17:00 〜 18:30
[S23P-03] 地殻変動データベースによるデータ一元化流通公開と課題
地殻変動観測データは、地震学や地震監視業務の基盤をなすデータである。
地震防災対策特別措置法に基づき、地震本部において地震関係データの取り扱いが検討された。気象庁・大学・防災科研等の高感度地震波形等については、基盤的及び準基盤的観測網として制度的に位置付けされ、データのリアルタイム流通と一元的処理(震源決定:気象庁)、データアーカイブと公開(防災科研)が業務的に行われるようになり20年以上が経過した。
地殻変動データは、国土地理院によるGEONETが地殻変動の基盤的観測網とされ、データ公開が行われた。一方、大学や気象庁等において行われてきた伸縮計(ひずみ計)や傾斜計などによる地殻変動連続観測は、基盤的観測に位置づけられず、制度的なデータ流通やアーカイブが行われていなかった。
大学等では、地殻変動連続観測の収録系でWIN化が進んだことや、各機関での地震波形流通システム(JDXnet)への接続が容易になったことから、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」により、関係機関の連携のもと、2012年からデータのリアルタイム流通・一元化・公開が実現した。その後も「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の中で、簡易的な解析機能やデータダウンロード機能を備えたデータベースの開発運用が行われている(参加機関は末尾参照)(https://crust-db.sci.hokudai.ac.jp/db/login.php)
このシステムは、政府機関・研究機関・大学に所属していれば、参加機関以外でもwebを通じて利用できる。データは大学の地震波形データと同様に、申請協議を経て研究利用ができる。また、JDX接続機関はブロードキャストパケットを受信することでリアルタイムにデータを取得できる。携帯IP網を利用した機動的観測のデータや、重力計・水位計などの多項目データも取り込みも可能である。今年度からは、気象庁が参加機関となり、南関東東海のひずみ計データの流通公開について協議を行っている。
「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」で想定されている様々な「異常な現象」のモニタリングでは、地殻変動データが重要な役割を期待されている。計器特性から、数分から数日間の時定数ではひずみ計や傾斜計、それよりも長い場合にはGNSSの感度が優れていることが知られている。スローイベント等の多様な現象の理解と監視には、計器特性帯域の切れ目なく観測を行うことが望ましい。また、地震は低頻度現象であるから、長期的にデータをアーカイブする体制が重要となる。
データの流通や保存・公開を進めるためには、財政的基盤・人的資源とこれらの活動に対する学界の理解が必要である。日本の大学では、その社会的な位置付け上、データのアーカイブや公開等を長期にわたり実施することは困難である。このため、他データ(電磁気・水位・重力・高感度加速度計等)を含め、責任ある機関で制度的に地震関係の様々なデータを長期的かつ一元的に収集管理し、公開するしくみを早急に作ることが望まれる。その際、既に安定的に運用がなされている地震波形データのシステムの利活用を検討するのが効果的であろう。多様な時系列観測データを統一フォーマット化できれば、既存システムやソフトウエアの利活用が可能となり、システム開発や運用コストの軽減が見込まれる。
(参加機関:鹿児島大理・九大理・高知大・京大理・京大防災研・名大環境・地震予知振興会・神奈川県温地研・東大地震研・産総研・東北大理・国立天文台・北大理・道総研・気象研・気象庁)
地震防災対策特別措置法に基づき、地震本部において地震関係データの取り扱いが検討された。気象庁・大学・防災科研等の高感度地震波形等については、基盤的及び準基盤的観測網として制度的に位置付けされ、データのリアルタイム流通と一元的処理(震源決定:気象庁)、データアーカイブと公開(防災科研)が業務的に行われるようになり20年以上が経過した。
地殻変動データは、国土地理院によるGEONETが地殻変動の基盤的観測網とされ、データ公開が行われた。一方、大学や気象庁等において行われてきた伸縮計(ひずみ計)や傾斜計などによる地殻変動連続観測は、基盤的観測に位置づけられず、制度的なデータ流通やアーカイブが行われていなかった。
大学等では、地殻変動連続観測の収録系でWIN化が進んだことや、各機関での地震波形流通システム(JDXnet)への接続が容易になったことから、「地震及び火山噴火予知のための観測研究計画」により、関係機関の連携のもと、2012年からデータのリアルタイム流通・一元化・公開が実現した。その後も「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の中で、簡易的な解析機能やデータダウンロード機能を備えたデータベースの開発運用が行われている(参加機関は末尾参照)(https://crust-db.sci.hokudai.ac.jp/db/login.php)
このシステムは、政府機関・研究機関・大学に所属していれば、参加機関以外でもwebを通じて利用できる。データは大学の地震波形データと同様に、申請協議を経て研究利用ができる。また、JDX接続機関はブロードキャストパケットを受信することでリアルタイムにデータを取得できる。携帯IP網を利用した機動的観測のデータや、重力計・水位計などの多項目データも取り込みも可能である。今年度からは、気象庁が参加機関となり、南関東東海のひずみ計データの流通公開について協議を行っている。
「南海トラフ地震の多様な発生形態に備えた防災対応検討ガイドライン(第1版)」で想定されている様々な「異常な現象」のモニタリングでは、地殻変動データが重要な役割を期待されている。計器特性から、数分から数日間の時定数ではひずみ計や傾斜計、それよりも長い場合にはGNSSの感度が優れていることが知られている。スローイベント等の多様な現象の理解と監視には、計器特性帯域の切れ目なく観測を行うことが望ましい。また、地震は低頻度現象であるから、長期的にデータをアーカイブする体制が重要となる。
データの流通や保存・公開を進めるためには、財政的基盤・人的資源とこれらの活動に対する学界の理解が必要である。日本の大学では、その社会的な位置付け上、データのアーカイブや公開等を長期にわたり実施することは困難である。このため、他データ(電磁気・水位・重力・高感度加速度計等)を含め、責任ある機関で制度的に地震関係の様々なデータを長期的かつ一元的に収集管理し、公開するしくみを早急に作ることが望まれる。その際、既に安定的に運用がなされている地震波形データのシステムの利活用を検討するのが効果的であろう。多様な時系列観測データを統一フォーマット化できれば、既存システムやソフトウエアの利活用が可能となり、システム開発や運用コストの軽減が見込まれる。
(参加機関:鹿児島大理・九大理・高知大・京大理・京大防災研・名大環境・地震予知振興会・神奈川県温地研・東大地震研・産総研・東北大理・国立天文台・北大理・道総研・気象研・気象庁)