12:00 PM - 12:15 PM
[S01-05] Three-dimensional shear-wave velocity structure and shallow very-micro earthquakes above sea level in the Showa-shinzan volcano
有珠火山の東に位置する昭和新山は1943-1945年の噴火及び隆起において形成された標高398mの火山である。最上部にはマグマが露出した溶岩ドームが存在し、標高約200mで比較的平らな屋根山と呼ばれる部分は植生が回復している(図)。現在でも山頂周辺では噴気が見られるほか、山体の収縮が続いている。昭和新山の形成・冷却過程を明らかにするため、本研究では先行研究の表面波解析手法を拡張して内部の3次元S波速度構造を推定し、内部で見つかった微小地震活動と合わせて解釈を行う。
先行研究Takeo et al. (GJI改訂中)では、昭和新山上や周辺の22箇所(図の三角)に短周期地震計を1ヶ月設置した。地震波干渉法を用いてRayleigh波を解析し、山頂付近・屋根山・麓の3地域毎に平均的な1次元S波構造を推定した。位相速度を自動測定するため、全10層のS波速度をモデルパラメータとして地震波干渉法の相互相関関数を波形フィッティングする方法を開発した。波長と観測点配置の影響のため、位相速度が測定できる周波数帯域は地域毎に異なる。一方、地下構造が地域毎に異なるため、ある周波数のRayleigh波がS波速度構造に感度をもつ深さも地域毎に異なる。これらが組み合わさった結果、全地域共通の深さ範囲(地表から深さ約20–500 m)においてS波速度を推定することができた。
本研究では、この先行研究の手法を拡張し、3次元S波速度構造を推定した。まず、各観測点ペアの相互相関関数に対して波形フィッティングによって10層のS波速度構造を推定した。日中と夜間でノイズスペクトルの形が異なるため、毎日同時間台のデータを用いて24通りの相互相関関数を計算し、ブートストラップ法による誤差推定も行った。精度良く位相速度が推定できる周波数帯は上述の様に観測点ペアによって異なるため、通常の表面波トモグラフィーの様に2次元位相速度分布のインバージョンを行うことは難しい。そこで、波形フィッティングで得られた観測点ペア毎のS波速度構造をパス平均の構造と見なして、2通りの方法で3次元構造推定を行った。1つ目は緯度・経度を0.0007度毎のグリッドに分け、各グリッドを通るパスのS波速度重み付き平均を標高毎に求めた(図)。重みはパスの長さと測定精度によって定義した。2つ目は、角周波数毎の位相速度分布推定で通常用いられている波線追跡法(Rawlinson and Sambridge 2003)を適用して地表からの深さ毎にインバージョンを行った。どちらの手法においても高低差が150mを超えるパスは取り除いた。
2通りの解析結果に共通して、山頂直下のS波速度は全ての深さで他の領域よりも速くもとまった。この結果は先行研究(Takeo et al. GJI改訂中)と調和的であり、噴火・隆起時の地下のマグマは水平方向に狭く分布したと解釈できる。加えて波線追跡インバージョン結果から山頂直下でも特に露出した溶岩ドームの東側でS波速度が速いことが明らかになった。当時の写真記録などから最も噴火活動が活発であった第四火口の火道に対応する可能性がある。先行研究では山頂直下のS波速度はNishiyama et al. (2017)が推定した密度と経験的なスケーリングで予想されるより約40%小さく推定されており、未だ溶岩ドーム内部が高温であることや空隙が存在することなどを低速度の原因として挙げている。本研究の結果は、溶岩ドーム内にも水平不均質が存在し、例えば溶岩ドーム東側は空隙が少なかったり低温であったりすることを示唆する。
この3次元構造推定には技術的な問題が2つ存在する。1つ目は周波数毎の位相速度分布推定で通常仮定する様な破線理論を本来適用してはいけないことである。2つ目は地形の影響を十分に考慮していないことである。本研究のように深さ毎にインバージョンするアプローチは他の火山地域にも応用できる可能性があり、今後新たな技術開発をしていく必要がある。
本研究では、以上の結果に加えて昭和新山内部でほぼ毎日発生しているマグニチュード-3から-2.5の極微小地震活動(竹尾他 2020 JpGU)にも着目する。一様P波速度を仮定した暫定震源推定結果によると、溶岩ドーム直下の海抜200–350mすなわち深さ50–200m付近に位置している(図の白丸)。複数観測点の到達走時の違いから少なくとも2箇所以上で発生しており、今後3次元構造を仮定した震源決定や相対位置再決定などにより空隙・温度分布と地震活動の関係性など議論できると期待できる。
先行研究Takeo et al. (GJI改訂中)では、昭和新山上や周辺の22箇所(図の三角)に短周期地震計を1ヶ月設置した。地震波干渉法を用いてRayleigh波を解析し、山頂付近・屋根山・麓の3地域毎に平均的な1次元S波構造を推定した。位相速度を自動測定するため、全10層のS波速度をモデルパラメータとして地震波干渉法の相互相関関数を波形フィッティングする方法を開発した。波長と観測点配置の影響のため、位相速度が測定できる周波数帯域は地域毎に異なる。一方、地下構造が地域毎に異なるため、ある周波数のRayleigh波がS波速度構造に感度をもつ深さも地域毎に異なる。これらが組み合わさった結果、全地域共通の深さ範囲(地表から深さ約20–500 m)においてS波速度を推定することができた。
本研究では、この先行研究の手法を拡張し、3次元S波速度構造を推定した。まず、各観測点ペアの相互相関関数に対して波形フィッティングによって10層のS波速度構造を推定した。日中と夜間でノイズスペクトルの形が異なるため、毎日同時間台のデータを用いて24通りの相互相関関数を計算し、ブートストラップ法による誤差推定も行った。精度良く位相速度が推定できる周波数帯は上述の様に観測点ペアによって異なるため、通常の表面波トモグラフィーの様に2次元位相速度分布のインバージョンを行うことは難しい。そこで、波形フィッティングで得られた観測点ペア毎のS波速度構造をパス平均の構造と見なして、2通りの方法で3次元構造推定を行った。1つ目は緯度・経度を0.0007度毎のグリッドに分け、各グリッドを通るパスのS波速度重み付き平均を標高毎に求めた(図)。重みはパスの長さと測定精度によって定義した。2つ目は、角周波数毎の位相速度分布推定で通常用いられている波線追跡法(Rawlinson and Sambridge 2003)を適用して地表からの深さ毎にインバージョンを行った。どちらの手法においても高低差が150mを超えるパスは取り除いた。
2通りの解析結果に共通して、山頂直下のS波速度は全ての深さで他の領域よりも速くもとまった。この結果は先行研究(Takeo et al. GJI改訂中)と調和的であり、噴火・隆起時の地下のマグマは水平方向に狭く分布したと解釈できる。加えて波線追跡インバージョン結果から山頂直下でも特に露出した溶岩ドームの東側でS波速度が速いことが明らかになった。当時の写真記録などから最も噴火活動が活発であった第四火口の火道に対応する可能性がある。先行研究では山頂直下のS波速度はNishiyama et al. (2017)が推定した密度と経験的なスケーリングで予想されるより約40%小さく推定されており、未だ溶岩ドーム内部が高温であることや空隙が存在することなどを低速度の原因として挙げている。本研究の結果は、溶岩ドーム内にも水平不均質が存在し、例えば溶岩ドーム東側は空隙が少なかったり低温であったりすることを示唆する。
この3次元構造推定には技術的な問題が2つ存在する。1つ目は周波数毎の位相速度分布推定で通常仮定する様な破線理論を本来適用してはいけないことである。2つ目は地形の影響を十分に考慮していないことである。本研究のように深さ毎にインバージョンするアプローチは他の火山地域にも応用できる可能性があり、今後新たな技術開発をしていく必要がある。
本研究では、以上の結果に加えて昭和新山内部でほぼ毎日発生しているマグニチュード-3から-2.5の極微小地震活動(竹尾他 2020 JpGU)にも着目する。一様P波速度を仮定した暫定震源推定結果によると、溶岩ドーム直下の海抜200–350mすなわち深さ50–200m付近に位置している(図の白丸)。複数観測点の到達走時の違いから少なくとも2箇所以上で発生しており、今後3次元構造を仮定した震源決定や相対位置再決定などにより空隙・温度分布と地震活動の関係性など議論できると期待できる。