5:00 PM - 6:30 PM
[S24P-05] Crustal deformation and fault model of the 2019 Mw 6.4 earthquake off Yamagata Prefecture
1.はじめに
2019年(令和元年)6月18日22時22分に,山形県沖でマグニチュード6.7の地震が発生した.震源の深さは約15kmで,この地震により最大震度6強を観測した.本発表では,この地震に伴って観測された地殻変動とそれに基いて推定される震源断層モデルについて紹介する.
2.データと解析
GNSS連続観測(GEONET)により地震に伴う地殻変動を抽出した.ここでは,大潟(950241)を固定局として,6月11日から6月17日の座標値の平均値と6月19日から6月24日の平均値の差を地震時変動として扱う.なお,本稿ではR3解による地殻変動を示す(学会当日はF3解による結果を示す予定).
本地震に関しては,ALOS-2衛星による3件の緊急観測が実施された.観測は,6月20日に南行軌道(左観測),6月21日に北行軌道(右観測),6月22日に南行軌道(右観測)がそれぞれ行われた.地殻変動の検出を目的に,これらのデータを用いてSAR干渉解析を実施した.SAR干渉解析では,数値気象モデルを用いた大気起因の誤差低減処理,周波数分割法による電離層起因の誤差低減処理をそれぞれ施した.
得られた地殻変動データを基に,震源断層モデルの推定を行った.モデリングでは一様滑りの矩形断層を仮定した.矩形断層モデルの各パラメータはSimulated Annealing法による解探索により推定した.解探索では,東に傾き下がる断層面と西に傾き下がる断層面の両方を仮定してそれぞれ最適解を求めた.なお,走向に関しては,震源分布を参考にして40°(220°)に固定した.なお,モデリングにはGEONETデータのみを用いた.
3.結果
3.1 地殻変動
GNSS観測の結果,地震に伴って有意な地殻変動が観測された.最大の変動は新潟県村上市の「新潟山北」観測点において観測された北西向きの約5cmであった(図1).内陸部の電子基準点では,北西から西向きの変動が観測される一方,震源域の南西にある粟島の「粟島浦」観測点では,南西向きの変動が観測された.また,震源域周辺の沿岸部の電子基準点では,1cm程度の沈降が観測された.
SAR観測結果では,いずれも誤差レベルを超える有意な変動は観測されなかった.ただし,2015年11月28日と2019年6月22日の観測ペアの画像には,震源領域周辺の沿岸域に地表が衛星から遠ざかる位相変化が数cm程度見られた.
3.2 震源断層モデル
得られた断層モデルの特徴は,以下のとおりである.
1)北東-南西走向の断層面上における逆断層運動が推定される.
2)推定された断層面の水平位置は,震源分布と整合している.
3)東に傾斜する断層を仮定した場合は低角の断層面,西に傾斜する断層を仮定した場合は高角の断層面が推定される.
4)推定されたモーメントマグニチュードは6.4である.
モデル計算の結果得られた断層面のうち東に傾き下がる断層を仮定したモデルを図1に示す.得られたモデルはGNSSにより得られた地殻変動を概ね説明している.モデル計算には用いなかったものの,本断層モデルから予想される地表-衛星視線方向の変位場には,震源域周辺沿岸域において衛星から遠ざかる数㎝の変動が見られ,南行軌道(右観測)のSAR干渉の結果と調和的である.
謝辞: 本報告で使用したALOS-2データの所有権は,JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定及び地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動に基づいて,JAXAから提供されたものです.地震データは気象庁の一元化震源を用いました.ここに記して感謝いたします.
2019年(令和元年)6月18日22時22分に,山形県沖でマグニチュード6.7の地震が発生した.震源の深さは約15kmで,この地震により最大震度6強を観測した.本発表では,この地震に伴って観測された地殻変動とそれに基いて推定される震源断層モデルについて紹介する.
2.データと解析
GNSS連続観測(GEONET)により地震に伴う地殻変動を抽出した.ここでは,大潟(950241)を固定局として,6月11日から6月17日の座標値の平均値と6月19日から6月24日の平均値の差を地震時変動として扱う.なお,本稿ではR3解による地殻変動を示す(学会当日はF3解による結果を示す予定).
本地震に関しては,ALOS-2衛星による3件の緊急観測が実施された.観測は,6月20日に南行軌道(左観測),6月21日に北行軌道(右観測),6月22日に南行軌道(右観測)がそれぞれ行われた.地殻変動の検出を目的に,これらのデータを用いてSAR干渉解析を実施した.SAR干渉解析では,数値気象モデルを用いた大気起因の誤差低減処理,周波数分割法による電離層起因の誤差低減処理をそれぞれ施した.
得られた地殻変動データを基に,震源断層モデルの推定を行った.モデリングでは一様滑りの矩形断層を仮定した.矩形断層モデルの各パラメータはSimulated Annealing法による解探索により推定した.解探索では,東に傾き下がる断層面と西に傾き下がる断層面の両方を仮定してそれぞれ最適解を求めた.なお,走向に関しては,震源分布を参考にして40°(220°)に固定した.なお,モデリングにはGEONETデータのみを用いた.
3.結果
3.1 地殻変動
GNSS観測の結果,地震に伴って有意な地殻変動が観測された.最大の変動は新潟県村上市の「新潟山北」観測点において観測された北西向きの約5cmであった(図1).内陸部の電子基準点では,北西から西向きの変動が観測される一方,震源域の南西にある粟島の「粟島浦」観測点では,南西向きの変動が観測された.また,震源域周辺の沿岸部の電子基準点では,1cm程度の沈降が観測された.
SAR観測結果では,いずれも誤差レベルを超える有意な変動は観測されなかった.ただし,2015年11月28日と2019年6月22日の観測ペアの画像には,震源領域周辺の沿岸域に地表が衛星から遠ざかる位相変化が数cm程度見られた.
3.2 震源断層モデル
得られた断層モデルの特徴は,以下のとおりである.
1)北東-南西走向の断層面上における逆断層運動が推定される.
2)推定された断層面の水平位置は,震源分布と整合している.
3)東に傾斜する断層を仮定した場合は低角の断層面,西に傾斜する断層を仮定した場合は高角の断層面が推定される.
4)推定されたモーメントマグニチュードは6.4である.
モデル計算の結果得られた断層面のうち東に傾き下がる断層を仮定したモデルを図1に示す.得られたモデルはGNSSにより得られた地殻変動を概ね説明している.モデル計算には用いなかったものの,本断層モデルから予想される地表-衛星視線方向の変位場には,震源域周辺沿岸域において衛星から遠ざかる数㎝の変動が見られ,南行軌道(右観測)のSAR干渉の結果と調和的である.
謝辞: 本報告で使用したALOS-2データの所有権は,JAXAにあります.これらのデータは,国土地理院とJAXAの間の協定及び地震予知連絡会SAR解析ワーキンググループの活動に基づいて,JAXAから提供されたものです.地震データは気象庁の一元化震源を用いました.ここに記して感謝いたします.