11:45 〜 12:00
[S21-10] [招待講演]長周期地震動情報をテレビで伝える悩み
テレビは「即座に」「不特定多数に対して」「映像と音声でわかりやすく」伝えることが得意なメディアである。それゆえ災害時の情報伝達としては「被災地の生命を守る」役割を担ってきた。一番わかりやすい例は、一定震度以上の地震が起きると、どんなテレビ番組の放送中でも画面の上位置に「震度〇 □□県△部」などの文字情報が表示去れる速報スーパーだ。震度の速報スーパーは、既に地震が発生して地上が揺れた「後(あと)」に発表される情報だが、緊急地震速報や津波警報などは、揺れ発生や津波到達の「前」に発表される可能性があり「被災地の生命を守る」という点では、より迅速性が求められるため、民放ではCM中でも速報スーパーが放送される。
近い将来、ここに長周期地震動情報が加わることになった。これまでの震度情報をテレビで伝える場合は「場所による揺れの違い」という“二次元”でなんとか処理出来た。しかし長周期地震動情報は、それに加えて「高さによる揺れの違い」をどう伝えるか? という新たな課題をクリアすることが、テレビに求められる。
長周期「予測情報」をどう伝えるか?
強い揺れの予測情報、つまり緊急地震速報(警報)について、テレビ局は気象庁から電文が届くと、人間の手を介さず「そのままコンピューターで解析、画面を作成し放送する」自動放送を行っている。これは秒単位の猶予時間しかない場合でも、可能な限り「被災地の生命を守る」放送を行うためである。
長周期地震動の予測情報も「揺れに備える」という性格は緊急地震速報と同じだ。気象庁は階級3以上のものについては、緊急地震速報(警報)に含めることにした。情報を受け取った際の防災行動についても、気象庁は「安全な場所で揺れに備えるという行動は、長周期地震動でも(従来からの)緊急地震速報と同じ」としている。
では伝え方はどうだろうか? 緊急地震速報は図のように、文字情報と地図情報の組み合わせで伝えられている。情報の受け手である視聴者が取るべき防災行動が同じなのだから、従来からの緊急地震速報も長周期も「ひとまとめ」で伝えても支障がない、という考え方も成り立つ。一方、通常の揺れでは対象外でも長周期では対象となるエリアの場合、防災行動を取る必要があるのはビルやマンションの高層階にいる人だが、「ひとまとめ」で伝えると、普通の民家に住む人も慌てるかもしれない。丁寧に説明すれば良いと言われればその通りだが、「秒単位の猶予」が前提の緊急地震速報の放送に時間的な余裕はない… 従来の緊急地震速報は「情報に名前が挙がったエリアでは、全ての人が行動指示の対象者」だったが、「高さによる揺れの違い」がある長周期地震動の予測情報では「地名だけでは過不足なく伝えられない」という課題が生まれる。
長周期「観測情報」では、さらに…
長周期地震動では、もうひとつ、長周期で「揺れた結果」である観測情報も発表される。気象庁によると、地震発生から約10分後という「震度に続く」早いタイミングで出るそうで、地震直後の高層階の被害確認や救助対応のためには、広く知ってもらうことが必要な情報だ。
だが情報文の構成を見ると、揺れの発表単位は「ブロック別(□□県△部)」で、揺れの程度は「階級4~1」と数字であらわす。「震度に続く」タイミングに「極めて震度と似た」形で発表される。テレビやラジオの音声で、両方とも大きい方から順に読んだ場合、震度情報と長周期地震動観測情報、どこがどう違うのか? 識別するのは困難だ。そして、震度情報はこれまで“慣れ親しんできた積み重ね”のアドバンテージがあるため、“新参者”の長周期の観測情報が埋没してしまうおそれがある。その対策として今回、長周期観測情報のなかに“特出し”の段落が作られた。「震度4以下だけど、長周期階級3以上」というグルーピングだ。
さらに「極めて震度と似た」という悩みは、地図を使った表示でも同じだ。長周期地震動を「わかりやすく」伝えるための試行錯誤は尽きない。
近い将来、ここに長周期地震動情報が加わることになった。これまでの震度情報をテレビで伝える場合は「場所による揺れの違い」という“二次元”でなんとか処理出来た。しかし長周期地震動情報は、それに加えて「高さによる揺れの違い」をどう伝えるか? という新たな課題をクリアすることが、テレビに求められる。
長周期「予測情報」をどう伝えるか?
強い揺れの予測情報、つまり緊急地震速報(警報)について、テレビ局は気象庁から電文が届くと、人間の手を介さず「そのままコンピューターで解析、画面を作成し放送する」自動放送を行っている。これは秒単位の猶予時間しかない場合でも、可能な限り「被災地の生命を守る」放送を行うためである。
長周期地震動の予測情報も「揺れに備える」という性格は緊急地震速報と同じだ。気象庁は階級3以上のものについては、緊急地震速報(警報)に含めることにした。情報を受け取った際の防災行動についても、気象庁は「安全な場所で揺れに備えるという行動は、長周期地震動でも(従来からの)緊急地震速報と同じ」としている。
では伝え方はどうだろうか? 緊急地震速報は図のように、文字情報と地図情報の組み合わせで伝えられている。情報の受け手である視聴者が取るべき防災行動が同じなのだから、従来からの緊急地震速報も長周期も「ひとまとめ」で伝えても支障がない、という考え方も成り立つ。一方、通常の揺れでは対象外でも長周期では対象となるエリアの場合、防災行動を取る必要があるのはビルやマンションの高層階にいる人だが、「ひとまとめ」で伝えると、普通の民家に住む人も慌てるかもしれない。丁寧に説明すれば良いと言われればその通りだが、「秒単位の猶予」が前提の緊急地震速報の放送に時間的な余裕はない… 従来の緊急地震速報は「情報に名前が挙がったエリアでは、全ての人が行動指示の対象者」だったが、「高さによる揺れの違い」がある長周期地震動の予測情報では「地名だけでは過不足なく伝えられない」という課題が生まれる。
長周期「観測情報」では、さらに…
長周期地震動では、もうひとつ、長周期で「揺れた結果」である観測情報も発表される。気象庁によると、地震発生から約10分後という「震度に続く」早いタイミングで出るそうで、地震直後の高層階の被害確認や救助対応のためには、広く知ってもらうことが必要な情報だ。
だが情報文の構成を見ると、揺れの発表単位は「ブロック別(□□県△部)」で、揺れの程度は「階級4~1」と数字であらわす。「震度に続く」タイミングに「極めて震度と似た」形で発表される。テレビやラジオの音声で、両方とも大きい方から順に読んだ場合、震度情報と長周期地震動観測情報、どこがどう違うのか? 識別するのは困難だ。そして、震度情報はこれまで“慣れ親しんできた積み重ね”のアドバンテージがあるため、“新参者”の長周期の観測情報が埋没してしまうおそれがある。その対策として今回、長周期観測情報のなかに“特出し”の段落が作られた。「震度4以下だけど、長周期階級3以上」というグルーピングだ。
さらに「極めて震度と似た」という悩みは、地図を使った表示でも同じだ。長周期地震動を「わかりやすく」伝えるための試行錯誤は尽きない。