*2) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_joho_kentokai/index.html
*3) https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/ltpgm_explain/about_level.html
*4) https://www.data.jma.go.jp/svd/eew/data/ltpgm/index.html
*5) Dhakal et al.(2015), 日本地震工学会論文集, 15, 91-111.
*6) https://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/study-panel/tyoshuki_joho_kentokai/ex/index.html